文学フリマに行ってきたよ、というお話 4


悩むことが悪いとは思っていないんです。

迷ったり、悩んだりしつつ、学んで、より良いものを皆さんにお届けしたい。

そう思うことが増えました。

少し欲張りになったのかもしれない。

そう思いつつ、そんな自分を前よりは好きでいられそうです。



以下、noteと同じ内容です。



待機列で並びながら、私が考えていたこと。それはいかに効率的にそつなく目的のブースを目指すかです。

どうやら物凄く混むらしいぞ、そんな情報を得ていたのです。



開始の合図と共に、順番に従い、皆さん歩みを進めます。私もその流れで静かに歩き出します。中央の列は皆さんが通るだろうと、人のまだ少ない他の道を行きます。

コーナーで差をつけろ!(鈍足)……当然、走ってはいけません。周囲のご迷惑、かつ危険ですので。



目的のブースにお邪魔し、購入し、「ありがとうございます」と去っていく、この繰り返しを重ねること10分ほど。

こうして、目的の本を入手していく私には、徐々に謎の達成感と高揚が。計画通り、事が進んでいるのです。まだ、会場は混雑していない!

いける……!この試合、勝てる!

開始数十分、徐々にブースには列が見られるように。サイン本など、数に限りがあるものも多いためでしょう。なるほどなるほど、と並ぶ人々を眺めつつ、通り過ぎた私。

そう、この時点で気付くべきでした。しかし、己のミスに気付くことないまま、私は歩みを進めてしまったのです。



小銭や千円札を小さめのお財布に用意していたため、会計時に慌てることもなく、スムーズであったこと。目的の書籍で重くなっていく文学フリマの手提げ。少なくなっていく財布の中身と共に、満たされていく達成感。

会場の熱気も入場者の熱意も高まっていきます。

しかし、私は目的の書籍を入手し、それ以外に気になっていたものも購入!

初試合としては、なかなかではないか。流石、一人行動に慣れているだけはある!と、初文学フリマ勝利宣言をしかけた私はそのとき、やっと気付きます。



「あれ?これ、ちょっとだけもったいないかも?」――そう、文学フリマとは目的の書籍やものを入手するだけではないのです。

作り手と読み手が交流し、本や文学に対しての熱意を感じられる貴重な場でもあるのです。

だからこそ、多くの方が作り手として、そして読み手として、このイベントを楽しみにしているのでしょう。

もちろん、迅速かつ、迷惑をかけずに目的の本を購入する。これ自体が間違っているわけでもないのでしょう。ただ、貴重な機会に感想や喜びを伝えられなかったことは、私の中で初文学フリマの心残りとなったのです。



そもそも、Twitter(X)で相互の方なら、ご挨拶くらいしてよいわけです。

一人行動に慣れすぎた悲しき習性。

まだまだ時間は残っていますが、ずしりと重い戦利品が私を戦いの場から遠ざけます。かくして私は、再びりんかい線へと向かうのでした。



次回は必ず交流を……いや、そもそも交流ってなに?

電車に乗りこんだ私は脳内一人会議中です。

そんなとき、目の前の男性の手提げバッグが目に入ります。そうです。文学フリマ東京40のあの手提げバッグです。

席に座った男性はすぐに手提げバッグから、購入したであろう本を取り出し読み始めました。



その姿が、漠然とした不安を抱いていた私をなぜだか安心させたのです。

本を好きな人が今日、たくさんいた。

あの会場の熱気、本を作る人、本を求める人が大勢いる。



地方に住む私の周囲には、本を読む人が少なく思えます。

周囲に小説を書いている人はおらず、パソコンの向こうだけなんです。

webで書いた作品を読んでくださる人がいて、幸運にも書籍となり、購入してくれた人がいる。とてもありがたいことだと感じています。

ただ、書籍を手に取ってくれた人達は楽しんでくれているのだろうか。そんな不安は消えることはありません。いえ、この仕事をしていくならば、その不安もまた必要なことなのではないかとも思うのですが。



迷う中、訪れた文学フリマ。本や文学を好きな人があれだけいるのだという事実は、私に刺激をくれました。迷うことも多いけれど、出来ることをひたむきに頑張るしかないと思わせてくれたのです。



もし、二度目の文学フリマに訪れ、ご挨拶をしたときには「ほほーん、勇気を出したんだな」と差し入れの(※)北海道土産と共にご笑納ください。



※「北海道のお菓子は皆が好きらしい」と思いこんでいるため、この差し入れを選んでいる。そのため、北海道生まれではない。

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