第20話 アリサ過去編3
結城のおかげで私の周りに人が増えて、私に友達という物が出来てから数か月が過ぎた頃だった。
私と結城の仲の終わりが始まったのはこの時だ。
図画工作の時間では絵を描こうというという授業をしていた。
期間は正確には覚えていないが、二か月ほど各々の絵を完成させようとみんな頑張っていた。
お題は、何でもよくて私は確か花壇に咲いている花を描いてた気がする。花を描いた理由としては、結城がそのお題にしていたから。一緒に描きたいなとそう思って花を描いていた。
私はこの授業でまさかあんなことが起きるとも知らずに、呑気に描き終わったら結城にこの絵を渡して喜んでもらおうかな、なんて思っていた。結城が描いたもの交換出来たらさらに嬉しいなんてそう思っていた。
みんなの絵も完成を完成させ、友達になった子たちの絵も見てお互いに褒め合った。
その日は何ともなく、次の図画工作の授業でみんなの絵を見ようという話を先生がしていた。
みんな、どんな絵を描いたんだろうかワクワクしながら次の図画工作の時間が来るのを心待ちにしていた。
そうして、二日経った後。
その時間が来た。
私と結城は一緒に図工教室に仲良く話しながら入ると、中が何か騒がしかった。
いったいどうしたんだろうとそう思って近づいてみると、そこにあったのは二つに破れた私の花の絵だった。
嘘だと思って、何度も見たけれどそこにあったのは私の描いた絵だった。
この後、私は結城にこの絵を褒めてもらおうと、そして絵を交換し合って家にでも飾ろうとそう思っていた私の目にはいつの間にか涙が出ていた。
そして、誰かがこう呟いたのだ。
「俺、この前結城がアリサちゃんの絵を破ってるところ見たよ」
そう呟いた。
今考えれば、結城がそんなことをするはずもないし根拠がなに一つもないのに誰かがこういったのだ。
ざわざわとみんなが騒ぎ始め、みんなが私の隣にいる結城へと視線を向ける。その時、私も一緒になって隣にいる結城を見ていた。
「僕はそんなことしてない!!」
結城はそう言うが、誰かがああして呟いたせいで誰も結城の言葉を信用なんてしていなかった。
騒ぎが大きくなって、先生が来た。
そして、事情を聴いたのか結城は担任である女性の先生に手を引かれて連れていかれ、教室を出て行った。
私は結城が連れていかれ、待っている間みんなにこういわれたのだ。
「結城君、こんなことする人だったんだ」
「アリサちゃん可哀そう」
「結城君さいてーだね」
「結城とアリサって仲良さそうだったのに、結城ってそういうやつだったんだ」
あることないこと、結城の悪口やうわさが飛び交った。
私はその時、悲しみに暮れ最近できた友達と呼べる人達にそう言われてしまって結城に対して嫌な気持ちを持ってしまった。
数十分後、結城が先生に連れられて戻ってきたが顔は暗く絶望した顔をしていた。
「ほら、結城君。謝って」
「でも、僕は...」
「いいから」
そう言って、結城は先生に無理やり頭を下げさせられた。
その結城の反省のない様子に、私は怒りと悲しみがこみあげてこう言ってしまった。
絶対に言ってはいけないことを。
「結城なんて嫌い!!」
私がそういった時の、結城の顔を今でも覚えている。
これが私の罪だ。
後に知ることになるのだが、結城は勿論、私の絵なんて破っていなかった。
中学校に入ってから、実はあの時こうだったと同じ小学校の男共が話しているのを偶々聞いてそれで知った。
「俺、この前結城がアリサちゃんの絵を破ってるところ見たよ」
こんな無責任な言葉を吐いた男の子がどうやら私の事が好きだったようで、私と仲良くしていた結城の事が気に入らなかったから、自分で破いて結城のせいにしたらしい。
その子の企みは見事に成功して、結城と私は教室内で一切話さなくなったし、結城は虐められるようになった。
私も周りの子たちに言われるがまま、結城の事を罵倒してしまったし、結城が私と話をしようとするたびに、無視した。
結城の言葉を、思いを無視した。
結城は教室内で一番仲良かったし、あの頃の私たちはお互いの事を好きだったはず。
結城はきっと私に信じて欲しかったはずなのに。
結城は私の悪評とか見た目とか、全然気にしないですべてを受け入れて手を差し伸べてくれたのに、私は結城の言葉や思いを踏みにじって、あまつさえ一緒になって罵倒してしまった。
幸いなことに、結城の虐めは結城の保護者的な人が学校に訴えたことでいったん収まりはしたが、教室内で結城は空気として扱われるようになっていた。
中学校に入って、あれが嘘だと知って私は結城と久しぶりに会って、あの事を謝ろうとそう思っていた。
だが、結城は私が話しかけるとこういったのだ。
「久しぶり、アリサ。元気にしていた?」
笑顔で、まるで何もなかったかのように私に対して接してくれたのだ。
私は、謝ろうとそう思っていたのに。
罵倒でもして、話しかけるなとでも言ってくれた方が私としては救いだった。
でも、結城がそう何にもなかったかのようにそういうから、私も私でまるで何もなかったかのように、接してしまった。
「久しぶり、結城」
謝ることもしないで、ずっとここまでずるずると来てしまった。
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