第23話 わたしが師事するにふさわしい実力者ということだな


 その日は第一騎士団本部の来賓室に宿泊して、翌朝王都を出発した。

 遠征するのは精鋭揃いの第一騎士団の中でも、さらに選りすぐりの百名。

 そこにぼくとシオンが同行する。


 魔獣討伐遠征に選ばれるのは大変な栄誉であるため、第一騎士団の全員が遠征を希望し、選抜されるために日々切磋琢磨しているのだという。

 まあ演習で王都防衛を疎かにできるはずもなく、遠征人員を厳選するのは仕方のないところ。

 そんな栄えある遠征部隊に、ぼくみたいな余所者が混じって申し訳ない気もする。

 まあ、シオンに言わせれば「師匠なら当然です!」ということになるんだけどね。


 ****


 王都を出立して数日。

 ぼくは基本的にシオンの横にいて、シオンは王女兼騎士団長としてユナ将軍と一緒に行軍している以上、必然的にぼくとユナ将軍の会話も多くなる。

 ユナ将軍が男が苦手ということもあり、最初はぼくも遠慮していたけれど、シオンがユナ将軍にする会話の八割がなぜかぼくのことなので、必然的に話を振られることも多かった。


 内容はまあアレだ。

 ぼくがどれほど強いだとか。

 ぼくがサキュバス騎士団で、どんな指導をしてるかとか。

 ぼくとシオンがその昔、山奥でどんな修行をしていただとか。


 シオンの話す内容はそれはもう、例えれば親バカが子供をむやみやたらに自慢するような感じで、聞いている方はさぞかし迷惑だろうと思いきや。

 なんだかユナ将軍もシオンの話を楽しそうに聞いて、しかも質問したりして話を広げたりしていたので、ぼくは話を止めることもできなかった。

 シオンが女であることに気づかなかったとか別にいいじゃん。


 そして困ったことがもう一つ。

 その日も道中、シオンの話すぼくとの昔話を聞いていたユナ将軍が。

 突然、こんなことを言い出したのだ。


「──決めた。わたしもシオンの師父の弟子になる」

「唐突になに言ってるんですか!?」

「唐突ではない。最初にシオンの師父と出会った日から、ずっと考えていたことだ」


 どういうことかと話を伺うと。

 ユナ将軍、今までの人生で戦闘関係の指導を、なんと一度も受けたことがないという。

 もちろん軍隊で手合わせをすることはあるけれど、それは全て指導される側でなくする側。


 それもそのはず。

 なんとユナ将軍、軍に入隊したその日に、当時最強の師団長を瞬殺したらしい。

 その実力はモンスターの討伐と痴漢撃退によって独自に培ったというから、師匠がいないというのも頷ける。


「わたしは自力でここまで強くなったが、やはり時には悩み、他人に指導を願いたい瞬間がある。だがしかし、実力なき阿呆に口出しされるなど言語道断。その点シオンの師父ならば、なにも問題ないからな!」

「ありまくりですよ!? それに、ぼくなんかがユナ将軍みたいな超有名人の師匠になんてなれませんよ!」

「なにを言ってるんだ? 師父はわたしなどよりよほど有名な、破邪の姫騎士シオンの師匠ではないか?」

「単にシオンが王女だって知らなかっただけですから!」


 ぼくが頑張って抗弁するも、ユナ将軍はいいやと首を横に振り。


「それに不詳ながら、わたしの実力はシオンに引けを取らない自信はあるぞ? だからわたしも、師父の教えを受ける足る実力はあると思うのだが。なあシオン?」

「うっ……わたし、この国の軍人でユナさんにだけは勝てないんですよね……」

「ほほう。師父は今は軍属だが、つまりシオンは師父に勝てると?」

「は? 絶対に勝てるわけないじゃないですか、なに意味わかんないこと言ってるんですか? 師匠はそもそも師匠なので、軍とか騎士団とかそういう枠を超越しているので対象外なだけです。言っときますけど、ユナさんだって師匠にかかれば指一本でケチョンケチョンですからね!」

「ふむ。やはり師父は、わたしが師事するにふさわしい実力者ということだな」

「ううっ……師匠の弟子はわたし一人で十分なのに……」

「ていうかぼく抜きで話が進んでる!?」


 ちょっと待っていただきたい。

 ユナ将軍は男が苦手ということだけど、ぼくは別にユナ将軍が苦手でもなんでもないし、なんなら滅茶苦茶美人でスタイルもいいお姉さんであり好感度も高い。

 それにユナ将軍は男が苦手だし、今だって男のぼくに対して微妙な距離感を保っている。


 そんな状況なんだから、ぼくを師匠にする必要なんてないと思うんだけどなあ。


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