第3話 思いとゲーム

 良吾が居ない部屋、それは私の部屋でもある。そんな苦痛な空間で仕方なく課題を終わらせて連絡を待った。時間にして数分だけど、僕は永遠に感じ取れた。


「ごめん今日は用事がある」


 鋭いナイフで胴体を抉られた様な衝動に至った。別に日曜日だがら仕方ないけど、用事が気になってしまう。もし......他の女とデートしてたら、


「良吾は綺麗でいてね」


 拝む事しかできない僕を許して欲しい。もし悪い予想が起きたのなら僕が実際に女の胴体にナイフをねじ込むからね。


 暇な時間がずっと続く。ゲームや映画を楽しむ感情すら邪魔だったりする。良吾が今何を見て何を考えているかで僕の思考を犯してしまう。それくらい僕にとって良吾は特別だった。


「お腹すいたし食べるか」


 いつもの作り置きを食べて洗い物と洗濯を行いソファーで座っていると、インターホンが鳴った。画面を凝視してみると愛した顔が映っていた。すぐ通して、扉の前に向かった。


「(おおおおお落ち着け、来ただけだから)」


 高鳴る心臓を押し殺しながら待っていると、足音が聞こえた。少し歩幅が長く聞き馴染みのある足音にすぐに扉を開けていた。


「おお、どうした」

「寂し......かったかな」

「これ見てくれよ」


 少し可愛く言った言葉は良吾が持っている紙袋に無碍にされた。儚いままで家に入ってもらい中身を見ると、最近発売されたゲーム機だった。


「へぇ......買えたんだね」

「苦労したよ。4店舗回ってダメで最後に通りかかった商店街のおもちゃ屋で運命的な出会いをしました」

「そっか、それでか」


 ゲーム機に負けた。それ以上もそれ以下もない。今すぐ潰したかったが、笑顔の良吾を悲しませたくなく、嬉しそうに説明してくれる顔を見ながら微笑んでいた。


「それで......一緒にしないか?」

「僕はゲーム初心者だよ」

「友人達はしないゲームだから琴奈ならハマってくれるかなって? ダメか」


 反則すぎる。その困った様な顔はやばい。もし、その顔で裸になっていたら襲ってしまう。それくらい魅力的だった。勿論のこと僕は、


「良いよ。僕もやってみたかったから」

「意外だな」

「広告で見てね」


 嘘ではない。広告で見て「面白そう」と感じたが、ゲーム機とソフトを買うまでは行かなかった。しかし、今は事情が違いすぎる。少し興味のあるゲームと興奮しかない一緒にプレイ、


「(あぁ......今日は幸せだ)」


 良吾はゲーム機をテレビに繋げてゲームを起動した。このゲームは二人プレイで冒険していくRPGであり、コンピュータともできるはずだが多分誰かとやりたいのであろう。


「(良吾は......ずるいなぁ)」

「どうした?」

「え! 別に、それより教えてね」

「ああ、勿論」


 僕達は日が暮れるまで楽しんだ。初めは言い合いになる事もあったが、クリアする度に分かち合う喜びは快感だった。だが、時間は過ぎていく物であり、


「今日は帰るよ」

「あ、ゲーム機は置いときなよ。いつでも来て良いから」

「いや別にそれは」

「置いておいて......ね」


 良吾は多分僕がゲームをしたい為に置いて欲しいと思っている様だが当然違い。この感覚をずっと楽しみたい。これが僕ではなく他人が居ると思うと吐き気がする。それくらい幸せだった。


「それじゃあ、また今度」

「あぁ、きおつけて」


 僕は良吾を見送ってお風呂に入った。沸かしていた湯船に浸かって左肩を撫でながら今日を思い出した。良吾はゲームに集中していたので僕は左肩を押し付けながらモジモジとしていた。


「ゲームも悪くないかな」


 小学校の時に良吾が男友達と仲良くゲームの会話をしている姿を見て微笑んでいたが、偶々ゲーム好きな女子が現れてそこからその女子とゲームが嫌いになった。


「我ながら子供っぽいな」


 昔から可愛かった良吾は高校から少しずつ背も伸びていき今では178cmくらいまで成長している。だんだんカッコよくなる良吾に雌の匂いがしない様に追い払う事は私の日課でもあった。


「でも楽しかったな」


 久しぶりにやったゲームは良吾抜きでも多少は楽しめた。スパイスがデカすぎるが、それくらい私の価値観は変わった。毛嫌いしていたゲームに少しだけ足を踏み入れた。


 湯船から出て体を拭きリビングに向かいお茶を飲んだ。冷蔵庫内は作り置きとジュース、調味料と良吾が作った空間でいっぱいだった。


「そろそろ計画を進めていこうかな」


 今のままではダメな事は十分理解している。幼馴染では終われない。夫婦は前提で最低でも来世まで一緒に居たい。子供は少し待ってから授かりたい。夫である良吾と堪能したい時間も存在するから、



 私は多分......沼にハマってしまったのだろう。



「抜け出したくない沼に」

 


 

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