第2話 私の趣味

 良吾は朝10時に帰って行った。今日が土曜日だったので別に帰らなくても良いけど、楽しみは別にあるのでそんなに止めはしなかった。


「うへへへへ」


 良吾が泊まってくれた。それは使用済み物品の増加を意味している。ホラー映画の後ろめたさは偶然だけど、これはこれで良かった。怖かったけど、結果幸せだった。


 僕に収集癖は無い。だが、使用癖は人よりある。それもある人物限定だが、今日も今日とても揃っている。


「使用済みのタオル、歯ブラシ、食器、クッション、ペットボトル......言えばキリが無いね」


 僕がこうなったらのは数週間前だった。一人暮らしを始めた時は爽快感でいっぱいだったが。数日後に寂しさで死にそうになった。会話は当然無く、コンビニ弁当が美味しくなかった。だけど今更、実家に帰りたいは言えない。そこで思いついたのが、


「良吾とうへへへ......同棲て」


 今では寂しさが消え失せた。私にも趣味ができたからだ。幼馴染であり愛している前田良吾の使用済み物品を堪能するのが生き甲斐だった。

 良吾には申し訳ないが寂しさを紛らわす為にしていた事が、今では変態幼馴染を誕生させ、同棲計画まで考えいる。

 

「幸せだろうな」


 週に四回ほど家に呼んでいるが、それが毎日そして夜も居てくれる。まさしくこの場所がオアシスとなる。だが、良吾は鈍感な部分があり僕の少しだけ重い愛に全くのスルーだ。だから少しずつ埋めている。


 そんな考えを抱きながら洗面台の前に着いた。いつも始める前に興奮してしまう。先に使っていた感じをイメージして、


「......楽しみだ」


 使用済み歯ブラシをまずは一口貰い、舌で堪能してゴミ箱に捨てた。私の唾液が付いた歯ブラシなどゴミでしかないからだ。

 そしてマイブラシで歯磨きを行い、使用済み食器で朝ご飯を食べた。勿論、良吾手作りのおにぎりと卵焼きを、


「はぁ......美味し」


 使用済み食器はしっかりと洗って乾燥させた。そして、ソファーに座り良吾が座った感じを想像しながら頬を緩めていた。片手にはペットボトル、


「くはぁ」


 一気に飲み干した。勿論、満遍なく舐めたが、これは少し違うなと考え直した。まるで風呂上がりのおっさんの様で少し恥ずかしかった。そしてしっかりマットレスで昼寝を行った。


 14時頃になり、暇になった僕は外に出た。近くにあるコンビニでポテチとジュースを買って公園でのんびりと浸っていた。そして時間になったので、家に帰った。


 ピンポーーン


「あら、琴奈ちゃんじゃないの」

「お邪魔します」


 徒歩数分の距離にある前田家は私のパワースポットだったりする。おばさんはとても優しく第二のお母さんと思っている。


「2階に息子が居るからね」

「はい」


 慣れた感じで2階に行き部屋の扉を開けた。そこにはぐっすり眠って可愛らしくうずくまっている良吾が居た。


 少しヨダレが垂れていたので持っていたハンカチで拭いて綺麗に舐めた。

 起きなさそうだったので、おでこを撫でながら顔をじっとり見ながら時間を過ごした。


「琴奈ちゃん! 買い物行ってくるわね」

「分かりました!」


 おばさんが出ていた隙に、私は良吾の布団に侵入した。私は後ろから抱きしめて体を堪能した。やはり実物には敵わない。それを今堪能している。多分、僕の顔は凄いことになっているのだろう。


「ふぅ......昼寝を起こすのも悪いしね」


 僕は静かにベットを離れて本棚の奥にあるエロ本を拝見した。趣味はそこまで悪くないが、可愛い系が多い事に怒りが湧いてきた。グラビア写真集を発見した時は怒り以上のドス黒い泥の様な物が私の名から出てくるような感覚に陥った。


「これは没収と」


 エロ本とグラビア写真集を没収しておばさんが帰ってきたので、没収品を渡して家を出た。これも将来を考えての事だから恨まないでくれよ。おばさんは即ゴミ箱に捨てていたが、気持ちは非常に理解できる。


「あのグラビアアイドルよりスタイル良いし、胸は張り合えないけど、容姿だって全然勝てるのに」


 良吾には悪いけど我慢して欲しい。おばさんとのぎこちない空間を、それを僕への贖罪だと思って今後はそっち系の本を買わないで欲しい。


 自宅に戻った僕は時計を見て午後18時になっていた事を確認して、冷蔵庫から昨日の残りのハンバーグを良吾がアレンジしてハンバーグドリアを作ってくれていたので、


「電子レンジで2分と」


 温めて食べた。良吾は料理を何故か幼少期からおばさんに習っていた。初めは試食をしたりして楽しかったけど、女友達との会話で驚愕した。


「男子で料理できるって最高だよね」

「だね、女子イチコロよ」

「モテる為にする男子もいるからね」


 良吾もモテる為ならして欲しくなかったけど、おばさんの負担を減らす為だとおばさんが教えてくれたので、私は未来を見てしまった。


「琴奈、ご飯できたよ」

「うん、ありがとう」

「今日はご飯にするそれとも......俺か?」


 きゃぁぁぁぁぁぁぁ、想像するだけで鼻血が出てくる。絶対に言わないであろうセリフだが、これも良い。私達は近い未来に夫婦になるので安易に想像できる。


「はぁ......未来が待ち遠しいな」



_________________________


 夕方起きた良吾は知るはずもない。母が自分のコレクションを無慈悲に捨てている現実をそれを夜察した良吾は母に聞けるはずもなく、ベットの上で泣いた。






 

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