第8話 ビッグパック101個で、リブのヤツをぶちのめす!

【これまでのあらすじ】

 

 資本主義を食い尽くせ!

 ドーナツ・トランペットの望みはただひとつ、“王様”になること。

 タイムリープの鍵は、ただのビッグパックじゃない! ドーナツ少年は、もう一度パクドナルドに注文した!

「ビッグパック、101個だ!」

 バーガーとタイムリープが、ドーナツを王の階段に登らせていく!


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


 またも3つのトレーからこぼれ落ちそうなビッグパックが、テーブルに運ばれてきた。俺は猛然と包みを破ると、一つ目のビッグパックにかぶりついた。


 カギは、ただのビッグパックじゃない。 


 101個だ。

 

 あの時、101個目を食べ切ったと思ったら、急に体が熱くなりはじめた。ビッグパック101個分の成分で、妙な化学変化でも起きたのかもしれない。とにかく、101個を食べ切れば、きっとまたリープ出来るはずだ。


 50、60、70――俺はブルドーザーのようにビッグパックを食べ続けた。


 脂汗が机に滴り落ちる。胃が悲鳴を上げる。それでも、俺は止めなかった。

 

 いよいよ最後の101個目に手を伸ばす。


 震える手で包みを破ると、ビッグパックを口に押し込む。割り込んできたリブの、憎々しい顔を思い出しながら、口の中のバンスと肉の塊を呑みこむ。


 そして、異変は起きた。


 食いまくったパティの油が燃え出したように全身が熱くなる。脳みそがビッグバンみたいに膨張していく。白い閃光が光ったかと思うと、世界が暗転した。


        $ $ $



 正義感ぶった、偉そうな顔をした女が、俺の前に立ちはだかっていた。


「アンタは王様じゃなくて、イカサマ。みんなを振り回して、人気者のつもり?」


「リブ……やっと会えた」


 今、この瞬間だけは、飛びついて、その憎たらしい顔中にキスしてやりたかった。死ほどビッグパックを食ってようやく会えた、そして、今からぶちのめすであろう、その顔に。


「今度という今度は逃がさねえぞ」


 子分どもが歓声をあげた。


「ドーナツ、ついに惚れたか?」


「お前の女にしてやれ!」


 リブの顔から血の気が引いた。


「ふざけないで。ドーナツ・トランペット」


「今すぐ、お前をぶちのめしてやる!」


 言うなり俺は右ストレートを繰り出した。


 そうだ。はっきりと覚えてる。俺が右腕を伸ばしたタイミングで、俺の腕の下をすり抜けるようにしてリブの奴はカウンターを打ち込んできた。だが、今回ばかりは、そうはさせない。踏み込んだリブのアゴを、左のアッパーで打ち抜いて――。

 

 次の瞬間、頬に焼けるような痛みが走り、脳天が揺れた。


 音楽室の床に無様にひっくり返った俺の上に、冷たい声が降ってきた。


「もしも将来、世界がひっくり返って、あんたがアメリカ大統領になったって、死んでも絶対、アンタにだけは服従しない。わかった? ドーナツ・トランペット!」


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