第24話 姉弟子ですか

 そんな話を熱弁すると、ユナ将軍がなぜか困ったように照れ笑いして。


「この際だから白状するが……生まれて初めて、自分と同等以上に強いであろう異性に出会ってしまったものだから、どう接していいか分からなくてな……わたしが師父とギクシャクしているのはそれが原因なんだ……」

「いや普通に接してください!?」

「……それに師父がわたしを、他の男と同じように『ユナ将軍』と呼ぶのも気に入らないし……それならシオンのように師弟関係になれば、わたしを呼び捨てにする気さくな関係になれると思ったのだが……やはりダメだろうか……?」

「そう言いながら上目遣いでお願いされると滅茶苦茶断りづらいんですが!? てか、シオンからもなんとか言ってよ!」


 ぼくが助けを求めると、シオンが慌てて加勢して、


「そ、そうです! 師匠を師匠と呼んで良いのはわたしだけです! たとえユナさんでも──」

「ああ。わたしが弟子入りを認められれば、シオンとは同門になるわけだな。そうなるとシオンが姉弟子になるわけか」

「……あ、姉弟子ですか!? わたしがユナさんの姉弟子……えへへへ……」


 ああもう、ダメだこれ。

 今までどうしても勝てなかったユナさんの姉弟子に自分がなる、って状況にうっとりしてる。

 アレだアレ。

 シオンがユナ将軍に向かって、事あるごとに先輩面パイセンウィンドをぴゅーぴゅー吹かせようとする姿が目に浮かぶよ。


 しばらく妄想で顔が崩れていたシオンだけど、ぼくがジト目で眺めていることに気づいたらしく咳払いをして。


「えー、こほん……師匠、ここらで新しい弟子を取ったりするのもアリなのでは?」

「いや待ってよ!? だからユナ将軍がぼくの弟子なんて……!」


 さすがにサキュビッシュ国の現役最強女騎士を弟子にするのは責任が重すぎる。

 そう思って説得したものの、ユナ将軍の意思はとても固かった。

 そして。

 結局のところ、ぼくはユナ将軍とシオンの二人に押し切られてしまい──


「……わ、分かりました……ユナ将軍を弟子にします……」

「そ、そうか!! ──では今後、わたしたちは師弟の関係だな! よろしく頼むぞ師父!」


 ぐったりと疲れ果てたぼくと対照的に、ユナ将軍はもう満面ニコニコで格差がえぐい。


「ああ、もちろん弟子なのだから、師父は他の男と同じようにユナ将軍などと呼んでくれるなよ? ユナと呼び捨てでお願いしたい」

「せめてユナさん呼びで勘弁してください……ところでずっと気になってたんですが、なんで師父なんです?」

「気にしないでくれ。わたしの故郷では自分にとって唯一絶対のお師匠様のことを、師父と呼んで従う風習があるのだ」

「そうなんですか……」

「ああそうだ。シオンもこれからは、姉弟子だと呼ばせてもらおう」

「ふふふ、姉弟子としてしっかり指導していきますよ!」


 なんだかなあ。

 ただの子供だと思ってたシオンはともかく、第一騎士団長のユナさんを弟子にするのは違和感があるんだけれど。

 まあユナさん本人が納得してるなら、別にいいかもしれないけどさ。

 そんなことを考えていると、シオンがいいことを思いついたという顔をして。


「──師匠。話がまとまったところで、わたしから一つ提案があります」

「今度はなにさ?」

「ユナさん──いえ妹弟子は、師匠の凄さは分かってるけど、どれほど真に滅茶苦茶強いかは、まだ理解してません。そうですよねユナさん?」

「うむ。確かにそうだ」

「というわけでこれから、真剣勝負をしてみてはのはどうでしょう? もちろんわたしとユナさんの二人組で、師匠と対決するということで──!」


 というわけで、突発的にぼくがシオンたちと模擬戦をすることになった。

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