ルージュの伝言?

ましら 佳

第1話

仕事中、親友からのメッセージに気付いた。


"カレシが浮気してた"


・・・マジか。


"別れる"


・・・ですよねー。


"マ◯ペットかウタ◯ロ買って来て"


・・・マイ◯ットかウ◯マロ??

頭来たからビールかワインじゃなく??


まあいいかと、仕事帰りにドラストでビールと日本酒とマイペ◯トを買って、待ち合わせ。


古いアパートに到着し、その一室がカレシ宅だと。


え?なんで?


こっち来てと言われ行ってみると、風呂場の鏡にデカデカと"バカチン"と書いてあって。


「・・・何コレ?」

「・・・ルージュの伝言って歌あるじゃん?」

「ああ、魔女宅の挿入歌みたいなやつ?」


え???


つまり、彼女はあの歌に憧れて、浮気されたカレシにメッセージを書いたらしい。


「・・今かな、と思って・・・」


でも、真っ赤な口紅なんか持ってない。


あ、これでいいや、と目についた油性ペンで、何書けばいいんだかよく分からず、とりあえずバカチンと書いたと。


「いやいやいや、なんか歌の世界観変わってない?ユー◯ン、バスルームにバカチンとは書かなくない?」


多分、"サヨナラ"とかじゃない?


「だって、それじゃ、オマエがバカなんだ!と、伝わんないじゃん!?・・・でもね、よく考えたら、大家さんのおじいちゃんにお世話になってて。私、いつも果物とかお菓子、よく貰ってたの。・・・あいつ、浮気相手と同棲するからこの部屋出るって。つーか、もうその女のトコにいるみたいだし。・・・大家さん、お金かかるから、部屋のクリーニング頼まないでいつも自分でやってるって言ってて・・・」


申し訳なくなって、消すことにしたらしい。


「なんで油性でなんか書いたの?落ちんの、コレ?」


二人で力任せに拭き上げて、なんとか消して。


「あー、疲れた!ビール飲んでいい?」

「いーけど、なんで私、知らん人の留守宅で掃除して、ビールよ?」


だって一人で居たくなかったんだと、彼女は笑った。


・・・きっと泣きたいだろうに。


気ままで明るくて優しくて、なのにいつも一人で泣いている彼女。


彼女は、余ったビールを彼氏宅の何も入っていない冷蔵庫に突っ込んで。


「くれてやるわ!・・・ねー、飲み行こうよ!」

「じゃあさ。この日本酒、割にいいやつなんだよ。大家さんにあげたら?」

「いいね!世話になったから最後にお礼言わなきゃ。・・・どこ飲み行く?何食べたい?失恋したから励まして!」

「フレンチ!駅前のビストロ、ホロホロ鳥入ったってインスタに載ってた!」

「ホロホロ?なんか泣いてるみたいな名前」


ちょっと悲しい事を言い、彼女は鍵をしめて、郵便受けに小さな鍵を放り込んだ。

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