第26話 熱狂

ネソの村で吸収した第二督戦隊を核に、我の軍団を編成した。


村の防衛力が落ちないよう、村人は全員村に置いてきている。


守護者ことグレーターデビルも村にいるので、カウンターで攻められてもなんとかなるはずである。


レッサーデビルを数体呼んでグレーターデビルの配下とさせたし。

レッサーデビルは犬の姿で村の防衛に努めてくれるだろう。



こちらの本隊にもレッサーデビルで増員してある。村にいるものより多少値がはるが人間に化けているレッサーデビルだ。


督戦隊だからそこまで兵士としての役割の数はおらず、どちらかと言えば指揮官や隊長タイプが多いからな。

雑兵としてレッサーデビルで水増ししておいた。



レッサーデビルの召喚でこの前増えた【可能性】はあらかた使い切ってしまった。

まあ必要な出費だろう。

人間に化けているとは言えレッサーデビルであるので戦力としては並の人間の兵士の数倍はあるはずだしな。


我らは今ブヴァード領、第二の町であるタラッサの近くに駐屯している。ブヴァードには三つの町があるそうで領都プロテウスとタラッサは同じような距離があったが、プロテウスは守りが堅く、また領主が普段からいるので抵抗が強いと判断した。



逆にタラッサは河口港がある商業町であり、独立機運が強いと聞いたのも大きい。


ここを抑えればブヴァード全体にも影響を与えられる割に大事にされていないっぽいので攻めやすい。



実際戦力は町の自警団しかいないらしい。プロテウスなど第一と第四督戦隊が常に駐留していて、それに従う懲罰部隊も数隊が常にいるということらしいし。



やけに使い捨てのはずの懲罰部隊が多いのでヘオヅォルに聞いてみたが、なんと犯罪者をわざわざ買っているらしい。


安くはあるが、他領は犯罪者、しかも殺人者や賊などを捕まえても処分するだけでも経費がかかるのに、ブヴァードに引き渡せば利益が出る、ブヴァードはそれを使って戦力増強や労働力確保をしているそうだ。


懲罰部隊に回される犯罪者は使い勝手がましな連中で、そうでもない奴らは第三の町であり鉱山町のガラテアなどに鉱夫として回されているらしい。



鉱夫として回された犯罪者は悲惨なんだそうだ。元鉱夫ということで最初はそこに回された荒くれがそう言っていた。



町に近づいたはいいがいきなり力ずくで押し入っても抵抗は激しくなるだろうし、こっちにも損害が出るだろうから、まずは潜入することにした。

我とマルコ、自称冒険者と罪が見えない一般人に見えるやつを連れて行く。武装しているので冒険者として潜入するか。


そういえば潜入の手はずを整えている時にマリウスが面白い事を言っていた。


我が軍団のものは大半がモリーの【魅了】か、マルコの【支配】を受けているが、その双方を受けているものもそれなりにいる。


それらが我の【希望】の属性の影響を受けると、我やモリー、マルコに【熱狂】するそうだ。


【熱狂】はすぐに収まるが、我が一押しすればそれは【狂信】に変わるだろう、と。



マリウスは我に教祖になってはどうか?と提案してきた。


マリウスの性質を考えれば、我に教祖となれというのも理解は出来る。


が我に信仰などないぞと返せば、「信仰などなくていいのです。アリス様が希望を与える者となれば、罪を払拭できる者も出てくるでしょうから」と返された。


……実際お得な気はする。だが今は保留にした。魔王が教祖というのも面白いと思うが、まだ考えがまとまりきらん。とりあえずタラッサを調べてから、とした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る