贈り物に閃撃を
タケノコタンク
閃撃を
踊る少女人形を誰かが幻視した。
異形に成り果て、人外の膂力を振るう魔剣士と相対する誰か。
薄い笑みを浮かべながら佇む淑女を幻視したものもいた。
持ち主の願いを叶え、最後には持ち主の魂を喰らう魔剣に、使い古された鉄の剣で刃を合わせる者がいた。
あらゆるものから、魔剣の脅威を薄れさせ、己の剣技に心を奪うのは、その男。
魔剣士と魔剣が吠える。
ぶつけた力は、音のない剣技に流された。
◇◆◇◆
剣士。その世界では、未だにそんな立場のものたちがいた。
剣を振るい、民草を守ったり、日銭を稼いだり。
その大陸には、剣士たちの学び舎があった。
大陸中から集められた将来有望な剣士たちが競い合う、そんな学び舎が。
カルム・スワンプはそんな中で問題児と呼ばれる部類の人間だった。
◇◆◇◆
静かな森の中で、その音を聞いた。
どんな音だったのか、反芻しようと試みたけれど、ぶぅんという音も、サッという音もしっくりこない。
けれども、一つ、わかることはその音が、空気の揺らぎが、直剣を振るったことによるのはわかる。
目を閉じて、また聞き取ろうとした。
次は二閃。
やっぱりそれを音にできない。無理に、例えるなら、音のない鈴のような。
これを生み出しているのは誰なんだろうと、気になってカルム・スワンプは、極力音を殺してそちらへ向かった。
そして、目を奪われた。
一閃。
……やはり音を伴わず。
二閃。
……やはり音を伴わず。
世界から色が失われていく。
情報の取得に際して、五感から余計な情報を遮断する。それは、ある種、剣技の境地な訳だが、彼女の剣はそんな境地にカルムを自然と身につけさせる。
カルムが聞いた音の正体は、彼女の剣技によって生まれた、音にすらならない微細な空気の揺らぎだった。
音がない。余計な力が発生していないのは、刀身だけでなく、擦れる服、引いた細い脚に踏みつけられた落ち葉といった彼女に関係する全てだった。
落葉する枯葉を切りつけてもやはり音はなく。
故に生まれる、世界の中でたった一人高い層に浮かび上がったかのような強烈な個性。ずっと、彼女に目を奪われていた。
◇◆◇◆
「やっぱり、私の剣は……」
数時間は経ってから、そう言って片付けをすると、彼女は帰ってしまう。その時になって、やっと、世界は色を取り戻した。
剣技は、人それぞれにあって、作家にとっての本のようなもの。作る中での模索を勝手に覗き見てしまった罪悪感から、尚も気配を殺し続けた。
眩い程のブロンドヘアを見送って、カルムも同じ様に剣を振るった。
憧れてしまう程、真理に迫るような剣であったから。
自分も同じ様に世界から、切り離されてみたかった。
「メアリ・フォン・プリコンティブ」
剣を振るって、一息ついて、吐いたその名前。
獲物を確認する野生の肉食獣のように、真っ直ぐと彼女を思った。
メアリ・フォン・プリコンティブ。あの、音のない剣技の持ち主。
恐らく、学園一の優等生である。
文武両道、王道の剣を振るいながら、秀でた思考で戦術を組み立て、常に最高の剣士として君臨するもの。
今まで、関わったこともなく、クラスメートたちの噂話と遠目の印象しか知らなかった少女の剣を、初めて見た。
何処か、対照的だと思っていたが、剣技は対照的というよりも、貫かれる怪物と聖剣のような関係だった。
怪物の側からは、どうしても憧れてしまう。
自分では辿り着くことのないはずのものに、真っ直ぐな人生に、今憧れた。
先ずは形だけでも。剣先から、音を消してみよう。
◇◆◇◆
学園の裏手に広がる大森林は、生徒たちが剣術の修行をする為のものだ。
トイレも付いてるログハウスがいくつかあってカルムはそこで一夜を明かした。
いつもは、友人と遊び歩いているカルムだが、週に30分しか剣を振るわないカルムだが、できる限り剣を振るっていたかった。
急に思ったわけだから制服のまま、着替えもないのに埃だらけの床に転がる。
詰まらない授業よりも、今は剣を振るうことのほうが大事であって、メアリを思って鞘に収まったままの剣を抱いた。
いつかの未来で、メアリと剣戟をする夢に向かって、幼い頃のように駆けていく。
それから、来る日も来る日も凡そ五日間剣を振るった。
少女のための剣技を自分のものにする日々。
熱さは湧かず、けれど冷たいままの体が勝手に動くような日々。
筋肉痛が心地よく、これが楽しいということかと薄く、笑った。
カルムは正道の人間ではない。剣技が想定する敵は常にメアリ・フォン・プリコンティブ。最初にメアリの剣技を見て想像したのは衆群の前で彼女を切り伏せること、いつものようにフェイントだらけの剣で彼女を惑わせ陰湿に殴打しようと夢想する場面だった。
けれど、全て見切られ、寸止めの前に、碧眼は開かれたまま、下段の鮮撃から簡単に片腕が宙を舞った。
どれだけ自分を想像の中で強くしようと、同じことの繰り返しであって、故にこそ自身の剣技が必ずメアリの剣技に負けるものだと悟ったのだ。
そして、カルムは知っていた。自然に悟っていた。
どんなに、その人のものと思おうとも、剣技なんてものは刃の付いた棒切れなのだから、体さえ動かせば手に入れることができる。ある程度の才能のある剣士なら誰でもやれることだ。そして、彼らは皆それをやらない。
普通、それだけの才能があれば、自分だけの剣技を持っているから。
カルムだってそうではあるが、才故に所詮剣技と知っているから、彼の剣は歪んだものだった。歪んだ性根に相応しいものだった。
フェイントを多用し、相手の剣技の全力を潰し、緩んだ所に雑な数撃を放る。
その剣技に惑わされず一閃で形勢を決めるのがメアリの剣技だった。
憧れを。自身を照らす月光のような閃剣に憧れを。
憧れを。そんな剣技を自然と身につけた彼女に憧れを。
「憧れを。憧れを。……憧れを!!!」
いつの間にか、カルムの剣技から音が消えていた。
◇◆◇◆
自然と、背筋を伸ばして真っ直ぐな剣を振るえるようになっていた。
体が、少女になったように軽く、剣を振るう度に心が躍った。
更に三日。体力の許す限り剣を振るった。
カルムが一週間も森で生きれたのは、彼がよく親の仕送りを下らないものに溶かして食費が底を突いたときに森でサバイバルをして飢えを凌いでいたからだった。
ただ、食事に彩りを求めてその日はいつもよりも深く森に潜った。野兎を見かけて辿り着いたのがその洞窟だった。
いい剣だ。
カルムは、洞窟の奥に刺さったそれを評価する。
薄く細く、重厚な柄は重心の偏りを消して振るいやすさを想起させる。そんなオーソドックスな名剣を基礎に、それは工芸的な美しさを兼ね備えていた。
刀身は、塗料でも塗ったように黒く、柄から刀身の全長に掛けて金による百合の意匠が施されている。
カルムは、剣の靭性を確かめようと、地面に刺さったそれの柄を握り、力をかけようとした。
産毛が逆立つ感覚に襲われたのはその時だった。
剣の意匠が浮かび上がり、カルムの腕を絡めとろうとする。金の百合の蔦がカルムに迫る。
「……っ!」
二閃、カルムを救ったのはメアリの剣技だった。
軽く跳躍して距離を置くと、その剣の禍々しさに気が付く。
あれは、魔性の何かだと理性が告げていた。
「なんだ……いや」
聞いた事があった。
「魔剣?」
太古から、存在する持ち主に人外の異能を与える刀剣の総称だったか。
「っ!?」
そんなものがどうして? という思考の間隙に滑り込むように黄金の蔦が、高速で迫る。
今度、カルムを救ったのは、元々の自身の剣技。
一歩敢えて踏み込んでから、絶妙なタイミングで身体を引っ込めると虚空を蔦が撫でる。
「……逃げる!」
三十分逃げても、蔦からは逃げられず休みなく走るハメになった。
迫りくる気配は木々をなぎ倒しながらどんどん大きくなる。凡そ当初の三十倍の規模の異形の群れが、木々を倒しながら追ってくる。
「はぁ! はぁ!」
それでも走って、彼は逃げ続けるだけではこれは解決しないと年季の入った己の獲物に手をかけた。
◇◆◇◆
彼を救い、道を切り開き、魔剣の下へと到達させたのは、やはりメアリの剣技。
先読みの力が、彼に僅かな茨の隙間を教えた。
偶に足を取られそうになると救うのは、カルムの噓の剣。
彼は元来の剣技と新たな剣技を組み合わせて、魔剣と対峙した。
茨が迎え入れるように道を作る。
「ごめん」
茨とその母体の魔剣の意思に反して彼は一閃した。
『きゃあああああああ!!!』
そんな少女の声が聞こえた気がしたが、力を失った蔓を確認して、彼はまた修行へ戻る。
「ごめん」
そう言い残して。
◇◆◇◆
あの魔剣を切って、それでもカルムは剣を手に取る。
まだ、彼の剣技はメアリと同じ領域だからだ。
彼の目的は、メアリに追い付くことではない。メアリを追い越し、彼女に今の彼女以上の可能性を見せることだ。
しかし、ちらつく。
余計な情報が。
想像の中のメアリ以外の情報が入り込む。観衆の声やよくつるむ後輩の声だ。
「やめるか」
自身の剣技からメアリの剣技が抜けていく。
所謂スランプで、彼は泉で身体を清めていた。
澄んだ水が汚れを落としていく感覚に身を任せていると。
くすくす。
そんな笑い声が聞こえた。
その声の方を見ると。
「お主、恥じらいというものはないのかえ?」
「衝撃的過ぎて、声が出ないんだよ」
誰もいないと思い込んで全裸だったから。
◇◆◇◆
パンツ、ズボンだけ履いて、カルムは質問した。
「誰?」
「テイル。この森に住んでいる」
「はぁ?」
ここは学園の敷地内だが?
「主は儂の風呂に勝手に入ったわけじゃよ」
「それは……申し訳ないね」
「良い! 許す!」
許すも何も。カルムは少しだけ、彼女の揺れた黒髪に見とれてしまった。
この黒色……。何処かで。
「何か。望みでも?」
「正解じゃ。大したことじゃない」
カルムは身構えた。学園の授業をサボったクラブハウスでのポーカー勝負では、こういう台詞を言う輩は大抵強力な手札を隠しているからだ。
「儂に剣技を見せよ!」
「へ?」
◇◆◇◆
カルムは、テイルの言うままに剣を振るうが
「くっ!」
やはり鈍い。
「お主、十分な食事は取っておるかえ?」
「い、いや」
「先ずはそこからじゃ!」
カルムは、テイルの助言に従い、街の下宿先に戻るのだった。
下宿先のアパートに帰ると
「おいっす! カルム先輩! お久しぶりですね! クラブハウスにでもいきやせんか?」
と、隣人にして、悪友にして、後輩の女生徒が話しかけた。
「取り敢えずシャワーを浴びてから」
「にょわ!? カルム先輩が私以外の女を連れてる!?」
「お前を女カウントしたことないよ」
「失礼するのじゃー!」
「ショック!!!」
彼らはカルムが再び着替えるとパブへ向かう。
◇◆◇◆
「一ヶ月後に学内大会が開かれるっす!」
「へー。ほー」
カルムは、久しぶりに普通の昼食を食べて感動していた。
「うっめ」
「お主、頬に」
「う、うわ! やめろ!」
「完全に彼女じゃないすか! 何処で捕まえたんすか!」
「……。さっき。森で」
本当のことであるが、何故かカルムは、テイルに心を許していた。
「何してたんすか!? この一週間!」
「別に森に引きこもってずっと剣の修行」
「日に30分しか剣を振るわないカルム先輩が!?」
「あぁ。それよりも、学内大会って?」
後輩に出場登録を任せて、カルムは再び森へと引きこもる。テイルを連れ立って。
というのも。
「右足の柔らかさが足らん」
と、助言が的確なものだったからだ。
また
「ほれ。今日の弁当じゃ!」
など。衣食住の面倒を見てもらえることがとても楽で修行に集中できるからだ。
しかし
「くっ!」
1週間が経過しても、僅かな前進すら現れなかった。それどころか、剣に音が出て鈍くなっていることもある。
「主は、何を悩んでおるのじゃ?」
「……邪念? 脳裏に関係ないイメージがちらつくんだ」
「ほう。どのような? もっと具体的に」
「漠然としたものなんだけどね。大勢の視線みたいな」
「ふむ。儂は何も感じないが。お主のその剣技はお主のものではないのだったな」
「そうだよ。メアリ・フォン・プリコンティブ。お貴族様でさ、多分学園で最強の剣士だよ」
テイルはそのメアリに興味が湧いたようだ。
「その女について詳しく」
「なんで」
「いいから!」
カルムは気迫負けする。
「優所正しいプリコンティブ家の才女。16歳で同い年。まるで、未来が見えるかのような立ち回りと細腕からは考えられない鋭い剣筋が特徴。金髪赤目の美少女」
「随分詳しいのぉ」
「学園のアイドルだからね。プリマステラ」
「星を追う沼地の灰色か」
「カルム・スワンプとは、そう考えると縁起の悪い名前だなぁ」
「なぁ? 主よ?」
「なんだ?」
「その邪念に身を任せてはみては?」
◇◆◇◆
カルムは再び、構えた。そして、振るう。雑念が強くなっていく。
ここで、振り払ってはいけない!
カルムは雑念を投げるのではなく、テイルの言うがまま身を任せた。
すると、
「「「わぁぁあああああああ!!!」」」
その歓声に思わず身震いした。そこはコロッセオだ。授業や大会に使われる。
「な、なんだこれ!?」
カルムは困惑したが、傍にテイルはいない。
「カルム・スワンプ!」
少し因縁のある生徒がいた。1学年上で、不真面目なカルムに何度も注意する嫌いな男子生徒だった。
「始め!」
審判の合図だった。
「はあああああああ!」
先輩が切りかかる。
「くっ!」
なんとか鞘から抜き放ったことで、間に合う。剣戟の音。
「そんなものか!」
先輩剣士の蹴りを寸でで躱す。
(これは、一か月後の学内大会!?)
混乱しながら、これは幻と自覚しようとするが
「はあああああああ!」
上段切りがカルムの飛んだ地面を叩いた。
(現実なのか!?)
カルムは兎に角、覚悟を決めた。目の前の脅威を取り敢えず排除する。
その覚悟を固めた。
心の中には2枚の切り札。即ち。カルム本来の剣技とメアリから盗んだ剣技。
今必要なのは、どちらか。
(幻想を切り裂く白い剣技!)
即ち、メアリの剣技。
一度収めた。
「なんだ? 降参か?」
目も閉じる。見える!
「今!」
カルムは目の覚めるような居合いを抜き放つと先輩と共に幻影が消え去るのだった。
◇◆◇◆¥
「至ったか」
その声で、自分が目を閉じて、ただ、構えていただけだったとカルムはようやく気が付く。
「今のは……。白昼夢?」
「それこそがメアリという女の剣技の真髄なのじゃろう」
「真髄……」
「即ち! 未来視の剣技じゃ!」
1月も先の未来予測。それが、メアリ・フォン・プリコンティブの剣技である。
「じゃが! まだ、甘い! お主は今、10秒程現実に無防備じゃったからの!」
「今のを見ながら戦ってようやく完成なわけか」
「そうじゃ」
そこから、テイルとの修行がまた2週間続く。
そして、学内大会まで1週間と迫ったときに唐突にカルムは切り出したのだ。
「テイル。もういいんだ。これ以上のサポートはいらない」
「な、何故そんなことを言うんじゃ!」
カルムは冷徹に事実を告げた。
「お前は……いや。俺は、彼女、メアリに真剣に向き合いたいんだ! だから、最後の締めに入る。けどね。そこに他人というノイズを入れたくないんだ」
「それでも付いていくと言ったら?」
「俺がもっと山奥に引きこもるだけだ。選んでくれ、俺が去るのか。お前が去るのかを」
「……」
◇◆◇◆
そうしてテイルが去る形で彼らの関係は終わる。
テイルは雑踏の中で路地裏に入ると1人涙した。
その理由は少女として、捨てられただけに留まらない。
彼女の正体はカルムが両断した魔剣の化身だった。
自らを鈍らで切断して見せたカルムに彼女は剣として惚れたのだ。
だから、スランプの彼が放っておけなくて姿を見せた。少女として。
そうして、少女としてサポートする内にいつの間にか少女としてもカルムを好いていた。
しかし、少女のテイルは今引き裂かれ、魔剣ティルフィングは痛みを思い出した。
悲しみと痛みの涙だった。
学内大会には実は、出場条件がある。総合評価において、10段階の内D以上の成績を残すものだけが参加できるのだ。
カルムはあれで評価Cを獲得しているので、参加できるが。
ドレイク・ヒルトン。彼のような評価Fの人間は大舞台に上がる資格を有さない。
故に彼は、失意から、布団を抱えていた。
魔剣ティルフィングが目を付けたのは、そんな落ちこぼれだった。
全ては、己からカルムの心を奪ったあの女を抹殺するために。
『なあ。お前よ? 力が欲しくないか?』
「ほ、欲しい! あの天才たちを見返せるような力を! 地元の皆に自慢できるような力を!」
(あぁ……。これが才無きものの答えか。例え同じ質問をしても、お主は拒絶したろうて)
◇◆◇◆
そして、学内大会の日付となった。
全校生徒に、騎士団、王侯貴族に、豪商、一般人。数万という人がコロセウムに集まった。
『視界進行はお馴染み♪ カレン・フォン・アルフレートがお送りいたします♪』
「「「「「おおおおおおおおおおお!」」」」」
歓声がコロセウムを包む。
『ルールは簡単! トーナメント表に従って相対を解決していきますよぉ!』
再び歓声が沸き起こる。未来の騎士たちの真剣試合はそれだけの娯楽だった。
『注目の第一カードはぁ! レオン・フォン・レ―マンとカルム・スワンプ!』
呼ばれて歓声の中で彼らは戦場に上がる。
『レオン選手は今大会の優勝候補の1人! 評価Aを受ける大貴族の嫡子です! 対するカルム選手は平民でありながら、評価Cを受ける中々の逸材という感じです! それでは解説のヴァイストイフェリン学長! 一言お願いいたします!』
『イェルディス・フォン・ヴァイストイフェリンである! 大方の予想ではレーマンの勝利という見方であろう! しかし、面白い情報がここにある! カルム・スワンプは日に30分しか剣を振るわない問題児だと! そして、この1ヶ月姿を消していたとも! 私は、スワンプが何故この舞台に上がったか甚だ疑問であるが! この1ヶ月の成果を見せてもらおうではないか! 諸君の思う以上にこのカードの勝敗は読めぬ!』
『ありがとうございます! カルム選手の奮戦に期待しましょう』
観衆の耳目の中で、カルムはゆったりと構えた。
「カルム・スワンプ!」
相対するレオン先輩が怒鳴る!
「1月修行した程度で何か変わると思うなよ!」
「……あぁ。わかってるよ。先輩。けどね。俺には目的があるんだ」
審判の教員が手を上げる。
「始め!」
同時にレオンが切りかかった。しかし、
「見えているよ」
レオンの太刀は土煙を生むだけだった。
「答えろ! カルム!」
土煙を膂力でレオンが払う。
観衆はレオンを中心にカルムが回り込むのを見ていた。
「貴様の目的は何だ!」
晴れる。レオンは
「そこぉ!」
その人影に狙いを定めた。
しかし、
「手ごたえが!?」
白い制服だった。それは、カルムが脱ぎ捨て、投げたものだ。
「しまった! これは、アイツの得意とする!?」
その時には側頭部に飛び膝蹴りが決まっていた。
『決まったぁぁぁぁ!!! 第一試合の勝者はカルム・スワンプ! なんと、無手での勝利だああああ!!!』
『これは、カルムの戦略勝ちよ! レオンの初手から全てを見極めた上での勝利だな!』
歓声は予想外の決着により一段と大きくなる。
『非常にのらりくらりとした剣技を扱うと聞いていたが鋭さを得て老獪な剣技に昇華している! 見事!』
歓声と真逆にカルムのリアクションは冷えたもので、肩に、鞘に収まった愛刀を乗せるとさっさと引き返すのだった。
◇◆◇◆
そうして、彼は、決勝の舞台へと駆け上がっていく。
対峙したのは、
「やあ!」
メアリ・フォン・プリコンティブだ。
「……」
「へぇ。剣で語ろうっての? いいよ」
「始め!」
合図で彼らはぶつかった。
「なっ!?」
驚きの声はメアリから。
何故ならば、そのカルムの剣技は霞に隠されたようないつものカルムの剣技ではなくて
『あれは……。あれはプリコンティブ家の剣技だ!』
イェルディス学長が解説した。
カルムはメアリとかがみ合わせの踏み込みを披露したのだ。
観衆のざわめきの中で、やっとカルムは声を出した。
「俺は、森の中で、君の剣を見た」
「うそ……」
「音のない君の剣技に惚れた。けどさ」
カルムは今一度正道の構えをとった。
「君が自分の剣技はここまでだって言ったことが忘れられなかったんだ……」
だから、その先を見せたくて愚直に磨いた。本来の自分の技ではないそれを。
「そして、今の俺は、君を超えている! メアリ! 君の剣技の可能性を見せてあげるよ!」
メアリは静かにカルムへのかがみ合わせで構えを作り直した。
カルムを手本として。
先の一合は互角に見えて、メアリの負けだ。それは、メアリはカルムの初手を見誤り、カルムは読み切って敢えて合わせたからだ。
故に、カルムの言葉を真と捉え、メアリは返答を言葉ではなく、構えで返す。
そして、また。
彼らの剣戟が始まる。
◇◆◇◆
観衆の影の中で、魔剣士は息を飲んだ。
駆け上がる2つの白銀に対して。
「す、凄い!」
魔剣士……ドレイク・ヒルトンは、自分の剣技の才能の無さを嚙み締めるのだった。
戦慄をなだめたのは、
『大丈夫だ。契約者。お前ならば、あやつらに勝てる。まずは、メアリからやるぞ。見計らえ。決勝の瞬間をその時、お前の才能は証明されるさ』
携えた魔剣ティルフィングだった。
◇◆◇◆
2人は駆け上がる。剣士と剣士は最早、風と風だ。
灰色の風がカルムで、白い風がメアリだった。カルムとメアリは正道の剣技をぶつけ合う。
しかし、速度に合わせて、カルムから灰色が抜けていく。カルムの剣技が白い印象から、白銀の印象へと昇華していく。
そして、
「くっ!」
あのメアリ・フォン・プリコンティブが押され始めた。
「全て見えている」
それが、プリコンティブの剣技。未来を見る。
「お、わ、り!」
メアリの剣が宙を舞った。
歓声が湧いた。
『学内大会優勝者はなんとぉ! カルム選手!』
『あっぱれ! 見事にプリコンティブの剣技を極めよった!』
皆が夢中になって、カルムを褒めて称えた。
だから、
『今! 契約者ァ!』
ティルフィングの掛け声は絶妙だった。
◇◆◇◆
その陰からの一撃をカルムは防いで見せた。
「……メアリ? 大丈夫?」
「うん。カルム君」
メアリを自らの陰に隠す。
「誰だ!」
カルムは襲撃者に正体を問うた。
「ドレイク。ドレイク・ヒルトン」
「聞かない名だな」
「だろうな! けど、それも今日までだ! ティルフィング!」
『オウ!』
彼は、漆黒の剣を掲げた。
「魔剣!?」
驚きの声はメアリからだ。
超速の振り下ろし。カルムはそれを柔らかく地に逃がしてみせた。
漆黒の薔薇の意匠の魔剣とただの鈍らが鍔迫り合う。
薔薇の意匠が実体化してカルムを襲った。
しかし、
「見えている!」
そのすべてが切り裂かれるのだが。
ぱきんという音がした。カルムの剣からだ。
『主は一度わしを切り裂いた! その時にその剣の寿命は尽きた!』
◇◆◇◆
投げ渡された。白銀の剣だ。
「カルム君! 使って!」
それを受け取ると不思議と力の湧いてくるカルムだった。
「メアリ! 俺は!」
空中で受け取って、抜刀、抜き、放った鞘を蹴り上げて空中で加速した。
「君が好きだ!」
そうして、魔剣士は切り裂かれるのだった。
だが、それで終わることは、なかった。
「ごっふ!」
魔剣士が血反吐を吐く。
すると、血反吐が彼を飲み込み。異形へと変化させる。
例えるなら、薔薇の意匠の魔剣を携えた1つ目の竜と言ったところか。
魔剣士は剣士の姿を捨て魔物となった。
「Gyaaaaaaaa!!!」
◇◆◇◆
踊る少女人形を誰かが幻視した。
異形に成り果て、人外の膂力を振るう魔剣士と相対する誰か。
薄い笑みを浮かべながら佇む淑女を幻視したものもいた。
持ち主の願いを叶え、最後には持ち主の魂を喰らう魔剣に、使い古された鉄の剣で刃を合わせる者がいた。
あらゆるものから、魔剣の脅威を薄れさせ、己の剣技に心を奪うのは、その男。
魔剣士と魔剣が吠える。
ぶつけた力は、音のない剣技に流された。
◇◆◇◆
「君は……ここにいてくれ」
「でも、カルムくん……」
「あの魔剣も魔剣士も、もう君を見ていないから」
森へ逃げたカルムはメアリの細い肩を掴んだ。
「想像よりも、細かった」
「……」
「やっぱり、あの剣技は君だけのものだ。それじゃあいってくるかな」
少しだけ、指が震えていたのがなぜなのか。メアリにはわからなかった。
剣を通さなければ、カルムのことは何もわからない。
「待って」
メアリは、カルムの離れていく掌を包むようにつかんだ。
「これが、私の気持ちだから」
◇◆◇◆
異形となった魔剣士は翼を休める翼竜のように、泉の前に佇む。
「ティルフィング……。ここで待っていても、あいつらが逃げる」
ティルフィングは、両親の帰らない家で弟の面倒を見るように優しく契約者を諭す。
「安心するがよいぞ。契約者。あやつは絶対にお前の前に現れる。お前は、願いを叶える魔剣に願ったのじゃから」
ドレイクは、その言葉を受けて強烈な眠気に襲われる。魔剣という、常世にはあってはならない力の行使は確実に彼の精神を、限界を超えて蝕んでいた。
「契約者……。今は眠るがいいさ。目覚めたときに願いは叶うであろうよ」
◇◆◇◆
メアリと別れて、向かったのはあの泉だ。
もしも、剣士の道を選んでいなかったのなら、惹かれていたであろうあの少女と出会った。
そこに佇んでいたのは、欲望によって、人ではなくなった醜いもの。
無言で、剣を抜こうと鞘に手をかけた。どうしたって許せなかったから。
その時、喋るためではなく、人を食いちぎる為の口が、ゆっくりと開いた。
「待て」
それは、異形のものでも、少年のものでもない、心地の良い声。
カルムはそっと力を抜いた。
「なんだ。お前……こんなことして」
テイルの胸がちくりと傷んだ。
「主は傷心の女にそんな声をかけるのかえ?」
「俺には……女心はわからんのよ」
剣士と怪物はいつの間にか、少年と少女になっていた。
「そうじゃな。主はそういう男じゃ」
カルムは泉を見ながら背を向けた彼女に問う。
「その契約者君に聞かれるんじゃないか?」
「こやつは寝ておるから」
「全くこれだから凡人は、剣戟の楽しさを全くわかっていない」
ティルフィングは、カルムを呪ったが、テイルはカルムに合わせて嗤った。
「同意するのぉ。こやつと契約してからずっと思っておった」
「思ってただけかよ」
「そうじゃ……」
テイルは少しだけ泣きそうになり、神妙な顔をした。
「こやつには、伝えてもわからん。主や、あの忌々しい女のように、剣の楽しさに触れることはできん」
それは、悔し涙だった。剣の楽しさを伝え、魔剣の宿業から自分を解き放つ剣士に振るわれない悔しさからの。
「それでも、奴は、剣を振るっていたんじゃ。主らのような才あるものが持ち込まない理由の為に」
「へぇ……それはどんな」
カルムは、酔った女をそのまま家に帰すように、誠実な返答をする。
テイルが、どんな返答を待っているか、わかっているのに。
テイルは、取り繕って、宝物を自慢するように笑う。
「家族の生活、名声や、恩返し」
「凄い! 全く剣に想いが向いてない!」
「仕方ないじゃろう。奴にとって剣は想いを乗せるものじゃなくて、生きていく為の手段じゃから」
「じゃあ……お前の剣としての美しさも、そいつは見ることなかったんだな」
カルムは、息を一つ吐いた。
「お前が……女じゃなかったら、ただの剣や男の親友だったなら」
「主が……その剣を、ただ主の快楽の為に奮っていたなら」
二人の声が重なった。そうしてカルムがテイルを、ティルフィングとして使う未来がありえたかもしれない。
「……」
涙が決壊したのはテイル。冷たく、けれど、真っ直ぐに見つめていたのはカルムだった。
「今の俺には、お前と契約してやることはできない。この剣を汚すことは、彼女と同じ土俵で戦うには、その力は無粋すぎる」
「あぁ―――」
テイルは泣き続ける。ただ、少女として。
カルムは、涙に回答を一つ。
「お前が、生への執着を捨てるというなら或いは」
カルムは、すぐに自分の間違いに首を降った。
「いや、お前に委ねなどしないさ」
一つ、覚悟を決めた。あのとき、助けてくれた少女に対して、魔剣の少女が恋した、ある男の剣士として涙に回答を。
「まだ、見せていないものがある。お前のおかげで手に入れられたものがあるから」
泣き止むまで待って、その続きを口に出した。
「それを、お前に見せよう」
「わしは……主を、主様だとかそう呼びたかった」
「テイル……お前を切るよ」
◇◆◇◆
何故か、喉が痛くて、体が湿っている。
「ティルフィング……体が変だよ」
「そういう力に契約者は手を出したわけじゃよ」
この程度の反動なら、いくらでも飲み込んでやる。ドレイクは意気込んで、魔剣の力を巡らすことに集中した。
「契約者、奴がきたぞ」
「……カルム・スワンプ!」
対面したのは黒髪の忌々しい剣士。絶対に敵わないと思ったメアリ・フォン・プリコンティブを大した努力もせずに、いきなり圧倒した気に入らない奴。
「ティルフィング! お前の力は本物だった! 奴が現れた!」
「……あぁ。契約者。わしの力を引き出して、奴を切り伏せてみせよ!」
ドレイクは知らない。ティルフィングの女としての名前も、願いを叶える異能が噓だということも、ティルフィングの全力を引き出したとて絶対にカルムを倒せないと魔剣が悟っていることも。
「「おおおおおおおおおおおお」」
それでも、魔剣は契約者に声を重ねた。
◇◆◇◆
カルムは異形の咆哮に合わせて、意識を切り替えた。剣技を切り替えた。
手札は二枚。
スペードのエースか。ハートのジャックか。
スペードのエースをしまって、掲げたのジャックの方。
もう、そのイメージを持った時点で、既に切り替えは終わっていた。
見据えるべきものは何か。見た時には、しまい込んだと見せかけた方のカード、スペードのエース、即ち未来視の剣技が異形の腕を全て撥ねた。
「GYAAAAAAA!!!」
異形の本体が、断末魔を上げて少年へと戻る。
所詮、凡人の耐久力はその程度で、彼は沈んでいく。四肢を失うことを恐れたまま相対して、何が剣士かと侮蔑の視線を送りながら、撥ね上げた肉塊、ティルフィング、テイルの宿ったそれらと相対した。
魔剣は、契約者がいなくては力を発揮できない。しかし、必ずしも、契約者が振るう必要はなかった。
契約がなされれば勝手に敵対する者も愛する人も刺し殺すのが魔剣というものだ。
四方から立体機動で、カルムを襲うミミズのような肉塊たち。
凡そ、いくら剣技を鍛えとて人に向けた技では対応できないそれら。
正道ではいくら極めても勝ちえぬ鋭撃がカルムを穿つ。踊る少女人形の幻影を打ち抜いた。
「な」
踊る少女人形?
自分は一体いつからそんなものと戦っていた。
「これが俺の見せたかったものだよ」
人一人分離れた場所から、不意に肩を叩くように、カルムの声が投げかけられた。
「メアリの剣技が俺に教えてくれたから」
異形の肉塊は、全力で飛び上がる。一つがついてこれずあっさりと断ち切られた。
「二週間も前に、彼女を切るのがお前たちだって」
「なら……その時に止められたのではないか!」
「あぁ」
また、ティルフィングは、テイルという女になっていた。
「どうして主はそうなんじゃ!」
「てぃ、ティルフィング……」
魔剣に精神力をごっそり削られた凡人は、初めてテイルという少女を見た。
しかし、既にこの戦いは、剣士と魔剣士のものではなく、剣士と魔剣の戦いだった。
「俺は……この剣をお前に見せなきゃいけないと思った」
カルムは告白する。
「感謝してたから。頑張った成果が、借り物の剣技じゃ満足できなかった」
カルムのあの未来視があれば、メアリに勝つことなど容易だった。
しかし、それではメアリの剣に感じた美しさへの感謝には到底足りないから、メアリが楽しめるように更に力をつけた。君の剣に隠された私の剣の真髄はどんなものなの、と彼女が問えるように。
そこに至れたのは、テイルの言葉のおかげだった。
同じ様に、テイルにも何かの形で返さなくてならないと、メアリを救う力を手に入れた後で思い直したのだ。
「元々、俺の剣は、噓で真実を覆い隠す剣だ。だから、メアリの最高の剣技には正面から使うのは失礼な剣技だった。そう、思ってた」
だから、メアリには自分元来の剣技を虚飾として纏い、未来視すら可能にする正道の剣技を叩きつけようとした。
「でも、お前は、テイルは俺を真っ直ぐに見ていたから、自分の剣を極めて、その先を見せなきゃいけないと思ったんだ」
「馬鹿者……。そんなもの、素直になって言葉で伝えればいいじゃろうが!」
「俺は剣士だから。剣で、想いを伝えなきゃ」
愚直な生き方だ。けれど、それで伝えようとしているのが、ただの感謝だという事実が余計にテイルを締め付ける。
「主は、いつもわしの心をばらばらにする」
テイルは叫ぶ。ここが想い出の場所だということが、更にテイルを雁字搦めにしていくつにも別れた肉塊に変えていく。
引き絞られたいくつものテイルが、打ち抜くのは、少女人形の幻影ばかりだった。
特殊な歩法が、カルムの位置を狂わせる。正道の剣技を幻影として纏い、思考の暗闇から不可視の剣を振るうのがカルムの剣の深奥。
邪道の極みの先。当たり前に、全ての動きでそれを成す。
「テイル」
声すら、既に何処から響くのか分からず。不可視の剣に消されながら分裂して、無数の視点を持つたびに、少女人形の幻覚がテイルの視野を黒く染めていく。
「こっちだ」
暗闇を晴らすのもカルムの声だった。
「見つけた」
必殺と定めた瞬間こそ致命の隙。ある程度剣術に精通しているなら常識のそれ。
どちらも、お互いを捉えた瞬間だったがワンテンポ遅れたのは必殺のそれに元来のものでないものを選んだカルムの方だった。
「もらったぞ! カルムぅ!」
閃撃を。自分が追い詰めてしまった少女に、救いとなる閃撃を!
閃撃を。迷いを晴らさせてくれた恩人の少女に、感謝の気持ちを伝える閃撃を!
「……撃を! 閃撃を!! 閃撃を!!!」
◇◆◇◆
魔剣ティルフィングは断たれた。
残った少女。テイルをカルムは優しく抱いた。
「ぬ、主を。主様と呼びたかった……」
「あぁ」
「恋というやつをしてみたかった」
「あぁ」
「あの女から……」
主を奪いたかった。
そこで、少女はこと切れる。残ったのは、真っ二つになった薔薇の意匠の剣だけだった。
「お前の意志は届いたよ」
カルムの持つメアリの業物がぱきんと折れるのだった。
「さてと」
カルムは気を失ったドレイクを担いで泉を後にする。
◇◆◇◆
そんな昔話を思い出していたのは、病室での出来事だ。
空を見上げていた。
「ねぇ。何を思い出しているの?」
そのしゃがれた声に、カルムは眉をひそめる。
「貴女が、空を見上げている時はいつも過去のことを思い出している時だから」
「あんまり声を出すなよ。身体に障る」
その会話の相手はメアリ・フォン・プリコンティブだった。否、メアリ・スワンプだった。
あれから10年が過ぎた今。彼と彼女は結婚したものの、メアリは不治の病に侵されていた。
「カルム隊長」
とは、病室の前で待機していた警察機構の部下だった。
「やれやれ。こんな非番の日まで呼びださないでくれたまえよ」
「しかしながら、第二小隊から、応援の要請が」
「勝手に動いて構わんよ」
「我々の指揮官は貴女です」
「……。わかったよ。行けばいいんだろう?」
病室の中から、やせ細ったメアリが部下に向かって手を振っていた。
贈り物に閃撃を タケノコタンク @bamboo55555t
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