第17話 事後処理
「なんだ、何が起こった?」
マルコキアスの召喚が成ったところで結界が役目を終え、消え去った。
と同時にモヒカンリーダーが逃げた向こうで完全武装の騎兵が三名、こちらを見て叫んでいる。
その前にはモヒカンリーダー。
「ひぃー、逃げさせてくれ! あれは化け物だよ~!」
モヒカンリーダーがこちらを見て、怯えた顔をしながら騎兵に言う。リーダーの顔は青ざめ、汗が額を伝っている。
「あんたたちも今、見ただろう?! 俺たちのほとんどがあいつらに消されちまったんだ! なんなんだよあいつら。それにあんな怪物さっきまでいなかったぜ、なあ、逃げようぜ」
「……わかった。ニコラ、オーガ共を盾にしろ、我らもいったん引くぞ」
騎兵の一人に相乗りしていた者が左手を掲げる。むう、魔力の鎖がオーガの首につながっておるな、あれがテイマーだかなんだかとかか。
いかに条件はこちらが悪いとは言え、オーガにかけたフィアーを解きおった。
モヒカンとは違うようだの。
オーガ共は棍棒を盾にするように構えながら、騎兵がいる方向を守るように移動した。オーガの重い足音が地面を震わせる。
『どうすればいい?』
マルコキアスが念話で問うてきた。
先程のモヒカンリーダーは我を舐め腐りおったから、殺しておきたいところではあるがどうしてもというわけでもないしな。
それにマルコキアスを見ても、冷静なあの騎兵ども、今敵に回すにはやっかいかもしれん、どこかにジャイアントもいるはずであるし、逃げると言うなら逃したほうが時間は稼げるじゃろう。
『もうよいか、見逃せ。それとあやつらが逃げたら人の姿になるが良い』
『分かった、
騎兵たちはモヒカンリーダーと後方に居て生き残ったモヒカンたちを回収し、走って去っていった。そのあとをオーガが走って追いかけていく。
言った通り、マルコキアスは騎兵たちが逃げた後、貴族風の衣装を着た男に変身した。
高貴な見た目といい、こやつイケメンというやつになりおったな。
まあ見た目が良いほうが得になることも多いじゃろう。
さて、どうしたものかの? こいと言われたから来たまでなのじゃが。とりあえずの村への脅威はなくなったと見て良いかの。
「マルコキアス、お前を今後マルコと呼ぶ。我は魔王アルデリウス、こちらではアリスと名乗っている。あっちはゴモリーのモリーだ。分かったか?」
「把握しました。俺はマルコです、アリス様。とりあえずどうしましょう?」
「持ち主不在となった馬車があるな、馬も全部連れて行こう。行けるか?」
「全部は無理です」
「ならば行ける範囲でいい。馬車に積んでいる荷物もいただくぞ。モリー、今までの経緯をマルコに伝えよ」
馬車の形態のまま繋がれっぱなしだった馬たちは怯えきっておった。
すくんで動けないという有様だ。その場で失禁しているものもおった。
動物虐待じゃな。馬の嘶きが森に響き、怯えた目が我らを映す。
このままでは使えぬので〈フィアー〉の逆呪文、〈アンフィアー〉を馬どもにかけると大人しく従うようになったわ。
「よし、マルコ、お前が馬車を操れ。この馬車で村へ急いで凱旋するぞ」
「急ぐのですか?」
「我に考えがあるのだ。早い方が良い」
我はマルコが操る馬車に乗って村に戻った。モリーは駱駝に乗ったままだ。
村長らが出迎えてくれた。
「よくご無事で。本当に良かった」
「ついでにあやつらをつぶしてきた。モリーらと一緒に馬車を使える村人を向かわせるといい。物資がたくさん残っておる。それよりも先に戻ったあの青年の死体はどこだ?」
「は、はい。さっそく手配します。少々お待ちを……。今はそやつの実家に安置しており、親が別れを惜しんでおります。何か御用で?」
「よいからさっさと案内するがいい。モリー、マルコ、あとは頼んだぞ」
我らの帰還を知った戦士二人はモリーと行動をともにすることにしたようだ。なぜかハノンは我についてくるようだが。まあ別にやましいことをする気はないのでいいのだが。
遺体を安置している家の扉から、かすかな泣き声が聞こえる……。
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