第24話 綾香という人間
「あいつ、今日も来るのかな?」
「そろそろ、メンタルやられてるんじゃない?」
「まぁ、綾香のこと泣かせたし当然と言えば当然だよね」
まだあんまり人がいない教室にクスクスと馬鹿にした笑い声が響いている。
誰も、この子たちに何かを言おうとはせず目を付けられないように静かに息を潜めていた。
なんで、こんなことになっちゃったんだろう。
私が結城にこっぴどく振られ、泣いてしまった。それを私の友達たちに見られていたらしく、次の日の早朝にどうやら私の友達が結城に詰め寄ったみたい。
その日は、気分が悪くて学校を休んでしまったからどんな会話だったのか詳しくは分からないけれど、友達に話を聞く感じだと結城が私たちを結構強く非難したらしい。
私は仕方ないなって思うし、嘘告白して散々結城の事を傷つけていたのだから当然の報いだと思うけれど、友達たちはそれが許せなかったみたいだ。
結城と直接話した美鈴は「お友達ごっこ」と言われたのが相当頭に来たみたいで、許せないらしい。
「綾香もあんな奴と付き合わせちゃってごめんね。あんな奴だなんて思わなかったよ。罰ゲームだとしてもやりすぎちゃった」
美鈴がそういうも、私は曖昧な笑顔を浮かべるしかなかった。
だってその言葉は結城が使うべき言葉だったから。
結城も私がこんなひどい人間だったとは思わないだろう。
罰ゲームを受けたのは私ではなく、結城の方だから。
「もうちょっとあいつの事反省させたくない?」
「そだねー、もうちょっと反省させたいけどこれ以上学校でやりすぎちゃうと怒られちゃうかもしれない」
私が何も言わずにいると勝手に話が進んでいき、更に結城の事を追い込もうとしていた。
私がここで何か言わないと。
そう思ったものの、やはり私の口は開かずに閉じたままだった。
結城に言われた通りに流されてしまうダメな人間だった。
怖いのだ、私は。
過去の何もない私に戻ってしまうことが。
今も何も変わっていない中身のない人間だろうと言われてしまえばそうだけれど、外面を整えて、こうして友達も出来て教室内で地位の高い場所にいることさえ手放してしまったら本当に私は何もなくなってしまう。
それに加えて、私がこの人たちに物申して孤立して虐められてしまったらと思うと更に言い出せない。
怖い、辛い。
言い出さなければいけないなんてことは私も分かっているはずなのに、口が動かない。
「そんなこと私は望んでない!!結城を虐めるのはやめて。私たちが全部悪いじゃん」
そう言えたらと何度も思っているのに駄目だった。
「そういえばあいつのバイト先ってカフェだったっけ?」
「そういえばそうだねー」
「あいつが接客してるところにいちゃもんでもつければ良くね?居場所無くそうよ」
こんな最低な会話をしているのを私は止められない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます