掌編「天使代行」

@alice-u

天使代行

知り合いから紹介されたアルバイト。

仕事の内容は「天使代行」。

胡散臭すぎる……!

令和じゃ天使も隙間バイトで募集する時代だってさ。

指定された場所に行くと、不健康そうなお兄さんが待ってました。話しかけたら、同じく応募した人なんだって。天使って顔じゃないよ、目の下のクマがヤバい濃いし。(アダ名はクマ兄だな。)ちゃんと寝てる?

そんな俺もスキンヘッドだからキューピットにはなれないかもですが。


しばらくしたら、教育係の先輩が来ました。

めっちゃ美人のお姉さん、ラッキー。

今日の天使代行のお仕事は、偉い神様からのメッセージを指定された人に伝えるんだって。めっちゃ楽。さすが隙間バイト。人間相手だから天使役も人間がやるのね!

終末のラッパとか吹いてみたかったけど、まだやる予定無いらしいよ。


気になったのは、お姉さんのヤル気が全然無いこと。話してみたら、なんとお姉さんもバイトだってよ!天国も随分と経費削減なんですねー。

じゃあ本職はなにしてんですか?って聞いたら、まさかの看護師だって。えっ、普段も白衣の天使、やってんのかい!って心の中でツッコミ入れちゃった。


クマ兄の仕事も気になるな、と思ってたら胸元に銀の十字架が見えました。

マジモンの聖職者ですかー?って聞いてみたら、いえ悪魔祓いです、だってよ!

あ、そっちですか!なんで天使代行なんかに応募してるわけ!?夜通し悪魔と戦ってるから寝不足なのかも?不健康そうだもんな……


二人のやり取りを見て、お姉さん退いてないといいけど。そうだ、一つ聞いておかないといけないことがあった。

お姉さん、俺、実家が寺で仏教徒なんですけど、それでも天使代行やってもOKですか?


はい……完全にお姉さん呆れてるわぁ。

その時、彼女の胸ポケットからメロディが鳴った。

~♪(ワーグナーのワルキューレの騎行だ……も、黙示録……!)


液晶を一瞥して、こっちにスマホを寄越す。

相手は、神様って書いてあるけど。。。

「もしもし?」

「もしもし、あーワタシ神様ヨ。キミ達、この仕事ナメてるデショ?冷やかしならカエッテ!クビよ!」


……無言で、スマホをお姉さんに返した。

すごい冷たい視線で俺らを一瞥したお姉さんは、何も言わず帰っていってしまった。


取り残された二人。

ボソッと隣のクマ兄に俺は尋ねた。

「あのさ、悪魔祓いってどれくらい稼げる?」


俺は今、猛烈に金欠なのだ。




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