interlude|ginger★


……

………?

…………?!


 急に視界がひらける。

 目の前にだれかいる。


 ぶつかる!!


 とおもった瞬間、身体がふわりと浮いて、宙を舞う。


 すた。


 すた?

 何だろう、この身のこなし。てか、すたってなに??おれは自分の足を見る。見る。見る。いや、二度見どころか三度見する。


 え?え?そんなことある??

 ともやがいたら、あるある探検隊が始まる流れだ。しかし、陽気な行進は始まらない。あ、ここは学校じゃないか。おれは訳がわからないまま、もう一度だけ、見る。視線の先には、ぐーの形をした毛むくじゃらの小さな手が、ちょこんと、ある。


 ん?なに、これ??


 おれは、右の手を見た後、左の手を見る。見えるのは、ぐーの形をした毛むくじゃらの小さな手だ。もう一度、右手を見る。毛むくじゃらのぐー。左手を見る。毛むくじゃらのぐー。


 あれれ?


 試しに右手をあげてみる。あがる。あがるにはあがるが、あがったのは毛むくじゃらのぐーだ。右手をさげて、左手をあげる。あがるのは毛むくじゃらのぐー。この手、見覚えがある。念のため、もう一回だけ見る。うん、毛むくじゃらのぐーだね。ええと、これって、もしかして、おれ、おれ、



 猫になってるーーーーーーーぅ?!



(なってるーっ)(なってるーっ)

(なってるーっ)(なってるーっ)



 しかし、こだましたのは、「ニャー」という鳴き声だった。どうやら、おれは、猫になってしまったらしい。


 え、え、え??

 え、え、えぇー?!


 日曜アニメのパパみたいな言葉を使う。しかし、こだましたのは、もちろん、


「にゃ、にゃ、にゃー?!」という鳴き声だ。


「ニャ、ニャニャ、ニャニャニャーニャ?」

(いや、なんで、おれ、猫になってんの?)


「ニャニャニャ、ニャー?」

(そもそも、ここ、どこ?)


 いや、ニャしか出ないし。


「ニャッ!?」

(はっ!?)


 そこで、おれはともやに聞いたあることをおもい出した。ともやが言ってたスゲー、オモレー、マンガのことだ。たしか、テンセーしてマオウになるやつ。そうだ、それだ!


(おれ、テンセーして、猫になったんだ!!)

「ニャ、ニャニャッ、ニャニャニャニャ!!」


 ニャしか出ないわけです。

 おれ、案外、柔軟で物わかりがいいタイプ。じゃあ、もうひとつの謎を確かめないと。おれはまわりを確かめるために歩く。だけど、猫のからだに慣れてないせいか、なんかぎこちない。ひょこひょこひょこひょこ。


 いや、歩幅、せま!


 おれは猫になって初めて気づいたことが、それだ。猫、めっちゃ足短いなー。おれ、クラスでは一番足速かったんだけどなー。そのステータスも受け継がれてるのかなー、などと呑気なことを言ってる場合じゃない!ほら、おれ、しっかりしろにゃ。


 あたりを見渡す。

 長い間、雨風にさらされて経年劣化したアスファルト塀がみえる。猫の視点はおもった以上に低い。人間だったら、とてもじゃないけど上れそうにない高さだ。すごいな、猫、と感心する。


 視線を落とす。


 アスファルトの道路に、橙色した『30』の数字がみえる。おれの知っている世界だ。テンセーしたら別の世界へ行くんじゃなかったんだっけ?ふいに、からだが、宙に浮く。


 ふわり。


 ふわり?え、猫って飛べたっけ?いや、飛べはしない。少なくともおれの知ってる猫は。もしかして、ねこ風船?いや、ないない。てことは、やっぱり、ここは、テンセー世界?とおもっていると、何かにからだ全体を包まれる。というか、押さえ込まれる。


(にゃ、にゃにが起こっているんだっ?!)

「ニャ、ニャニャニャニャニャニャッ?!」


 いきなりラスボス始まりのテンセー世界かと、わずかにあいていた隙間に顔を押しつけて顔を出す。すると、向こうから、ネコさんマークの車が迫ってくるのがみえる。


 え、まさか、ラスボスって宅急便?!

 猫だけに。


 ともやがいたら、確実に、あるある探検隊の流れだ。でも、ステップは始まらない。てか、ピンチじゃん!テンセーしたのに、おれ、また、すぐ死ぬの?



 ……また??



(だれか、にゃんとかしてくれー)

「ニャニャッ、ニャニャニャーニャー」




 近くで誰かの叫び声が聞こえた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る