価値に恋しがち
おれの彼女は最近金だ。
輝いてて眩しすぎるとかそんな比喩的な惚気ではなくてほんとうに純金なのだ。ひと月前に右手から金になり始め、波紋が広がるようにぴっかぴかになった。体重計にも乗らなくなったし、テカリ防止の化粧品も買い始めた。
だが貧乏だった俺たちカップルは意外にも喜んだ。金でできた爪や髪を削れば儲かるのだ。やっぱり世界共通の価値があるだけある。彼女がメディアに出れば人目があつまる。最近の彼女はもはや彫刻みたいだ。だれもが目をくらませて眺める。動いてもとまっても様になる。
そんなある日彼女の右手が錆び始めた。
どうやらおれの彼女は最近金メッキだったらしい。誰も興味を示さないどころか古びた粗大ゴミみたいに彼女を扱う。お金にまみれた部屋でぽろぽろと涙とメッキを散らす、つるっぱげで深爪の彼女をみて思う。
ぼくはいまでもそんな光沢のない彼女に目が眩んでいるんだ。
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