設定資料 ― マナ理論総覧


マナ理論総覧


エルディア連邦学術局 編纂:星暦2000年度版



■ Ⅰ. マナの定義


マナ(Mana)とは、宇宙空間から恒常的に流入し、大地と生物を媒介として循環する 「情報=エネルギー複合体」 である。

その本質は二重構造に整理される。


◼︎エネルギー相(Energetic Phase)

・熱・光・衝撃・質量変換など、物理的現象を引き起こす側面。

・いわゆる「火力」や「防御壁」として現れる。


◼︎情報相(Informational Phase)

・波形・意識・因果に干渉する側面。

・精神作用、属性制御、未来予測や錯乱などの基盤となる。


両者は常に重なり合い、「力」と「意味」 を同時に宿す点がマナの最大の特異性である。




■ Ⅱ. マナの生成と流入


マナは「星核」から流れ出す宇宙的流動体であり、天体の重力・自転・磁場に影響されて惑星表層へ降り注ぐ。

これを「星流(Stellar Flow)」と呼ぶ。


惑星上では以下のプロセスで循環する:


◼︎1. 星界流入

恒星・衛星からのエーテル流が、大気圏を通じて地表へ。

地磁気と干渉し、「オーロラ現象」として観測される。


◼︎2. 地脈蓄積

地殻内部に形成されたマナ鉱脈(Leyline)が吸収・貯蔵。

火山帯や断層は特に強い放射源となる。


◼︎3. 生体共鳴

生物の細胞は微弱なマナを吸収し、「星脈」と呼ばれる微細経路を形成。

これが「異能適性(Gifted)」の有無を決定する。


◼︎4. 環境放射

余剰マナは大気・水流に放散され、霧や雨、風などを媒介として再循環。




■ Ⅲ. 出力構造 ― マナの利用


マナを「出力」する際、人間は星脈を通じて三段階の変換を行う。


◼︎1. 取り込み(Intake)

・外部環境(大気・地脈・結晶)からマナを吸収。

・吸収効率は「呼吸法」「瞑想」「集中」で変動。

・強者ほど 自然に呼吸するだけでマナが流入 する。


◼︎2. 精製(Refinement)

・体内星脈を循環し、雑多な波形を均質化。

・この精度が低いと「暴走(バックラッシュ)」が起きる。

・星環器(Limiter Gear)が補助するのはこの段階。


◼︎3. 投射(Emission)

・筋肉・声・武具・結晶など、出力点に圧縮放出。

・「属性変換」がここで付与され、火炎や雷撃など具体的現象となる。

・戦闘枠組み(増勢・変換・投射・操環・具象・特異)は、この出力形態の差異にすぎない。




■ Ⅳ. 入力構造 ― マナの補給


戦闘や消耗によって失われたマナは、以下の経路で再生される。


◼︎1. 自然吸収

大気中・地脈から常時取り込み。睡眠・休養で効率増大。


◼︎2. 食物摂取

植物や動物に含まれるマナ残滓を消化吸収。

特に「マナ結晶果実」「竜肉」などは高濃度資源として知られる。


◼︎3. 人工補給

マナ薬液 (エーテルポーション)、結晶充填装置。

緊急時には兵士が「エーテルアンプル」を注射して補充。


◼︎4. 共鳴同期

仲間と星脈を接続し、マナを分け合う技術。

ただし親密度が低いと逆流事故を起こす。




■ Ⅴ. マナ濃度と階層構造


マナの強度は「圧(Pressure)」として観測される。

所有者の「潜在性」に相当する概念で、存在の強度そのものを示す。


・低濃度(E-Class):

微弱な流動。一般人はこの範囲で日常生活を営む。

・中濃度(C~B-Class):

戦闘可能な兵士・学生レベル。周囲に「気配」として圧を及ぼす。

・高濃度(A-Class):

環境に影響を及ぼす。周囲の風が乱れ、空間が歪む。

・極濃度(S-Class):

存在そのものが「現象場」と化す。

近づくだけで弱者は呼吸困難や幻覚を引き起こす。




■ Ⅵ. マナ干渉と相克


マナは属性ごとに 干渉パターン を持つ。

これが「相性」「属性相克」として観測される。


・光 ↔ 闇:互いに情報層を打ち消し合う。

・炎 ↔ 氷:物理層で温度差による中和。

・雷 ↔ 土:導電性と遮断性の拮抗。

・風 ↔ 水:流動をめぐる制御戦。


また「極濃度マナ」は、弱者の循環を強制的に乱すため、戦闘にすらならない場合もある。




■ Ⅶ. 科学的応用


連邦はマナを単なる「兵力」ではなく、科学技術として応用している。


・エネルギー工学:エーテルリアクターによる都市インフラ。

・医療:細胞修復・義肢補助。星脈同期による臓器移植。

・情報通信:マナ波形を利用した「共鳴ネットワーク」。

・交通:浮遊鉄道 《マナリニア》、飛空艇駆動炉。

・軍事:兵器強化・バリア・超長距離通信。




■ まとめ


マナは――


・物理層=エネルギー

・情報層=意味(意識・精神・波形)


この二重性によって「攻撃力」と「精神干渉力」を同時に持つ。

ゆえにマナ濃度は存在の強度そのものであり、圧倒的格差を戦場に生み出す。


帝国はこの「エネルギー側」を徹底利用してアストラ兵を造り、

連邦は「情報層との循環」を体系化して、人間性を保ちつつ強化する。


➡︎結果として、両者は同じ「マナ」を用いながら、まったく異なる進化の方向へ進んでいる。




————————————



マナ属性体系(連邦学術局による公式分類)



■ 1. 光属性(Lumen)


◼︎物理層

・光子を凝縮し、閃光弾・光線・斬撃エネルギーとして放出。

・実体のない“光刃”やレーザー様の兵装を形成できる。

・高速移動や錯視に転用される場合も多い。


◼︎情報層

・情報伝達・同期性に優れる。仲間の意識をリンクし、視覚情報や戦術パターンを共有可能。

・「光の道」として未来予測や経路誘導を補助する。

・一部では「真実の照射」として、幻覚や虚偽を打ち破る能力を発揮する。


◼︎典型的運用例

・指揮官が全体の視界を共有する「リンクサイト」

・高速戦闘を可能とする「光脚」

・敵の幻術を焼き払う「照破」




■ 2. 闇属性(Umbra)


◼︎物理層

・影や虚無の物質化。相手の視覚を奪う暗黒障壁や、物質の崩壊波を生む。

・「重さ」を付与することで、敵の動きを拘束。

・斬撃や射撃に“空白”を混ぜ、通常防御を貫通する。


◼︎情報層

・精神撹乱・錯乱効果を持つ。意識の盲点を突き、敵に“存在を見失わせる”。

・記憶や認知に干渉し、幻惑や恐怖を植え付ける。

・一部では「魂の層」に接触し、精神的影響を残す。


◼︎典型的運用例

・姿を消す「影潜行」

・敵意識に恐怖を流し込む「夢魘」

・敵の情報伝達を断ち切る「暗黒領域」




■ 3. 炎属性(Ignis)


◼︎物理層

・熱・火炎・爆炎の生成。爆発力に優れ、攻撃に直結。

・酸素供給を無視した「マナ火炎」は真空中でも燃焼可能。

・揮発性を帯び、周囲環境を瞬時に変質させる。


◼︎情報層

・感情と強く結びつく。怒りや激情を燃料として循環を加速。

・仲間に闘志を伝染させ、士気を上げる。

・逆に敵の星脈循環を「過熱」させ、暴走を誘発する。


◼︎典型的運用例

・高熱を一点集中させる「灼槍」

・戦場全域を熱で覆い尽くす「炎嵐」

・仲間の攻撃力を上げる「闘志伝播」




■ 4. 氷属性(Glacia)


◼︎物理層

・温度低下による凍結現象。水分を瞬時に結晶化させ、物質を封じる。

・氷壁・氷刃・氷弾として形成可能。

・熱伝導を遮断し、敵の炎属性を無効化する。


◼︎情報層

・「停滞」や「鈍化」の波形を持ち、敵の思考や反応を遅らせる。

・精神的冷却効果を与え、仲間の動揺を抑制する。

・時間的流れを“遅延”させると解釈される現象もある。


◼︎典型的運用例

・相手の動きを止める「氷結牢」

・反射壁として機能する「氷鏡」

・戦場を緩慢化させる「静寂の氷野」




■ 5. 雷属性(Fulmen)


◼︎物理層

・電撃・雷撃の放出。瞬間的な速度と破壊力に優れる。

・筋肉や神経に直接干渉する“麻痺衝撃”を与える。

・精密機械やマナ装置の機能をショートさせる。


◼︎情報層

・「閃き」や「直感」と結びつく。使用者の思考速度を瞬間的に加速。

・神経伝達を補助し、複数人の連携を即時に成立させる。

・逆に敵の神経信号を乱し、誤作動を引き起こす。


◼︎典型的運用例

・瞬間移動に近い「雷閃脚」

・複数人での意識同期「雷脈リンク」

・敵神経を麻痺させる「痺槍」




■ 6. 風属性(Ventus)


◼︎物理層

・空気の流れを操作。斬撃・弾丸の加速・飛行補助に使用。

・真空領域を作り出すことで敵の呼吸や火炎を遮断。

・遠距離攻撃の“弾道制御”としても利用。


◼︎情報層

・「流れ」「変化」と結びつき、環境に柔軟に適応。

・意識や思考の伝播を助け、仲間の連携を自然に調整。

・敵に“揺らぎ”を与え、集中を乱す。


◼︎典型的運用例

・加速した斬撃「風刃」

・周囲を浮遊させる「風翼」

・敵の射撃を逸らす「乱流障壁」




■ 7. 土属性(Terra)


◼︎物理層

・地殻や鉱物を操作。防御壁・地槍・震動波として展開。

・金属や鉱石を変質させ、装備を強化することも可能。

・耐久力に優れ、拠点防衛に強い。


◼︎情報層

・「安定」「基盤」の波形を持つ。仲間の星脈循環を安定化させ、暴走を抑制。

・精神的にも落ち着きを与え、恐怖心を軽減。

・逆に敵の“足場”を奪い、戦術基盤を崩すこともできる。


◼︎典型的運用例

・堅牢な防御壁「土壁」

・局地震動を起こす「地脈震」

・仲間の循環を安定させる「地母の抱擁」




■ 8. 水属性(Aqua)


◼︎物理層

・液体の生成・操作。水弾・水槍・水流として攻撃。

・冷却・洗浄効果を活用し、炎や毒を無効化する。

・水蒸気や霧を用いた隠蔽・撹乱戦術も得意。


◼︎情報層

・「流動」と「同調」を象徴。仲間の循環を調和させる。

・情報の“拡散”や“吸収”に長け、敵の意識波形を攪乱。

・癒しや再生とも関連し、細胞修復に利用される。


◼︎典型的運用例

・戦場を覆う霧「水幕」

・仲間の治癒を促す「清流」

・敵の攻撃を呑み込み逸らす「水盾」




■ まとめ ― 属性体系の意義


・物理層:攻撃・防御の直接作用

・情報層:意識・精神・連携への干渉


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る