第25話 望まれない客
今日も今日とて、学校では嫌な思いをしていた結城だったが授業も終わり、放課後になったのでさっさと学校を出て、バイト先へと歩き出した。
学校を出た直ぐの所で、また見たくない顔を見る。
そこに立っていたのは綾香だった。
自分には関係のないことだと割り切ってその横を通ろうとするも、やはりというか嫌な予感は当たるもので綾香が話しかけてきた。
「結城」
もう話すこともないと思っていたし、話す義理もない。
「気を付けて。ごめんね、私が弱くって」
綾香がそんなことを言うが、何を気をつけろというのか。
恐らくいじめの事だろうが今さら気をつけろと言われてもどうしようもないし、お前が原因だろうと若干イライラしたものの話すのも無駄だからそのまま歩く。
気分が悪いなと思いながら、歩くとバイト先へといつの間にかついていた。
「おかえりー、結城君」
「結城君。今日も頼むよ」
今日は大学が早く終わったのか、それとも講義を休んだのか知らないが夢が結城よりも早く来ていた。
恭介はいつも通り、喫茶店の仕事をしつつ勇気を笑顔で迎えた。
おかえりーと言った夢を、放置しつつ恭介に頭を下げてからバックヤードへと入り、着替えてから恭介の元へ。
「結城君、今日も別にそこまで忙しくはないだろうからいつも通りで大丈夫だよー」
「はい」
カウンターや席にはまだ人はいない。
夢も同じように結城と店内の掃除等をしながらお客が来るのを待つ。
すると、一人のおじいさんが来店した。
「いらっしゃいませ。今日も来てくれたんですね」
「夢ちゃん、こんにちわ。ここに通うのが私の日課だからね。マスター、アイスコーヒーで」
入って来たのは常連の客で、いつもの席であるカウンターへと案内する。
「いらっしゃいませ」
「結城君も偉いねー。若いのに勉強もして働いて」
「いえ、僕なんて全然」
「私が結城君と同じ年の時なんて遊んでばっかりだったよ。結城君は偉いよ」
そう言っておじさんは、結城の頭を撫でる。
結城はこの常連の客の事は嫌いではなく、むしろ好きな部類の人間だった。
恭介と同じで結城が幼いころから関係があり、落ち着いていて、芯のある人間だとそう思っていた。
だが、結城も高校生で絶賛思春期中であるため人として好きな人間だとしても気恥ずかしさが出てしまい顔を逸らしてしまう。
「結城君も大きくなったね」
「そうですね」
「結城君...何かあれば言うんだよ」
幼いころから関係はあったが、一店員と、客の関係であるのに今の状態を見抜かれて結城は少しだけ驚いた顔をした。
「小さい頃から結城君の事を見ていたから、結城君は私の孫みたいなものなんだ」
「ありがとう、ございます」
夢、恭介はそんな微笑ましい会話を聞きながら和んでいた。
その後、何人か常連さんが来て先ほどのようなやり取りは続き、とても穏やかで良い雰囲気の中、結城は仕事していたが、店の扉が開いた。
からん、ころんとなったドアから入って来たのは、綾香のお友達だった。
「店員さーん、早くしてください」
ニヤニヤと気色の悪い笑みを浮かべたそいつらの顔を見た結城は、先ほどの嬉しさや気恥ずかしさが吹き飛んだ。
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