第4話 ドナドナ
どうなってるんだ?
俺はさっき、ビッグパックを喉を詰まらせ、死にかけたはずだ。なのに、また音楽室の床の上に倒れていて、世界で一番嫌いな女、リブ・ホルスタインが俺を見下ろしている。
ということは――。
「また殴ったのか!」
「また?」
「とぼけるな。俺はパクドナルドで死にかけて、病院に運び込まれた。ショックで記憶は飛んでいるが、とにかく、今、学校にいるってことは、目が覚めてから学校に来て、今まで授業を受けたんだろう。そして、またお前は俺を殴った。どうせ、またくだらない理由で」
「おかしい頭が、さらにおかしくなった?」
「黙れリブ。この、あばら骨女。名前の通りガリガリでセクシーの欠片もないやつめ」
「ドーナツみたいな空っぽ頭よりずっとマシ」
リブは吐き捨てるように言うと、さっさと音楽室を出て行った。
俺は子分の一人、リブとのやりとりを興味津々で見ていたくせに、目が合うなり見ていないふりをしたヤツを捕まえた。
「どうして、リブはまた俺を殴った?」
「そりゃ、ドーナツが先生を殴ろうとしたからさ。止めに入ったリブをドーナツが殴ろうとして、逆にやられちゃったっていうか」
「それは、昨日の話だろ」
「昨日も殴られたの?」
覚えてないのかよ、と呆れたが、わざわざ覚えてないヤツに自分の恥を話すのも王様としてはいかがなものかと思い、これ以上たずねるのはやめた。
「ドニー、今夜はパクドナルドに行くぞ」
家に帰ると、親父が得意げに言った。いかにも俺が喜ぶだろうと期待するような口調だ。だが、俺はげんなりした。
「親父、パクドナルドは昨日死ぬほど食った。マジで死にかけた。もう当分うんざりだ」
「お前が昨日の夜、行きたいって言ったんだぞ」
「言うわけないし。マジで無理」
親父の目がマジになる。
「いいか。パパは今日、お前のために仕事を早く切り上げた。仕事を、だ」
この目になった親父には、何を言っても無駄だ。自分の主張が通るまで決して引き下がらない。しかも、仕事中毒の親父が仕事を早く切り上げたとなれば、もう勝ち目はなかった。
俺はドナドナの子牛のように、荷馬車に乗せられ市場に売られに行くみたいな気持ちでパクドナルドへと連行された。
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