真実と幻想と
奈那美
第1話
ふと、気がついた。
近頃、遠藤君のことを考えている時間が増えている──それは同時に彼女のことを考えている時間が減っているということだと。
以前は違った。
それこそ起きている間中といっても過言じゃないくらい、彼女のことを考えていた。
もちろん誰にもバレたくないから、細心の注意をはらって(遠藤君にはバレてたけど)。
好きだから、いっぱい触れたい。
好きだから、いっぱい話したい。
できることなら、ひとり占めにしたい──そう、思っていた。
仲良し三人組……三人でいるのは楽しい。
ふたりとも私が大好きな、大切な親友と思ってる。
それは本心。
だけど、ホントは二人きりで過ごす時間も欲しいと思ってた。
三人で過ごしてて、隣のもう一人を消しゴムで消してしまえたら……なんて考えがよぎったこともある。
あの晩は、眠れなかったな。
私って、そんなに独占欲が強かったのか?ってショックだったから。
だけど好きって私が勝手に思っているだけで。
もしも告白なんかして、今の仲良し三人組が崩れちゃったらイヤだし。
ううん……冗談交じりでの『好き』なら言ったことあるかな。
私が苦戦していた数学の問題の解き方を教えてくれた時。
『すごい!ありがとう!!大好きだよ~』って言いながら、どさくさにまぎれて抱きついちゃったんだよね。
そうしたら、『どういたしまして!私も大好き!!』ってハグし返してくれた。
……口から心臓が飛び出るかと思っちゃった。
ものすごくバクバクしちゃって……気づかれてはいなかったけど。
そうして時が過ぎて……チョコレートをあげたい人がいるって相談されたんだよね。
きっと、ふたりはうまくいく……直感でそう思った。
その反面、ワンチャン……フラれることがあるかもと内心期待してた。
だから、あの日は生チョコを持っていった。
上手くいったら『お祝い』で、そうじゃない場合は『慰めるため』に。
私と彼女の仲だもの、指でつまんで食べさせてあげても何の疑問も抱かれない。
内心の思惑は外れたけれど、お祝いチョコはちゃんと私の指から食べてくれた。
指先に彼女の舌が触れた時、ゾクリとした。
幸せそうな彼女を見送った私は、もう一つの思惑を達成させることにした。
チョコレートが残ったままの指で、新しい生チョコをひとつつまんで口に入れる。
指でつまんだままのチョコレートが、口の中でゆっくりと溶けていく。
指に残っていたチョコレートも一緒に。
もう一つの思惑……それは彼女との間接──。
真実と幻想と 奈那美 @mike7691
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます