第15話 偽りの再会
蒼の目の前に現れた少女は、確かに「妹」だった。
柔らかい笑顔、少し癖のある髪の流れ、昔よく着ていたワンピース。
記憶の中に刻まれた姿が、そっくりそのまま形を持って現れている。
「……本当に、玲奈……?」
震える声が零れる。
少女はゆっくりと蒼に近づき、手を伸ばした。
「お兄ちゃん……やっと会えたね」
その瞬間、蒼の胸に熱いものが込み上げた。
ずっと会いたかった声。ずっと求めていた温もり。
涙が溢れそうになる。
だが――
「……違う」
蒼は唇を噛みしめた。
目の前の「玲奈」は、あまりにも都合が良すぎる。
あの日の事故のこと、最後に交わした言葉。そこにあるはずの痛みや未完成の記憶が、欠片もない。
「お前は……妹じゃない」
その言葉に、少女の表情がピクリと歪んだ。
やがて笑顔が裂けるように変形し、口から黒い靄が滲み出す。
『よく見抜いたな。だが――遅い!』
偽りの「妹」が影の姿へと変貌し、蒼へと襲いかかってきた。
凍りつくような冷気とともに、黒い腕が蒼の胸へ迫る。
「くっ……!」
必死に避けようとするが、影の動きは速い。
蒼の身体は壁に叩きつけられ、息が詰まった。
『結局、お前は弱い。妹を救うことなどできぬ』
影の声が耳を打ち、心を抉る。
それでも蒼は、痛みに耐えながら立ち上がった。
「……俺は、もう逃げない。たとえ偽物でも……妹を利用する奴は絶対に許さない!」
叫びと同時に、本棚の隙間から白い光が差し込む。
その光の中に、誰かの影が現れた。
「蒼!」
駆けつけたのは、紗夜だった――。
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