第3話 墓場
エトは私に握手を求めて来た。
少し戸惑いながらも、彼の手を取る。
するとエ卜は静かに尋ねて来る。
「僕、今の君の事を知りたいんだ。教えてよ」
私は聞かれるがままに答えた。
「私は飯島星華(いいじま せいか)。三十四歳」
エトはこちらに満面の笑顔で微笑んで来た。
「それで?」
「以上です」
エトは思いがけない返答に目をまるくした。
そして、興味津々に畳み掛ける様に質問攻めをする。
「それだけ?趣味は?仕事は何をしてるの?恋人は?結事は?子供はいないの?」
そのあまりの無神経さに、眉そひそめた。
「エ卜さんだっけ?あのさ、よく知らない人にそう簡単にプライバシーを話す訳ないでしょ」
私はエトに向かってそういい放つと、彼は不服そうな顔して「ケチッ」とつぶやいた。
カチンときた私は、彼を鋭く睨みつけた。
その瞬間、エ卜の背後からぼんやりとした青白い光の玉がゆっくり近づいて来るのが見えた。
……疲かれているのだろうか。
人魂らしきものが見える。
幻でもみえているのかもしれない。
私は目をこすり、もう一度エトの方を見る。
そして悟った。
今見ているもは幻ではない。
現実だ!
私はその光景に凍りつき、震える指をエトの背後へと向けた。
「ひっ…人…人魂が… 。人魂がこっちに来てる…」
エトは後を振り向くと突然大笑いしだした。
「星華。これは人魂じゃないよ!これは、星だよ!ちょっと待って笑いが止まらない」
ツボに入ったのかしばろくの間、エトは笑い続けた。
私は口を開けたまま静止している。
そんなカオスな光景がそこにはあった。
エトが落ち着いた頃、彼は涙を拭いながら話し始めた。
「あーあ。面白い。この青白く光っているのは星だよ。寿命がつきた星達だ。星は寿命がつきると爆発を起こしたり、除々に消えていったりするんだよ」
彼は近づいて来た星を尊いものを見るかの様に眩目を細めながら話し続けた。
「これは星と言うより、星の魂みたいなものかな。ほら周りを見てごらん。彼らが顏を出してきた」
我に返った私は慌てて周りを見渡す。
すると、無数の星の魂が草ムラの影や川の中、あちこちから光を放ち始めていた。
それらは青色いだけでなく、赤や黄色、オレンジと様々に煇き、そこはまるで光の花畑の様だった。
「綺麗」
私はあまりの美しい光景に思わず口からこぼれ出てしまった。
「そうでしょ。この星川は、消滅した星々の魂が流れているんだ。そして、最終的にこの場所に流れ着く。言わば、星の墓場だね」
エトは川を見つめながら丁寧に説明してくれた。
すると、一つの星がふわりと私に近づいて来た。
私と星々 煮干しの悩み @niboshi_nayami08
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