001 政府
はいどうもこんにちは、異世界賢者です。
今回は政府に突撃し、僕の戸籍を作ってもらいに行きたいと思います!
...うん、やめだ。
何だこのテンション。維持すんのクソ大変じゃん。
この世界の配信者って人たち、もしかして化け物?
さて、そんなどうでもいいことはおいといて。
やってきました国会議事堂。とても小さいです。
え、まじ?これがこの国の城なの??僕の世界じゃなめられちゃうぞ?こんなちっささじゃ。
...あ、そっか。そもそもこの世界じゃあんまり戦争がないのか。
僕たちの世界よりも狭いし、そこまで問題ないのかな。
と、そんなことを考えていると。
「はーいそこのあなたー。大丈夫?ここから先は進入禁止だよー?」
国会議事堂とやらの前にある小屋から、年寄爺さんが出てきた。
え、どうして僕がこの国の言葉を覚えているか?
僕が創った魔術――ではないけれど。僕の世界には【
ある程度知りたい内容のことを理解していたら、その魔術を行使するだけで完全に理解できるといった魔術なんですよ。
知りたいことを完全に理解できるということは世界から引き出す、という内容が内容だけあって結構高度な魔術だからね。使える人は結構少ない。
さて、それじゃあ僕が覚えた”日本語”とやらの初デビューと行こう。
「すみませんが――《眠れ》」
うん、訛りなくうまく言えた。
そう満足した瞬間、目の前のおじいさんはまるで体から力が焼失したかのように崩れ落ちる。
これが、僕の持つ異世界の技術――”言霊”。
魔力を込めて言葉を放つと、魔術とはならぬもののある程度の強制力を持たせることができるのだ。
僕の世界だと、言霊なんてコンマ数秒相手の動きを止めることにしか役立たなかったけど、この世界では違う。
言霊とは、相手の魔術の技量が高いほど抵抗力は高くなるものなのだ。
魔術という技術がしっかりと確立もされていないこの世界で、僕の言霊にあらがえるものはいない。まぁ、僕の世界でも僕にあらがえる人なんてそういなかったけども。
魔力による身体強化を体に施し、爺さんを持ち上げる。
割と重いけど、この人健康診断大丈夫かな。
いきなり眠らせたのは申し訳ないし、一応体の悪いところ全部直してあげておこう。僕なりの謝罪である。
「さて、進むとするか」
回復魔術をかけ、爺さんを小屋の中に寝かせる。
体が軽くなったからか、若干さっきよりも寝つきがよさそうな顔をしている。
小屋のドアを閉め、僕は国会議事堂へと足を踏み入れるのだった。
――――――――――――
「特殊部隊が全滅...だと?!」
某研究所、その所長室。
そこでは、異界からの来訪者へ差し向けた特殊部隊。その末路が報告されていた。
「はい。上空に飛ばしていたドローンのカメラを確認したところ確認したところ、謎の光が発された瞬間周りの生き物すべての生命活動が停止したとのことです」
賢者も気づくことがなかった、ドローンの存在。
そこからしっかりと情報が得られた研究員は、淡々と報告を進める。
「どうやらその時に発された光を解析したところ、それに含まれる魔力だけでも容易にS級は超えるとのことです」
異世界ではしっかりと魔力量を数値化する技術が確立されていたとはいえ、この世界は魔術を扱う文化がそもそも根太やされている。
故に創られた、この世界――地球特有の魔力のレベル付け。
簡単なアルファベットで表されるそれは10個のレベルを持っていた。
さて、簡単な説明をここに記そう。
Error: 地球どころか世界を壊せる。神話級。
SS: 地球に現れると、全ての生命を消せる。ぎりぎり地球を壊すことはできない。
S: 地球に現れると、国どころか大陸を消せる。異世界冒険者の魔術師の上澄み程度。
A: 地球に現れると、規模関係なく国一つは簡単に消せる。
B: 地球に現れると、一つの都市が消える程度。
C: 一般的な異世界魔術師の魔力量。これだけあれば生きるのには困らない。しかし、異世界で冒険者としてやっていくには不足。
D: この世界で時々生まれる超能力者の魔力量程度。無意識に扱えることがある。
E: 異世界で言う初級魔術なら一回扱える程度の魔力量。子供相手の目くらまし程度にしか使えない。
F: 動物が本来持つ微量の魔力量。回復力をちょっと上げる。
「となると...相手はとても高度な魔力操作技術を持つことになるということか...」
先の説明からわかる通り、S級の魔力というのは大陸を消すことができる程度の魔力量。
それを伴った光の爆発で、生命しか壊れていないということは――それすなわち魔力を精密に圧縮、そして暴走を抑えることができるということ。
そもそも賢者の持つ魔力量が膨大すぎて、一つの魔術に込める魔力量がバカみたいなことになっているということを入れたとしても、その魔術を精密に操作できている事実は変わらない。
”秘密兵器”を持ち出しても、使う前に殲滅される。手も足も出ない。
故に――
「――下手に機嫌を損ねさせたらすべてを壊されかねんな...よし、追跡をやめ自由にさせろ。俺たちが何をやろうと、来訪者を同行することはできない。ついでに、世界各国の首脳陣に”破滅を覚悟しろ”と伝えてくれ」
所長は、そう判断せざる負えなかった。
「俺はタバコを吸ってくる。来るか?」
「いえ、わたしは吸わない主義なので」
そうして、所長は黄昏に行くのだった。
――――――――――――
「やあ」
夢だったんだよね、偉い人たちが会議してるとこにいきなり現れるの。
どんな反応するか想像してるとこう...知的好奇心というか、そんなのが指摘されるじゃん?僕の世界だと僕は有名になりすぎていきなり現れても「またかよ」みたいな顔されるから、まさに僕にとってこの状況は夢だったってわけ。
「だ、だれだ!」
ちなみに、僕が現れたのはこの国の首相らしい人の頭上すれすれ。
さすがにいきなり人が乗ったら首の骨が折れるかもだし、さすがに浮いてるよ?
でもどうやら、殺されてはおかしくないくらいの汚職はしてるようだけどね。殺すのはこの後にしとかないと、恐怖が煽れない。
――さて、ちょうどいいくらいに僕に視線が集まっている。
ここって一応国の行く末を会議する場所なんだよね?なんでか寝てる人いるけど...大丈夫なのかな?
まぁ、そういう人以外は僕に視線を向けてきているしよしとしよう。
「さっそくだけど、君たちには僕の戸籍を作ってもらう。拒否権?もちろんないよ」
僕を見つめる、すべての人に見えるよう手を広げる。
徐々に上昇し、指を鳴らす。
――パチンッ
軽く軽快な音が鳴ったとたん――僕を見ていない、寝ている人たちの頭がはじけた。
「あああああああ?!」
混乱した何人かが走り出し、この会議場から出ようとする。
うーん、あんまり汚職をしてない人だけ通してあげようかな。
どうやらこの政府、違う国の工作員ばっかりで構成されてるようだし。
そしてもう一度、指パッチン。
すべての出入り口に判別結界を張った。
そして数秒。すべての入り口に議員さんたちは集まるが――
「...えぇ、まじで?」
――その、ほとんどの人がここから出れないでいた。
多分、ここにいた最初の人数は200人くらいだったと思う。
そして今残っているのは、170人くらい。
おかしいな、汚職をせずに真にこの国を想っている人は30人しかいないの?そんな人が何で議員にえらばれてるの??
選挙制を実施している国を、僕は知っていた。
ていうか、僕がもともと住んでいた国は選挙制だったから。
そして、その僕の住んでいた国は、ここまで腐敗していなかった。
「はぁ...ここにいる人たちはみんな死んでいいってことね?」
とりあえず、がやがやうるさいから全員気絶させといた。
逃げた議員?あぁ、僕のことを話せないような契約は強制的に結んでいるよ。本人の許可?圧倒的な実力差にはそんなもの意味をなさないんだ。
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