第23話 勝手に感動の最終回みたいな雰囲気出すな

「おかえり、夢。大丈夫だった?何もなかったかな」

「ただいま、お父さん。なんにもなかったよ。ただ話し合っただけ」


 夢が戻ってくると、恭介はまず一安心して胸をなでおろした。


 結城はと言うと、掃除をしつつ夢の方へと視線を向けていた。


「結城君、大丈夫。なんにもしてないよ」

「別に気にしていませんので」


 結城はアリサの事や何を話していたのかということを気にしていたのではなく、恭介の娘である夢に何かあったらと嫌だなとそう思ったため、夢へと視線を向けていた。


 そのため、本当に結城は気にしてはいなかった。


「暗い雰囲気はもうこのくらいにして、ちゃんとお仕事しないと。って言ってももうあとちょっとで閉店だけれどね」


 夢はどこかどんよりとした空気を払うようにそう言って、着替えるためにバックルームへと歩いて行った。


「結城君。何度も言ってしつこいって思われるかもしれないけれど、出来るだけ力になるから何かして欲しいことがあったら言うんだよ?俺も学校に抗議をしてるけれど、最悪弁護士を呼ぶ準備もするからね」

「ありがとうございます」


 恭介の優しさにまた若干申し訳なさを感じつつも、深く礼をした。


****


 その後、バイトは何事もなく終わり家に帰ることになった結城だが、いつものように玄関の扉を開けるのが億劫に感じて止まってしまう。


 だが、入らないことにはどうしようもないので仕方なく開けてから靴を脱いで部屋へと直行しようとするも目の前に妹である怜が立った。


「兄さん」


 目の前に立っている怜がそういうも、結城は立ち止まる理由がないため階段を上ろうとする。


「兄さん、学校でまた何かあったの?私も同じ学校だから何となくだけれど、兄さんの状況は分かっているつもり」


 怜は立ち止まることのない結城に向かって話し続けた。


「私たちにできることは無いかな?私も、お母さんも兄さんの力になりたいって思ってるから。だから、私たちの事もっと頼ってもいいよ」


 怜は結城と同じ学校に通っていたため、何となくではあるが、結城と綾香が別れ、そして虐められていることを知った。


 綾香が原因で結城が今の状態になってしまったことも。


「昔は、兄さんの事を疑ってしまったけど今は違うから。絶対に、兄さんの事を裏切らないから」


 怜がそう言い終えて、二階に上がった結城の事を見上げる。


 先ほどまで一度も怜の方へと視線も向けることもしていなかった結城だが、やっと怜の方へと視線を向けた。


 怜はそれに安心や嬉しさがこみ上げる。


 が


「もう遅いんだよ。あと五月蠅いから静かにして」


 結城は、その後一切振り返らずにそのまま部屋へと入っていった

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