第5話

「なるほどわかったわ。つまり貴方たちは魔力争奪戦から降りるってことね」


 レリィは言い放つ。



 魔族少女4人とマイはキッチンに集まり”会議”をしていた。議題はピンカ曰く”契約は中止!人間界で暮らそう会議”

 会議とはいうものの実際はピンカが、


「私とフラァちゃんは契約するのやめてマイちゃんと人間界で暮らすことにしたよ〜!レリィちゃんとトライちゃんもそうしようよ~」


 と軽い感じで提案しただけである。

 レリィは急に何を言い出すんだといった困惑した表情でピンカを見た。トライは感情の分からない表情でいたが、


「私もそれで構わない。」


 と、ピンカの提案に賛同したのだった。魔族少女3人がマイを巡る争奪戦を辞退。その状況に呆れた顔をしてレリィは冒頭の発言をしたというわけだ。


「ということは、私の不戦勝ね。マイ、私と契約しなさい。」


 レリィはマイの前に立ちマイの肩に手を置いて、勝者の当然と権利と言わんばかりに契約を迫る。


「待てレリィ。マイの気持ちを優先すべきだ。」


 すかさずトライがマイとレリィの間に割って入る。


「なによ。文句ある?もう貴方に関係ないことでしょ?」


 ”関係ない”。その言葉にマイは胸のあたりがチクリとする。確かに、契約を望む相手ではなくなったマイとトライの関係はなんと呼べばいいのだろう?

 一緒に暮らしはするし、トライの”楽しいこと探し”を一緒にする約束をした。この関係は何?


「マイは私の大切な友人だ。無関係ではない。」


 トライはレリィをまっすぐ見て言った。

 ”友人”その響きにマイの心は熱くなる。友人。そう、マイとトライはもう友達だ。真剣な場面であるが、思わずにやけてしまう。


「あーもうっ ホント貴方たちってお人よしね。人間の少女に絆されて自身の望みを諦めちゃうなんて。私は嫌よ。自分の望みを諦めたりしないわ!」


 レリィはトライとマイの良い感じになっていた雰囲気を払いのけるように言う。


「レリィちゃんも素直じゃないな~」


 そんなレリィをたしなめるように、ピンカが言った。


「レリィちゃんがそんな自分のことばかり考えてる性格じゃないことくらい私たちはちゃんと知ってるんだよ〜。素直にレリィちゃんの気持ちを聞かせてよ」


 ピンカの言葉にレリィはぐぬぬと顔を歪める。


(ピンカさんってこの中で一番幼く見えるけど意外と一番年上なのかも・・・?)


 実際の年齢は知らないが、やり取りを見ていると精神的な力関係が想像できた。


「レリィは・・・マイの為に・・・契約しようとしてる・・・と思う」


 会議の様子を静かに見守っていたフラァが口を開いた。


(私の為・・・?どういうこと)


「なるほどな」


 何かを理解したトライが呟く。

 マイは理解が追い付かなかった。


「もーっなによみんなして私の考えなんてお見通しって感じの雰囲気出さないでよ!!」


 考えを見透かされた悔しさで顔を赤らめたレリィは声を荒げた。

 困惑しているマイにピンカが耳打ちする。


「あのね~、マイちゃんが強い魔力を持ったままだと、私たち以外の魔族に狙われる危険があるからレリィちゃんが全部を引き受けようとしてるんだよ」


 そうか。魔力を欲するのは彼女たちだけではないのだ。魔力を狙う相手がみんなのように優しい性格だとは限らない。悪い魔族から守るために契約をして魔力を引き受けようとしてくれているのだ。


「レリィさん・・・私の為に・・・」


「そんな震えた小動物みたいな顔で見ないでよ!」


 どんな例えかわからないが、こみ上げる嬉しさと涙を止めようと力を入れた目で不思議な顔になっているのかもしれない。


「みなさん、優しすぎます・・・。本当に魔族ですか・・・」


「悪かったわね、魔族らしくなくて」

 マイはこんなに自分の事を考えてもらっているのに、何のお返しもできないのが心苦しく感じた。


「なにか・・・魔力をみなさんへ平等に渡す方法はないんですか?」


 契約がひとりの相手としかできないなら他の方法を探してみたい。マイは自分にできることがあれば何でもしたいと言う気持ちになっていた。


「ないことはないけど~効率悪いし~、なによりマイちゃんの体が持つかどうか」


 腕を組んで考えるような仕草をしながらピンカが言った。


「なんですか?私にできることならなんでもします!」


「マイちゃんがそういうなら〜。あのね全員で~」


「ピンカ!マイに変なこと教えるな!!」


 ピンカが何かを言おうとするのをトライが止めた。トライの顔が妙に赤い。


(あ、なんか察したかも・・・つまりえっちなことか・・・)


「マイに危害を加える者が来たら、我々で協力して倒せばいいだろう!」


「まぁ~そうだね〜。結界を張っておけばそんな簡単に見つかることはないし~

 それに・・・」


 ピンカがマイをまじまじと見ながら言葉を切った。そしてニヤリと笑う。


「マイちゃんと私たちの誰かが恋仲になるかもしれないしね〜。そうすればその相手に魔力全部上げたらいいよ~」


 ピンカの言葉に一瞬、場の空気が変わった。これからみんなで仲良く人間界で暮らしていこうねって時に、なんで気まずくなること言うんだこの子は。


(まぁ、私たちはみんな友達だ。さっきだってトライが友人と言ってくれたじゃないか)


「これからの生活が楽しみだね〜!よ〜し会議終了!!お腹すいちゃった~!」


 ピンカはケラケラと楽しそうに笑う。レリィは呆れたようにピンカを一瞥し、トライはため息をついた。フラァはそんな仲間たちを慈愛に満ちた表情で眺めている。


(これからどうなるんだろう・・・)


 楽しみ半分。ドキドキ半分。みんなと出会ったときは、こんな風になるとは思いもしなかった。

 魔術の勉強でも始めようかな。もっと健全な方法で魔力を分ける方法が見つかるかもしれない。

 そんなことを考えながら夕食の準備をする。みんなも手伝ってくれる。ひとりで暮らしていた時もそれなりに幸せだと思っていたが、上には上があるらしい。

 この幸せが続いたらいいな。

 今はただそれだけを願う―――。


おわり。

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マイと四人の魔族少女 みずあそう @mizuasou

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