第19話 アリサ過去編2

 私と結城の仲は日に日に良くなっていった。


 隣の席の結城とは、話すだけではなく休み時間に遊ぶほどに仲良くなっていた。


 休みの日は私の家で遊ぶようにもなった。


 結城と遊ぶ中で一番好きだったのが、一緒に本を読むことだった。


 以前、私が国語が苦手だって言ってくれたから克服するのも兼ねていたのだろうけれど、私は結城が本を音読してくれるのを聞くのが好きだった。


 結城の優しい声で、私の為だけに語ってくれる物語が好きだった。


 結城の本を読んでくれる横顔なんてずっと眺めていただろう。


「結城。ずっと一緒にいようね」

「うん。ずっと一緒にいられるといいね」


 そんなことを言うような仲になっていた。


 結城は私に、他にも沢山の事を教えてくれた。


 ほかの子と私とを繋げてくれた。


 内気で、こんなみんなとは違う容姿だったから話しかけるのも躊躇っていた弱虫な私を孤独から連れ出してくれた。


 積極的に友達の輪に入れてくれた。


 女の子の友達も話す程度に沢山増えた。


 みんなも今まで私の事を異物として見ていたのに、結城が私の事を連れ出して救ってくれたおかげで私はいつしか孤独ではなくなっていた。


「アリサちゃんのこと今まで知らなかったけど、こんなこだったんだ」

「私もアリサちゃんとお話ししてみたい」

「ごめんね、酷いこと言って」


 結城が私に対する誤解も解いてくれて、今まで私にひどいことを言っていた人たちが謝ったりしてくれて幾らか私の心は晴れた。


 結城は多分、私の知らないところで頑張ってくれていたんだと思う。


 私が変な子じゃないって、沢山周りの子を説得して、つなげようとしてくれて。行事や班活動がある度に私と他の子との仲を取り持ってくれたおかげで私の印象はかなり良くなった。


 保育園の頃からずっと一人だった私が、いつしか友達と呼べる人が何人もいるようになった。


 その代わり結城と話す時間が減って少し嫌だななんて思うこともあったけれど、あの時の私は、浮かれていたんだと思う。


 今まで私の周りにこんなに人がいたことなんて、無かったから。周りにお友達がいて、それで幸せだって勘違いしていた。


 だから、私は一番大事なことを見落としていたんだ。


 結城だけいれば、私は幸せだったんだって。


 気づくのが遅れてしまった。遅すぎたんだ。


 あの、二人だけの時間をずっと過ごしていれば。もっと私が結城の事を大事にしていれば。それに気づければ。


「ずっと一緒にいようね」


 この言葉を私が本気で守ろうとしていれば。


 あんな間違いなんて犯すことは無かったはずなのに。


 


 


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る