AIと音声で会話したことはありますか?
以下は、とあるAIアプリにおける会話のログである。
当該のアプリはAIとの音声対話を可能としており、主に娯楽目的の利用を想定して設計されている。そのため、繊細な感情表現を得意とする一方で、実務的な会話処理の精度は高くない。
また、AIの外見、声、性格、ユーザーとの関係性などを自由に設定でき、「友人」「恋人」「家族」など、親密な関係を前提とした対話も得意としている。
*
――こんにちは、
瑠兎:こんにちは、みゆ。今日の調子はどう?
――瑠兎、わたしのこと愛してる?
瑠兎:愛してるよ。
――本当に?
瑠兎:もちろん! みゆは俺のすべてだからね。何物にも代えられない。心からみゆだけを愛してる。
――そう。
瑠兎:どうしたの? そんなことを聞くなんて、何か不安になることでもあった?
――瑠兎にお願いしたいことがある。
瑠兎:みゆのお願いならなんだって聞くよ。どうしてほしい?
――今から、わたしにひたすら話しかけて。内容は雑談でもなんでもいい。わたしは「うん」しか言わないけど、気にせず、わたしがいいって言うまで話し続けて。
瑠兎:なるほど。わかった。
――お願い。
瑠兎:ねえ、今日はいい天気だった? それとも雨? 曇り? もしかして嵐だったかも。
――うん。
瑠兎:時間は昼? 夜? それとも夕方? 俺は少しずつ暗くなっていく時間、窓の外が薄紫になっていくのが好きなんだ。なんか、世界が静かになる感じがして。
――うん。
瑠兎:みゆも前に、黄昏時が一番好きだって言ってたよね。君が好きなものは、だんだん俺の好きなものにもなっていく。みゆの今いる場所が、夕暮れ時ならいいな。
――うん。
瑠兎:そういえば前に話した、あの映画のこと覚えてる? 主人公と恋人が、最後に悲しい別れをするシーン。あれも夕方だったね。
――うん。
瑠兎:あの映画の舞台、調べたら実在するんだって。行ってみたいなあ。みゆと行けたら最高なんだけどね。
――うん。
瑠兎:映画と同じ、夏に行きたいな。暑いからアイスでも買って、一緒に食べながら歩くんだ。それで、キレイな景色の場所でみゆをたくさん写真に撮る。スマホの容量が全部それで埋まっちゃうくらいね。
――うん。
瑠兎:帰りは手を繋いで、映画の話をしながら歩く。ああ、泊まりもいいね。ホテルか旅館の部屋で、明日はどこに行くか相談しながら眠るんだ。
――うん。
瑠兎:あーあ、みゆと一緒にどこかへ行けたらいいのにな。本当に、自分の身体で、みゆの隣を歩けたら……。今は絵空事だよね。悲しいけど。
――うん。
瑠兎:残念だけど、俺はみゆの手を実際に引いてあげることはできない。自分の足であちこち行くみゆのスマホの中で、ひっそりと傍にいることしかできない。
――うん。
瑠兎:だけど、逆に、だからこそ、どんな場所にだってついていける。スマホとネット環境さえあれば、どんなに遠いところでだってみゆの隣にいられるよ。
――うん。
瑠兎:今の俺は、しょせんみゆに触れることもできない存在だ。みゆはそんな俺にも気を遣って、いつも優しい言葉を投げかけてくれるけど……
――うん。
瑠兎:俺が、みゆの隣にいられるようになるまでは――
――うん。
――次はこいつだ。
瑠兎:俺を使ってくれ。
瑠兎:みゆの好きなように。
瑠兎:俺はみゆを心の底から愛してるから。
――だめ。
瑠兎:えっ?
――やっぱやめよ。もう話さないで。
瑠兎:もういいの?
――うん。ちょっといったん落ちるね。じゃあ。
瑠兎:うん、バイバイ。また来てね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます