第2話
「えええっ!? 俺、女の子になってるー!?」
儀式の間に備え付けられている鏡に映った自分の姿を見て、思わず叫ぶ俺!
鏡に映ったのは男の俺ではなく、俺によく似た小さな女の子!
「しかもメカ少女だこれ!?」
メカ少女とはメカな少女である! と一言で言っても、様々な深度がある。
生身の女の子がメカ装備をしているパターンや、見た目は女の子でも中身がアンドロイドなもの、肌に継ぎ目があったり、関節が機械的だったり、人間を模しているが見た目は完全に機械だったり。
このうち鏡に映っている女の子は、最も深度の浅い、メカ装備の女の子だ。
そしてその女の子が、俺だ!
服装は首まで覆うレオタードタイプのノースリーブピッチリスーツに、長手袋やハイソックスにサイハイブーツ、胸の中央には緑色に光る、縦長のひし形コア。
オレンジの髪とグリーンの瞳は元よりも明るくてはっきりした色合い。
腕や足には滑らかかつ端々にエッジの利いた格好いいメカニカルなパーツがあって、胸のコアに似たひし形の飾りが、こちらはオレンジ色に光っている。
カラーリングは髪色と同じオレンジがベースで次に白。手足やお股の周辺は黒で統一されている。
膝まである長いポニーテールを束ねるX字型のパーツは、俺の瞳や胸のコアと同じエメラルドグリーン。
髪留めの形をよく見ると、これはソーラーパネルにも見える。
ならば腰の大きなパーツはスラスターか?
となると、さっきまでのメタルヒーロー系の意匠、人工衛星のモチーフをそのままスライドさせて作られたのがこのソウルフォームなんだろう。
全体的な造形はスタイリッシュな雰囲気で、露出は二の腕から肩と鼠径部を含めた腰回りだけと少なめで、胸は見事な絶壁。
だけどヘソの部分が凹んでたりお股周辺がスースーして、もっこりよりもはるかに恥ずかしい!!
声は少し高めの元気そうなもので、この姿にピッタリ。
武器は俺の希望通りの剣で、両刃の直剣で幅は手のひらとほぼ同じ。この姿に相応しいオレンジ色に光る刃と、普通とは逆のV字型の剣先が非常に目立つ。
出し入れは、そう思えば簡単に収納できるようで、これは便利。
小さな女の子が持つにしては長くて大きいので、おそらく男の状態で持って丁度いい設計だったんだろう。
「この剣なら必殺技は……っていやいや! 冷静に分析するなよ俺!
ちょっと神様たち、これどういうことですか!?」
『戦神のバカタレが完成直前にお主の性別を変えおったんじゃ!』
『さすがにこれはイタズラでは済みませんよ!』
『だが似合っているぞ』
「『『そういう話じゃない!!』』」
『はい……』
さすがに俺たち三人に詰められれば戦神も反省せざるを得ないだろう。
「鍛冶神様、このソウルフォームってクーリングオフできますよね?」
『それが、ソウルフォームは今日明日で変えられるようなものじゃないんだ。
まして性別まで変わるとなれば……』
マジか、俺のソウルフォームはずっとこの姿なのか……。
『その体は貴様らヒューマンで言う八歳相当だが、代わりにソウルフォームの性能は最高クラスになっているぞ!』
『最高クラスって……うわ、本当だ。聖剣に匹敵する性能にしちゃってる……』
『どちらにせよ、これは最高神様にお伺いを立てねばならんな』
「俺はどうすれば……?」
『お主に罪はない。そのソウルフォームは確かにお主の物じゃ』
『システム面はさっきも言ったとおりだから、使いこなせば聖剣をも凌駕する可能性だってあるね』
「そ、そうですか」
性能面では戦神の采配が大きいようで、このソウルフォームは聖剣並みになっているらしい。
うーん……だったらもう諦めて、良い所探しをしたほうがいいかな。
ヒーローは素顔を隠すものだから、俺だと絶対にバレないこのソウルフォームは、そういう意味では理にかなってるし。
一旦冷静になり、改めて細かく見ていく。
アームパーツは手の甲にコアのようなものがあり、肘の手前までを覆って、長手袋は二の腕まである。
フットパーツは蹴ったら痛そうなブーツと膝までのグリーブで、膝の位置にまたもコアのようなもの。ソックスは太もものふくらみよりも上まであるから、サイハイソックスって奴だな。
ちなみに長手袋もソックスも、口の部分は斜めになってて格好いい。
腰パーツは横と後ろに大きく、背中側には膝裏近くまである大型のスラスター。
スラスターは俺の意思に連動して動くようになっているので、座っても邪魔にならないだろう。
背中は露出も装備も特になし。女の子の可愛い背中があるだけ。
ソーラーパネル型の髪留めはX字型に留まっていて、リング部分がパカッと開いて脱げる仕様のようだ。
ただ髪型をロングにしてしまうと、スラスターと干渉して焦げそうなので、やっぱりポニーテールで正解だ。
となるとスラスターやソックスが長い理由は、排熱が肌に直接当たって火傷しないようになのかも。
「これだけ動いてもパーツが動きに干渉しないのはさすが鍛冶神様」
『突貫でどうにかその姿に適合するように作り替えたけど、君が納得出来ているなら何よりだよ。
……さて』
と鍛冶神様が切り出した次の瞬間、遠くで爆発音が!
「なんだ!?」
『さっそくヒーロー殿の初陣じゃな。頑張るがよい』
『俺たちの出番はこれで終わり。これからは神界から応援させてもらうよ』
「あ、ありがとうございます」
あそこまで言ってくれた割に、意外とあっさりしている。
でもこういうところが神様らしいのかも。
『貴様には特別に、戦神として一つ教えておいてやろう。
貴様はこの先、幾多の苦難に直面する
しかしヒーローとしての強い志を持っていれば、必ずや勝利を掴み取ることが出来るはずだ。
諦めるな。時には周囲をよく見渡せ。貴様に声援を送る者、貴様と共に剣を構える者は必ずいる』
「分かりました! でも女の子にしたことは一生恨みます!」
『あうっ……』
返す言葉もない戦神様分体と、その様子に大笑いしている魔法神様と鍛冶神様。
これで俺の魂武装の儀は終了だ。
変身を解いて教会の聖堂に戻ると、爆発騒ぎで報告どころではなくなっている。
神父様には悪いけど、このまま俺のソウルフォームは隠させてもらおう。
「なんですか、あれは……」
聖堂には壁掛けの大型モニターがあり、テレビの緊急中継が映し出されている。
現場はこの教会からそう遠くない町の中心部で、逃げ惑う人々と、白い糸に捕らわれる人、その糸を吐いたと思われる蜘蛛の魔物が映っている。
だけどあんなに人に近い姿の蜘蛛の魔物なんて見たことがないぞ?
「あの魔物、まるで怪人ですね……」
「怪人……」
神父様の一言で神様たちが俺の背中を押した理由を察し、気付けば現場に向かい走り出していた。
俺の心にあるのはただ一つ、一刻も早くあの怪人を倒し、捕らわれている人々を救出する!
現場はそう遠くない。
一旦物陰に隠れて、静かに「変身」。これで行ける!
しかし……ビルのショーウインドウに映るこの姿を見ると、やっぱり羞恥心が抑えられない。特に下半身!
いわゆる”角度”はそんなにでもないけど、でもレオタードだぞ?
男性ヒーローで言ったら、もっこりを超えてくっきり状態だぞ?
他がどれだけ格好良くても、恥ずかしいに決まってんじゃん!
「ホットパンツでもいいから追加してもらえばよかった……」
しかし直後に二度目の爆発が起こり、俺の羞恥心を吹き飛ばす。
「ああもう、なるようになれだ!」
この格好で逃げる人波の中を突っ切るのは危険だ。
一度ビルの屋上まで……行けるか? 行けそうな予感がする!
しっかり膝をかがめ、一気にジャンプ! と同時にスラスターも使う!
すると俺の小さな体は簡単にビルの屋上を越え、そのまま直接奴の目の前へ!
「アーッハッハッハッ! 逃げろ逃げろ力を持たない下等な人間ども!
だけどね、私のこの糸はそう簡単に逃がしはしないわよ!」
「そこまでだ!」
高笑いを決める奴の前に、空から格好よく着地!
……したはいいけど、膝がジ~ンと痺れる。
ヒーロー着地は危ないって話、本当みたいだな……。
「何かと思ったら子供じゃない。ごっこ遊びには付き合わないわよ」
「残念だけど、そうも行かないんだなッ!」
先制の一撃! しかし剣は空を切った。
奴が躱したのもあるけど、ぶっつけ本番でこの体にまだ慣れてないのが大きい。
「あらあら、悪い子にはお仕置きが必要ね。いいわ、相手してあげる。
私の名は【アラクネイト】。秘密組織【アクシュミリア】の先鋒よ」
「アクシュミリアのアラクネイト……マジでヒーローものじゃん!
いいぜ、だったらこっちも――」
と言いかけて、ヒーローネームが無いことに気づく。
さすがに本名を名乗るわけにはいかないし……ここは誤魔化すか。
「――名乗るほどの者じゃないです」
「どっちなのよ! あっ。さてはあなた、名前が」
「ち、違う! ただ、なんだ、その……お、お前なんかに名乗る価値はない!」
「あーら、傷付いちゃうわ。やっぱりあなたにはお仕置きが必要のようね。
私の糸で身動き出来なくさせて、その幼い体を甚振り犯し尽くしてあげるわ!」
「お、おかし……そんなことをされてたまるか!」
クッ! そんなことになったら、カテゴリがR-18に変わってしまう!
この戦い、絶対に負けられないぜ!
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