第14話 お前は変わらないね
今日も夢が待っているだろうコンビニへと行くと、当たり前のように夢はそこにいた。
「おはようございます」
「おはよー、結城君。今日も早いねー」
若干眠そうにしながら、夢は結城に挨拶した。
「はい、これ今日の分ね」
「ありがとうございます」
夢からお弁当を貰って、また昨日のように歩き出した。
「夢さん」
「何?」
「毎日お弁当というのはやめませんか?週に数回でいいと思います」
結城が昨日言いそびれてしまったことを、今日は忘れることなく話すと夢は悲しそうな顔をした。
「あんまり美味しくなかったかな?」
「いえ、不味いという訳ではなくて単純に毎日お弁当を作らせるのが恭介さんと夢さんに悪いと思ったからそう言っただけです」
「あ、それなら良かった」
安心した様子で胸をなでおろし、結城の方へと顔を向ける。
「良いよ。そんなこと気にしないで。私だって、お父さんだって結城君に作りたくて作ってるんだよ?それにちゃんとお金だって貰ってるんだから気にしないでいいよ」
「でも、マスターに頼ってばっかりで申し訳ないので」
昨日の事や今までの事を思い出して、夢の言葉に素直にうんと頷けない。
「申し訳ないって思うのは悪いことじゃないけれど、お父さんも昨日言っていたけれど結城君の事を家族だってそう思ってるんだよ?家族に優しくするのは当たり前じゃないかな」
夢はそう言うが、結城にとって家族とは今までの事を考えれば、死んでしまった父親以外は別にいないも同然だった。
優しくするのが当たり前。
それに素直にうんと頷けるほど家族という物を理解していない。
だが、確かに昨日は恭介の事を父親だと、そう思っていた。
だから、
「分かりました。恭介さんに甘えることにします」
「ふふっ。それでいいと思うよ。あと、勿論私にも甘えていいからね」
「それは...」
お弁当を作ってもらっているという点で夢にも現状甘えてしまっているので、否定しようとしていた言葉を飲み込んで、小さく頷くことにする。
「それじゃあね。あと、ごめんね。昨日の話、聞こえちゃってて」
「別にいいですよ」
一瞬何に対してだろうと考えた結城だったが、恐らく恭介と結城の会話を聞いてしまったことだろうと思ってそう返した。
更衣室からそれほど遠くないし壁も厚いわけではないから聞こえてしまうのは仕方がないため、結城はその点について怒ろうなんて思ってはいない。
夢とはそこで別れて、そのまま学校へ。
今日は何をされているんだろうと思いながらも、面倒な事じゃなければ良いとそう思って靴箱を開けると、上履きが異常に土や砂で汚れていた。
結城が周りを見渡すと、やはりいた。
素知らぬ顔して此方をみているお友達さんだった。
そこにはどこか不安そうにしながらも何もせずにそこに立っている綾香もいた。
結城はそれを履くこともなく、職員室へと歩く。
昨日の内に恭介が学校に報告はしているだろうから、話せば来賓用のスリッパくらいは貸してもらえるだろうと思ったからである。
職員室に行くと、担任の教師へと話しかけた。
「すみません、上履きがこうなっていたのでスリッパを貸してください」
結城がそれを見せながらそう言うと、担任の女教師は面倒くさげな顔をした。
「あそこにあるから履いていいよ」
「そうですか」
「あと御影君。あとで一応話聞かなきゃならないから時間くれる?」
「分かりました」
恐らく、虐めの話だろうけれど別にこの教師に期待しているわけでもないので返事だけして職員室を出た。
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