第3話 ビッグパック、101個
33個を超えたあたりから、もう一つのビッグパックも食べたいと思わなくなっていた。それでも俺は食べ続けた。
50個、60個、70個――。
息が荒くなる。腹がはちきれそうだ。あごから、次々と脂汗が滴り落ちる。
「無理するな、ドーナツ」
兄貴が止めようとしたが、それでも食べ続けた。
80個、90個、91、92……93,94,95……96,97,98,99…………100。
そして、いよいよ最後の101個目に手を伸ばした。
今や、体じゅうの穴という穴――毛穴や耳の穴からも、押し出された粘土みたいにパティがニョロニョロと飛び出してきそうだ。俺は、荒々しく包み紙を破り捨てた。口の中にビッグパックを押し込む。逆流しそうなバーガーを押しとどめ、必死で呑み込む。
親父が嬉しそうに叫んだ。
「やったなドーナツ。最高記録だ。お前が王だ!」
サムアップで応えようとする。
その時、異変が起きた。
息が出来ない。喉に大きな拳でもねじ込まれたみたいだ。苦しくてたまらない。食いまくったパティの油が燃え出したように全身が熱くなる。脳みそが爆発しそうだ。
助けてくれ――。
叫びたかったが声は出なかった。
「バーガーが喉に詰まったんだ! 救急車! 早く!」
兄貴の声と同時に床に崩れ落ちた。
俺は死ぬのか?
どうしてこんなことになった?
俺はただ、すげえって言われたかっただけなんだ。お前は最高だ。お前こそが王様だって。正直、理由なんてどうでもよかった。
ただ、すげえって――。
気がつくと、世界で一番嫌いな女――リブ・ホルスタインが俺を見下ろしていた。
「もしも将来、世界がひっくり返って、あんたがアメリカ大統領になったって、絶対あんたに服従しない。わかった? ドーナツ・トランペット」
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