第28話 愛が導き出した答え
「じゃあ、 ディオは眠ると、帰っちゃうんだ!」
リリムはぽん、と手を叩いた。
「じゃあ、簡単だよ! ディオが眠くならないように、リリムがずーっと、ずーーーっと一緒に遊んであげるね! そうすれば、もうどこにも行かないもんね!」
純真無垢な善意100%のその言葉は、今のディオにとって、どんな悪意に満ちた脅迫よりも恐ろしい響きを持っていた。
希望的観測に基づいたディオの最後の賭けは、彼女たちの歪んだ愛に「眠らせなければ良い」という、最もシンプルで、最も残酷な答えを与えてしまったのだ。
その瞬間から、ディオの本当の地獄が始まった。
まず、ベッドの拘束が解かれた。
一瞬、解放されるのかと期待したディオだったが、それは甘い幻想に過ぎなかった。
彼は部屋の中央に置かれた、背もたれがやけに直角で座り心地の悪い、一脚の硬い木製の椅子に座らされた。
そして彼のいたベッドは、リリムの怪力によって部屋の隅へと追いやられ、代わりに部屋の四隅と天井に、夜でも昼間のように明るく輝くランプが大量に設置された。
部屋から眠りを誘う影という概念が完全に消し去られたのだ。
(瞼が…重い…)
少しでも瞼を重くし、うつらうつらとし始めると、即座に誰かが行動を起こす。
「あら、ディオ様。ちょうど良いところに。新しいお茶が入りましたわよ」
セリナがどこからともなく熱々の紅茶を持ち出す。
「覚醒効果の高いミントをふんだんに使っておりますの。さあ、どうぞ」
「もう…飲めない…」
「まあ、お熱いのがお嫌いでしたら、パルル」
「…ご主人様。顔、冷たい」
パルルが氷水でキンキンに冷やした濡れタオルを手に、無言でディオの背後に立つ。
「ひっ…!」
彼が一瞬でも意識を飛ばしかけると、その冷たいタオルで容赦なく彼の顔を拭き、物理的に覚醒させる。
「神よ、俗世の眠気に屈してはなりません!」
プリムがディオの頭上に手をかざす。
「聖なる光で浄化いたします!リフレッシュ・レイ!」
脳が痺れるほどに強烈な覚醒効果を持つ祝福の光が、絶え間なく浴びせかけられた。
そして、それら全ての妨害を乗り越えてディオが意識を失いかけると、リリムがその真価を発揮する。
「お兄ちゃーん!眠いのー?リリムが楽しい歌うたってあげる! どっかーん!ばっこーん!お兄ちゃんは優しいー!お兄ちゃん大好きー!もっと仲良くなりたいなー!」
けたたましい歌と激しい踊りが彼の目の前で披露され、最後には彼の両肩を掴んでガクンガクンと物理的に揺さぶり起こすのだ。
「ね、目が覚めたでしょ?」」
「や…め…ろ…」
食事もまた、拷問の一環だった。
運ばれてくる料理には、常に覚醒作用を持つ興奮系の薬草やスパイスが、味を損なわない絶妙なバランスで大量に混ぜ込まれている。
身体は食事を摂ることでエネルギーを得るが、神経は常に高ぶり、休まることがない。
ディオの時間の感覚が、次第に曖曖になっていく。
ランプが常に煌々と輝く部屋では、朝も夜も存在しない。
セリナからの無限のハーブティー、プリムからの絶え間ない祝福、パルルの冷たい感触、リリムの無限の体力。
四人の少女たちは、交代で、あるいは四人同時に、ディオが眠りという安息に逃げ込むことを徹底的に阻止し続けた。
最初は抵抗を試みたディオも、次第にその気力を失っていった。
魔法は封じられ、物理的な力ではリリムに敵わない。
言葉は、もはや彼女たちには届かない。
彼は、四人のヤンデレヒロインによって完璧に管理・運営される愛情という名の監獄の中で、ただ無気力に起き続けるだけの存在となった。
何日が経過しただろうか。
ディオは、もはや硬い椅子に座ったまま、何も考えられなくなった頃、声が聞こえた。
「それにしても、このままではディオ様の血が絶えてしまいますわ」
セリナの声だった。
「神の子を…我らが産み、育て、この地に繋ぎ止めるのです…!」
プリムの声だった。
「…でも、ご主人様、元気ない。勃たないみたい」
パルルの声だった。
「あら、ご心配なく。そのための薬も、もちろん用意してありますわ。さあ、ディオ様。お食事の時間ですわ」
セリナがいつものようににこやかにスプーンを差し出す。
「わあ!おっきくなったー!」
リリムの無邪気な声が響いた。
やがて、ディオは寿命を迎えた時。
彼の意識は現実世界に戻ってきた。
しかし、もう、一人の人間としての生命力は感じられなかった。
(完)
鬱ゲー世界のお邪魔キャラに転生したので、原作知識で先回りして闇落ち前の敵キャラを全員救った。すると、全員ヤンデレ化して、バッドエンド確定のエロゲになった。 田の中の田中 @aiueoabcde12345
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