3.「昔々のお話」【読み聞かせ】
//環境音:雨音(屋内)
「ひとつ、この土地に伝わる昔話を聞いてみませんか?」
(自虐的に笑いながら)
「大丈夫、先ほどみたいに悪戯はしませんから」
(落ち着いた声色で)
「古くから伝わる、この神社の始まりに関するお話です」
「ではこちらへ、私の膝を枕にしながら聞いてください」
「楽な姿勢で聞いていただくのが一番ですから」
//主人公が膝に頭をのせる
(静かに嬉しそうに)
「ふふっ…いらっしゃいませ」
「それでは…」
//ヒロインが小さく息を整える
【ここから読み聞かせのように】
「昔々、あるところに、小さいながらも平和な村がありました」
「ある日村近くの山に、鬼の娘が住みつくようになりました」
「村人たちは怯えました、遠く離れた村で鬼が人間の村を襲った話を聞いていたからです」
「しかし村人の不安とは裏腹に、鬼は悪さもせず、人前に姿をみせることも滅多にありませんでした」
「やがて月日が経ち、村人たちは徐々に鬼の存在を忘れかけていました」
「そんな、ある日の夜」
「突然、村をたくさんの妖怪が襲いました」
「村人たちは、命からがら何とか逃げることができました」
「何人かの村人は逃げ出しながら、妖怪たちの中に鬼の姿を見ました」
「翌朝になり、妖怪たちが去った村で、誰かが言いました」
「きっと山に住む鬼が妖怪たちを呼んだに違いない、退治するべきだ」
「村人たちはその意見に賛成し、一人の勇気ある若者を鬼の住処に向かわせました」
「若者は苦労しながらも、山の中にある鬼の住処を見つけました」
「そこで若者が見たのは、傷だらけの鬼でした」
「苦しそうな声を上げる鬼に、若者は武器を納め尋ねます」
「その傷はどうしたのかと」
「鬼は驚きながらも、消え入りそうなか細い声で答えました」
「妖怪との戦いで怪我をした」
「ふと、鬼の涙が地面を濡らします」
「涙をこらえながら、鬼は言葉を紡ぎます」
「妖怪たちを止められなかった…一族がたくさんの人間を傷つけた償いに村を守りたかった…と」
「若者は言葉を失い、立ち尽くし気がつきました」
「鬼が村を見守ってくれていたから、自分たちは平和に暮らしていけたのだと」
「ずっと昔から人知れず、たった一人で鬼は戦ってきたのだと」
「鬼の体にはたくさんの古い傷が残っていました」
「若者は鬼を手当てし、懸命に看病しました」
「その甲斐もあり、鬼の傷は無事に癒え、若者と共に村へ向かいました」
「若者の説明により誤解は解け、村人たちは鬼に謝り感謝しました」
「鬼は村の一員として認められ、やがて若者と結ばれます」
//雨が止む(環境音ここまで)
「鬼の住処に家を建て、共に村を守りながら、いつまでも幸せに暮らしました」
「めでたしめでたし…」
【読み聞かせここまで】
(静かに微笑みかけるように)
「ご清聴ありがとうございました」
「いつのまにか雨も止みましたね」
「若者と鬼が建てた家が、この神社の由来と言われています」
「二人の子孫が代々受け継いできたのだと…」
「この神社の御神体も、若者と鬼の娘の姿を模したものになっているんですよ」
「きっと寂しくないように、二人一緒に神様として祀られたのでしょうね」
「この昔話が本当ならば、私も鬼の血を引いていることになりますね」
(悪戯っぽく)
「あなたは鬼に捕まってしまった、哀れな迷い人…といったところでしょうか?」
「お話の中の鬼は良い心の持ち主でしたが…」
(悪戯っぽく囁き)
「悪い鬼に捕まってしまったら、簡単には逃がしてくれませんね」
「私は悪い鬼なので、あなたを…」
(吐息たっぷりに)
「あーん…って食べようとしてしまうかも」
(わざとらしく迷うふり)
「うーん…どちらから食べてしまいましょうか?」
「こっちのほうが…美味しいかな~」
(噛みつくふり寸止め)
「あー…ん~…迷いますね」
「それともこっちを…あーん…」
「と見せかけて…」
(耳にくすぐるように息吹きかけ)
「ふぅ~…」
//深呼吸のように耳に息が吹きかけられる
「切なそう…じゃあこっちも」
(耳にくすぐるように息吹きかけ)
「ふぅ~…」
「二人もこうしてじゃれあっていたのでしょうか?」
「同じように…屋根の下2人きりで」
「しばらくは、こうしていましょうか」
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