ヤキモチ?

 歌を気持ちよく歌った帰り道、湯音はサラッと言った。

 

「やっぱりアキが好き」

 って。

 

 …

 

 あぁ、ここでいうんだ。

 

 歩きながらサラッと。

 

 そうだよね、二時間もボックス部屋で別れ話よりも、外の方が開放感あるし、それに…

 

 湯音は、もしかしたら気づいていたのかもしれない。

 

 オレが別れたくないって言って、春巻き妖怪になることを。

 

 でも湯音、オレは妖怪にはならないであげるよ。

 

 好きな男がいるのに、オレなんかに抱きつかれたら鳥肌どころの騒ぎじゃないもんな。

 

 湯音が、ケモノ肌になってしまうかもしれないもんな…。

 

 

 ケモノ肌って…そもそもなんなのかは、知らんけど…。

 

 でも、湯音を困らせるわけにはいかないもんな…。

 

「アキってさ…どんなやつ?」

「え?アキはー…爽やか‼︎とにかく爽やか一択じゃない?」

 

 …

 

 爽やかボーイか…。

 

「そっか。で、いつから好きなの?」

「最近気づいたんだ。」

「へー、それってオレと付き合ってから?それともその前?」

「うんとー…、たぶん波留夜と付き合う少し前だった気がするな」

 

 …

 

「そっか…アキも湯音を好きなの?」

「それは知らない!でもさ、爽やかに包み込んでくれる感ない?で、これからどこ行く?わたしは…できれば、波留夜の部屋かわたしの部屋がいい」

 

 …

 

 爽やかに包み込むって…

 

 アキのやろう…湯音は、まだオレの彼女なのに…なんで勝手に包み込んでいやがんだよ‼︎

 

 

 湯音は、オレがすぐに別れないと思って…だから部屋で話し合いをしてくれるつもりなんだ…。

 

「湯音は、優しいな。アキもそんな湯音を、すぐ好きになるんじゃないかな」

「そうかな?わたしは、どっちでもいい。それより…わたしは、波留夜に抱きしめてもらいたい…な」

 

 …?

 

 え?

 

 湯音は…アキが好きなんでしょ?

 

 でも、どっちでもいいって…なに?

 

 オレに抱きしめてもらいたいって…どういうこと?

 

 爽やか過ぎて、満足してないの?

 

 でも、好きなんだよね?アキが?

 

 オレは湯音が好きだし、抱きしめてほしいなら、今すぐにでも抱きしめたいけど?

 

 

「湯音はさ…アキが好きなんだよね?」

「うん」

 

 …

 

 そんな、はっきりと…

 

「湯音は、さ…正直オレとアキどっちが好き…なの?」

「え、それはー…好きの種類が違うけど、波留夜が好き‼︎たまにくるアキも好きだけどね。アキは、たまにじゃん。それに意味違うし」

 

 …

 

 たまにくるの?

 

 それって…フリーになったら、湯音のところに来て、彼女できたら湯音を放るってこと?

 

 意味が違うって何?

 

 好きにも種類があるんだ?

 

 てか、たまに来るアキを湯音はなんで受け入れてるの?

 

「それって…二股ってやつ?」

「え〜、波留夜って面白いね!アキにヤキモチとかさ、ちなみに波留夜は?」

 

 …

 

「オレは…当たり前に湯音一択だよ」

「はっ…恥ずかしいな。でも嬉しい」

「ならさ、もうアキは相手にしない?」

 

 …

 

「うーん…相手にしないっていうか、勝手にくるじゃん?」

 

 ⁉︎

 

 なんだって‼︎

 

「オレがアキに言ってもいい?」

「なんて?」

「オレの湯音にちょっかいだすなって」

「あはは、波留夜面白すぎ」

 

 …

 

 なんで?

 どういうこと?

 

「ねぇ、波留夜の好きな季節は?」

「冬かなー。」

 話逸らされた?

 

「じゃあ、わたしも冬がきたら言うね。わたしの波留夜だから‼︎って。」

 

 …

 

 え?

 

 

「えっ⁉︎もしかして…アキって…季節のアキ?」

「うん、そうだけど?」

 

 …

 

 ヤバ…

 

 オレ、相当のヤキモチやきだと思われてるやんけ。

 

 季節にヤキモチやくやついなくね⁉︎

 

 ハズ…

 

 オレは、ずっと季節にヤキモチ妬いてたんだ…

 

 なおさらこれって…フラれない⁉︎

 

 うつわの小さな小さなオレ…

 

 慌てて訂正します。

 

「アキってさ…いいよね」

「うん。でも波留夜は、冬が好きなんでしょ?」

「今好きになった。湯音が好きならオレも好き」

「嬉しい!」

「ほんと?」

「うん、好きすぎてヤバい。最近の波留夜は、特にヤバいよね。」

「え、最近?」

「そう、ヤバ過ぎてわたしこの前、枝豆とじゃがいも散らかしてごめんね。かっこよすぎて直視できなかった。」

「マジか…オレ嫌われたかと思ってた」

「ふふ。そんなわけなすぎるよ…ねぇ、これからどうする♡?」

「オレの部屋くる?」

「うん♡」

 

 

 

 これからもオレは、いつフラれるかわからない。

 

 でも、精一杯頑張ろうと思います!

 

 

 

 おしまい♡

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幼馴染と付き合えたのにフラれる寸前です 猫の集会 @2066-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ