第9話 またまたまたも殴られて……最大の復讐を計画だ!
【これまでのあらすじ】
資本主義を食い尽くせ!
ドーナツ・トランペットの望みはただひとつ、“王様”になること。
ビッグパック101個でタイムリープに大成功!なのに、ドーナツ少年は、またもリブに、クロスカウンターで殴り倒された!
バーガーとタイムリープが、ドーナツに王の階段を登らせていく!
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それからというもの、俺はタイムリープを繰り返した。
ビッグパック101個を食っては、今度こそリブのヤツを殴ってやると誓ってリープする。だが、腹立たしいことにリブのカウンターの切れ味は信じられないほど鋭く、何度リープしても俺は殴られるばかりだった。
392回目に殴られた後、音楽室の天井を見上げた俺は、ようやく気がついた。
「ただタイムリープしてるだけじゃダメだ。アイツに勝つには……」
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その日の放課後、小学校の校門を出るリブの後をつける怪しい人影があった。影の主はもちろん、俺、ドーナツ・トランペットだ。
リブに勝つには、アイツの弱点をつかみ、俺の前にひれ伏させること。
俺は力じゃなく、インテリジェンスで勝つってワケだ。
ウチの生徒のほどんどは、近くにある高級住宅街へと帰っていく。けれど、リブは、途中で友達と別れると、どんどんと一人で歩いて行った。
やがて、リブがやってきたのは、安い団地の立ち並ぶ一角だった。公園では薄汚れた服のガキが走り回り、ベンチで酔っぱらったおっさんが眠り込んでいる。どこからか夫婦喧嘩の声が響く。
俺は、この場所を良く知っていた。
幼稚園の頃から、親父の革靴の音を追いかけて、こういう団地をよく歩いた。ドアを叩き、怒鳴り声を浴び、紙束を抱えて帰る親父の背中。
不動産開発の仕事をしている親父は、クイーンズやブルックリンで、低所得者向けの団地を開発していた。俺は、そんな親父の仕事が面白くて、仕事に行く親父の後をついて歩いていたのだ。
リブが、団地の階段をのぼっていく。階段を曲がっていくリブの横顔を見て、アイツの眼鏡のつるが、セロテープと針金で補強されていることに、俺ははじめて気がついた。
眼鏡も買い換えられないのか?
どうして、こんな貧乏団地に暮らしてるヤツがキー・フォレスタに通ってるんだ?
不思議に思ったが、とにかく後をつけると、リブが入って行くドアを確かめた。中から、父親らしき男の声が聞こえる。
「リブ、帰ったなら、煙草を買ってきてくれ」
昼間から家にいるってことは、まともに働いてもいないロクでなし親父なんだろう。ドアが閉まると、俺は部屋の番号をきっちりと頭の中にメモした。
我慢しようと思っても、口もとがゆるみ、笑いがこみあげてくる。今度という今度こそ、リブのヤツをぶちのめしてやれる。
その夜、俺は満を持してパクドナルドへと向かった。
「ビッグパック、101個だ!」
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