第25話 罪の場所

やっかいな死体処理を贄ですませたので、村の疫病発生確率を減らせたし、なにより【可能性】をそれなりに得られた。

グレーターデビルが村のものと共に生み出した【希望】も【可能性】として一旦徴収し、それなりに集まった。


まずはマルコシアスに【支配】の分の【可能性】を分け与える。

これによりマルコの派生からも【可能性】を徴収できる。次にモリーの【魅了】も同様だ。

マリウスへは我の眷属としての割合だけ分け与える。



そして今回もっとも活躍したであろう、守護者ことグレーターデビルへは奴が徴収した分より多く分け与えた。



これでアークへの昇格も可能であったのだが、グレーターデビルは固辞し、【可能性】を貯めておくことにしたようだ。


グレーターデビルにそれほど個性はないと思っていたが、こいつは慎重で忠実なようだ。守護者としてネソの村は今後ますます防衛力が必要になってくるかもしれんしな。



まだまだ駒が少ないから守護者に頼ることになるだろうしな。

グレーターデビルの方も、テンプレートなアークでなく独自の魔将になりたいようだ。

うむ、このまま我の役に立つなら早めに魔将にしてやらんこともない。



村では今現在の脅威がとりあえず去ったことにより祭り状態となっておる。


今までずっとストレス状態であっただろうから止めはせぬ。


本来の領主も知らぬ酒を出して盛り上がっておる。



その中の何割かはこの村への攻め手であったのだがな。


まあ皆が気にしていないならいいだろう。気にしておるのは、第二督戦隊隊長ヘオヅォルと一度殺されたバーモンだけのようだな。



我も祭りだからと飲み物をつがれておる。

我の個室でゴーティアとハノンもいるところだが。そこにその二人も呼びつけた。



「お前たち、あまり浮かれておらぬようだな? そのわけを我に話してみせよ」



二人は顔を見合わせた。二人の間にはマリウスをおいておるし、マルコも後ろに居るから何もできん。



「私は一度こいつらに殺されていますし、そのためにアリス様に手間を取らせてしまった責があります。今更アリス様側につかれたと言われても仲良くは……」



「私も同様です。我らは督戦隊ゆえ、裏切り行為でもない限り懲罰部隊のやることにケチはつけません。彼がなぶられるのも目をつぶっておりました。それが悪であるなら、どうか私の首を。しかし部下は許してやってください。奴らは都合で私の部下になっただけで、意思決定は全て私であります」



『マリウス、どうだ?』



『罪はあるでしょう。しかしそれは役割にかかってくるものでヘオヅォルという個体に寄るものではないと僕は解釈します』



『お前がそう言うのであれば、そうなのだろう』


「ヘオヅォル、お前が持つ罪はお前に督戦隊隊長を任せたものの罪だ。お前は気にしなくて良い。いや、気にするな、これはマルコからの命令と等しい」



ヘオヅォルは恐縮し、バーモンは畏まった。

バーモンにとっては自分の敵に近いと思っていた相手を気にするな、と言われたのと同然だから。


モリーの【魅了】がない、あるいはモリーがこの場にいなかったら翻意をもったかもしれない。

バーモンは少々固いが村長が言っていた通り優秀な若者のようだ。



「バーモンは村長の手伝いをしてやってくれ。村長も副村長も浮かれたフリはしておるが、今後の心配をしておるようだからな」



「あ、やっぱり、そうなのですか? お二人の様子が少しおかしいと思いましたので」


ハノンがそんなことを言ってくる。こいつもただの行商人とは思えないレベルで聡いんだよな。


だから気に入ってはいるんだが。勇者の血でも入ってるんではないだろうかと思っている。


アイテムボックス持ってるしな。



「ふむ、そうだな、ここにいるものたちは我らの中核と言っていいし、今後の話しておこう」


皆が身じろぎした。


「我は今の戦力でもってブヴァードへ攻め込もうと思っておる。といっても無論ブヴァードの罪なき市民たちを戦争に巻き込もうなどとは思っておらん。面倒だしな。個人的にはブヴァードの現領主をなんとかすればいいと思っておる」

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