第15話 自己満足

 綾香とそのお友達の嫌がらせは、上履きを汚された後も数日間続いていた。


 相も変わらず汚れている上履き、落書きされた教科書、教室でお弁当を食べている所を狙われて、間違った体でごみを入れられたりした。


 そこから教室で食べることはせずに、他の場所で食べることにはしたがそれでも邪魔をしてきた。


 虐めが別に嫌だったのではない。


 自分のために作ってもらったお弁当をゴミを理由に捨てたり、水で濡らされたからと言って残したりするのは嫌だったのだ。


 あれほど清水家に迷惑や心配をかけて、ほとんど毎日お弁当まで作ってもらっている。


 お弁当を無駄にするのは、夢の事を苦手だと言っても流石に申し訳ないと思ってしまう。


 これが、他の女の人だったら結城も別にそこまで気にしなかっただろうが、恭介の娘であり尚且つ結城に対して何もしていないからこそ、申し訳ないと思っている。


 ここ数日の陰湿な嫌がらせをどう対処すべきか悩む。


 スマホで撮ってネットに流すなんて簡単にできそうだし、実際にお弁当にごみを入れたところを撮ってはいた。


 だがあいつらは陰湿で小賢しい連中のため、あくまで偶然を装って、本当に申し訳なさそうに間違ってぶつかってしまってゴミをお弁当に入れてきたし、誰も本当に笑ってもいない。


 面談時、先生に動画を見せたが、これでは故意か間違ったかの判断が難しいと言われてしまったし、そもそも期待していなかった。教師は動くのも面倒くさいし、高校で虐めがあると認めてしまえば色々と面倒になるから。


 一応、いじめに関する調査ということでよくある一枚の薄い紙きれを生徒に回して調査をしたという体が取られただけである。


 上履きや教科書類が汚されるのを撮ろうと思っても、いつしているかが分からない。


 あの連中全員をずっと監視するなんて馬鹿げたことはできないし、そもそもあいつら以外にも協力している人間がいるかもしれない。


 全体を把握もしていないのに局所的に虐めを除去したところで虐めなんてものは無くならない。


 再発するにきまっている。あぁいった連中は癌のようなものである。


 どうしたものか、そう思ってゆったりと流れる雲をお弁当を食べながら見ていると一人の人影が此方に歩いてくるのを視界の端で捉えた。


 誰だろうと思って見てみると、結城にとって最悪な人間が近づいてきていた。


 絶賛結城を虐めてきている人間の中心と言っても過言ではない綾香が結城へと近づいてきていたのだ。


 結城はそのまま目を逸らして、綾香という存在をシャットダウンした。


 だが、綾香は何を思ったのか結城へと近づいてきた。


 そのまま素通りしてくれよ、と思ったがどうやら結城の願いは叶いそうになかった。


 だが、結城のすることは変わらない。


「ゆ、結城」


 無視をすること、ただそれだけ。


 正直視界にも入れたくないし、喋るなんて以ての外なのだ。


「結城、ほんとうにごめんなさい。全部私が悪いの。ごめんなさい」


 頭を下げる綾香を、結城は無視をし続けた。


 


 

 

 

 



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