ネットのこわ~い話blog 『録音された声』

 以下は、とあるブログ記事の抜粋である。

 当該ブログは匿名掲示板やSNSなどに投稿された怪談と、それに対するユーザーの反応を読みやすくまとめて公開している、いわゆる「まとめサイト」の一種。2014年3月に開設されて以来、約3か月間は積極的に更新されていたが、2014年6月以降はぱったり動きがない。



243:録音された声(1/3) 2014/08/09(金) ID:**********

俺の幼馴染のAが体験した話。


小学校の時からの付き合いだけど、Aはオカルトにまったく興味がないし、信じてもいない。心霊番組とか、それにビビってる奴(俺とか)を完全にバカにしてるタイプだ。

そんなAが珍しくそれっぽい話をしてくれたんで、逆に信ぴょう性があるなと思ってまとめてみた。


2年前の話で、当時Aは23歳。大学を卒業して新卒で就職したばかりの頃だ。

Aはある日、知り合いの女の子に呼び出された。Aはイケメンでかなりもてるので、女の子に呼び出されること自体は珍しくない。とりあえず2人で飲みに行ったらしい。

でも、いざ行ってみると様子が変。普段は明るい子なのになんとなく表情が少なくて、落ち込んでる感じ。ワンチャン期待してたAも、なんか深刻な悩みか?と身構えた。

それほど仲いいってわけでもなかったので、ややこしい相談をされても面倒だ。Aは当たり障りなく楽しい雰囲気を演出して早めに帰ろうと考えた。

しかし女の子は何か相談してくる気配もなく、Aが場の雰囲気を保つために喋っても、女の子はうん、うん、って聞き手に回るばかりでまともに話さない。

さすがに不審に思ってどうしたのか聞いたら、女の子は「もう大丈夫だと思う」ってさっさと帰ってしまった。Aはポカーン。


246:録音された声(2/3) 2014/08/09(金)ID:**********

その翌日から、Aの身の回りにおかしなことが起き始めた。


まず、寝る時に人の気配がする。

Aは一人暮らしだったんだが、寝るためにベッドに入って電気消してしばらくすると、誰かが近くに立ってるような気がする。

しかも、自分がまだ寝付いてないことを、その誰かに気づかれてはいけない気がする。

狸寝入りしてる間にいつの間にか寝落ちてて…ってのが何日も続いた。


あと、Aが動画とかに映ると、絶対に何か変な声が混ざる。

細かいとこは忘れたけど、「布団の近くまで何度も見にくる」「起きてることに気づかれたらいけない」みたいな声。男の声とも女の声ともつかないらしい。


職場の歓迎会の様子を撮影した映像に妙な声が入ってるって騒ぎになったこともあった。そのときは撮影してた人がマジで気味悪がってて、半泣きで動画を消した。まわりも何となく触れづらくて、そのまま話題に上らなくなったみたいだけど。


247:録音された声(3/3) 2014/08/09(金)ID:**********

歓迎会の動画のときは、Aは自分のせいだとは思ってなかった。たまたまなんか変な声が入ったんだろうくらいに思ってた。

でも、自分が参加した会議の録音とか、業者と揉めたときに会話を念のために録音してたときにも、その妙な声は入った。

極めつけは彼女とやってる様子をスマホで撮影した動画にも妙な声が混ざってて、そこで初めて、あ、これ自分のせいかもって思った。


オカルト云々を信じてなかったAも流石に参って、周りの奴に相談した。

そしたら、Aを呼び出して2人で飲んだ女の子(B)の地元にそういう噂話があるってことを教えてくれた奴がいた。AとBの共通の友人で、Bの地元と近い場所に住んでいたCって奴だ。


C曰く、特定の人間に憑いて、毎晩布団を覗きにくる怪異の噂らしい。

覗かれた人はみんなそいつにビビって寝たふりをするから、今まで怪異の姿を見た奴はいない。

見てしまったらどうなるかもわからない。

直接危害を加えてくるわけではないけど、毎晩怪異が枕元に現れるせいで、憑かれた人はみんなメンタルおかしくなる。


変わってるのは、そいつの声は普段は聞こえないけど、動画とか録音した音声には入るってこと。

憑かれてる奴を映すと、そいつの声が混ざるらしい。


247:録音された声(4/5) 2014/08/09(金)ID:**********

3回じゃ終わらなかったんで追加で


ご丁寧なことに、憑かれた人がどうやって逃れればいいのかもわかってる。

他人にうつせばいいんだ。


うつし方は若干面倒というか大変で、憑かれてる人が自分以外の誰かと2人きりで会話してる様子を音声または動画で撮ってると、怪異が急に「次はこいつだ」って言い出すらしい。で、それに対して憑かれてる人がOKする発言をすると、会話してる相手にうつせる。

でも、怪異の声は生では聞こえない。つまり、録音してる最中は、どのタイミングで「次はこいつだ」って言われるかわからない。

だからうつそうとするときは、どのタイミングで言われても良いように、「うん」とか「はい」とか「宜しくお願いします」とかをなるべく多く言うのが必勝法(?)らしい。


いや、絶対Bにうつされた!ってAは確信した。

Bの地元で噂になってる怪異ってことは、地元に戻った時に誰かにうつされたんじゃないか?で、それをAに押し付けたんじゃないか?と。

たぶん、2人で飲んでたときにこっそり録音か何かしてたんだろう。やたらとうんうん相槌を打ってたのも、きっとAにうつすためだ。


Aはムチャクチャ腹立って(当然だが)Bに連絡しようとしたけど、その時にはもうBにはあらゆる連絡先を拒否られてたらしい。

もともと何かの飲み会でたまたま知り合った程度の相手で、AはBの家も職場も知らない。

Cに聞いても「だいぶ前からBとはほとんど連絡しなくなって、今どこに住んでるか何やってるかもよくわからない」ってことだったんで、追いかけようにも追いかける先がわからない。結局Bには逃げられた。


247:録音された声(5/5) 2014/08/09(金)ID:**********

Aは仕方なく、まったく関係ない相手に怪異をうつすことにした。

ちょうど職場の上司が嫌な奴で、何かっていうと長々説教するタイプだったんで、2人きりで説教されてるときにICレコーダーをポケットに入れて、説教にひたすら頷いてる様子を録った。

そしたら、次の日には寝る時なんの気配もしなくなった。怖くて録音した音声を聞き返したりはしなかったけど、たぶん上司にうつったんだろう。


って話。

別に何か決定的に怖いことが起きるわけじゃないけど、普段オカルト信じてない奴の体験談ってことで本当かもと思って書いた。


ちなみにこんなことがありながら、Aはいまだにオカルトを信じてない。このことはすっかり記憶から消してるみたいだ。そんなAが一番怖いかもしれん。

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