twinkling 5|ひかる★
*
「きらきら星におねがいすると、なんでも、かなえてくれるんだ。」
ひかりにも教えてあげた。
窓の外にきらきら星を見つけたときはうれしかった。必死でおねがいした。目がぼやけて、暗くなって、何もかも分からなくなるまで、おねがいしつづけた。ねえ、
お星さまに、おねがい届いたかな?
*
ひかりが生まれた。
おれは、お兄ちゃんになった。ひかりのお兄ちゃん。なんか、すごい、すごいぞ。勇気と、元気が、りんりんとわいてくる。なんだ、これ。
ばあちゃんに連れられてった病院は迷路みたいだった。床はぴかぴかしていて、壁はつるんとしていて、家とは大違いだった。なんだか、それだけで、わくわくした。
「ほら、あのコットだよ」
と、病院のお姉さんが教えてくれた。赤ちゃんのベッドのことをコットっていうんだって。コット、コット。なんか、かわいいなぉとおもった。そのコットのなかで、生まれたばかりのひかりは寝ていた。すやすやという寝息がこっちまで聞こえてくるみたいに。
お姉さんに踏み台を貸してもらって、どれどれって、コットのなかをのぞいた。初めて会うひかりは、顔ばっかりがおっきくて、熱を出したときみたいに真っ赤で、しわしわで、ふにゃふにゃな顔をしていて、ちっともかわいくなんてなかった。ばあちゃんに言ったら、
「おめえかて、生まれたばっかんときゃぁ、あんなだったわ」
と言われた。おれは男の子だからかわいくなくてもいいけど、ひかりは女の子だからかわいい方がいいに決まってる。もし、友だちのてっちゃんが、ひかりを見て、「ブース、ブース」てからかったら、おれが守ってやろうと決めた。
でも、退院して、お母さんと一緒に家に帰って来たひかりは、別人のようにかわいくなってた。お兄ちゃんのおれが言うのもなんだけど、こんなにかわいかったらブスなんていうやつはいないとおもった。でも、守ってやらなくちゃ、だって、おれ、お兄ちゃんになったんだからね。
でも、家にはお父さんがいない。
お父さんがいなくても、赤ちゃんは生まれるのかな?ばあちゃんに聞いたら、
「ひかるのお父ちゃんがいんでも、ほかの男がいたら、赤ちゃんはできるだ。しょんねぇ男がおらぁな。しょんねぇ男だって男だから、ひかりがでけただよ。ひかりはなんも悪くねえ。かわいい子だ。ひかる、おまんがお兄ちゃんだから、ちゃんと守ってやるだぞ」
教えてくれたばあちゃんの顔は、ちっとも嬉しそうじゃなかった。しょんねぇって、嬉しくないことなんだな。けど、ばあちゃんい言われなくたって、ひかりはおれが守るよ。
おれに、お父さんはいない。
たしか、サンシあるひとと、プリンして、ニンジンされなかったから。あれ、ちがうな。えーっと、あ、そうそう、サイシあるひとと、フリンして、ニンチされなかったからだった。たぶん。
おれを産んだお母さんは、ちょっとの間、ばあちゃんとじいちゃんの家にいたんだ。それで、じいちゃんと毎日ケンカするのがイヤになって、家を出たんだ。あれ、おれはどうしたんだっけ。お母さんと一緒に行ったんだっけ?ばあちゃん家にいたんだっけ?ま、どっちでもおんなじか。
おれさ、お母さんと過ごした記憶も、ばあちゃんと過ごした記憶も、あまりない。一番あるのは、ひかりと一緒に過ごした記憶。どこかの部屋で、たぶん、お母さんの部屋だけど、小さなキッチンと小さなお風呂のある小さな部屋で、ひかりと遊んでる記憶。おれの宝物。
だってね、ひかりが笑うと、きらきら、きらきら、するんだ。なんかね、おれの胸のなかがね、お星さまが光ってるみたいに、きらきら、きらきらするんだ。これは、おれだけの秘密。
けど、いつか、ひかりには教えてあげるつもり。おれとひかりが大きくなったとき、一緒に、きらきら星をみながら、話してあげるんだ。
だから、ひかりのこと守んなくちゃ。おれは蹴られたってヘッチャラ、あんなのへのへのカッパだよ。おれは、カメみたいにまあるくなって、カチカチな甲羅になって我慢してればいいんだから。
痛くないよ。
おれは、強いんだ。ぜったい、負けないんだ。
それが、二番目にある記憶。
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