第13話 眷属

「お主が我に属すると言えば助けてやろう。希望を与えてやる」



決まった。我、今、かっこいいぞ。



『残念ながらアリス様、今のお姿では可愛いだけですわ』


モリーが念話で茶々を入れてきおる。



『か、かわいいじゃと?! 魔王が死にゆく者に契約を迫っているのだぞ! 決めのシーンじゃぞ!』


『かつてのお姿でしたらそうなのでしょうが、今のお姿ではごっこ遊びにしか見えませぬ。実際村長も呆けておりますよ』



むむぅ、確かに村長ワジャからは恐れも驚きも敬意すら見えぬ。むしろ戸惑いと侮りが見えるな。

先程強い魔力を見せたではないか! 何故じゃ?!



『先程大勢の村人を見ましたが、村人にしては魔力を持つものが大勢おりました。この村長も魔力は人間としては高めですし、慣れているのでしょう。アリス様は抑えられておられたので、強いとはいえ人間が持てる範囲でしたから』



ぬう? 今の人間どもの魔力は以前より上がっておるのか? 先程の魔力なら以前であればトップクラス、勇者の眷属を超える魔力を出したつもりであったが。



『わたくしはアリス様の言う以前を知りませんのでなんとも言えませんが、そういうことではないでしょうか』



モリーがこそっとワジャになにか囁いた。軽く魅了も使ったかもしれんな。



「分かりました。もし今の事態をくぐり抜け、村全体が助かるのであれば、望んで今、貴女様の軍門に下りましょう。ネソ村長として約束いたします」



ワジャは慇懃無礼と思えるほど丁寧に頭を下げおった。なんかひっかかるものもあるが、まあよい。これで契約は成った。



絶望しておったはずのワジャが希望を持った。そして我の眷属となった。


魔属になったわけではないぞ。


我の庇護下に入ったということだ。

今はそれを認識しておるのがワジャだけなのでわずかしか力が入ってこないが、村全体となるとそれなりになろう。



我が満足していると、荒々しくこの部屋の扉が叩かれた。



「村長。今あいつらの使いが来て、今村に入ってきた者と村長を連れてこい、と」



そんな気配はあったが、やはり見られていたか。しかし向こうから動いてくれたのはありがたい。



村長ワジャは心配そうな顔つきで我を見たが、我は頷いた。


駆けつけたアロンやサムソン、それにハノンも改めて表情を引き締めた。我らを信用していると思う。その顔は決して死出の旅に出る、といったものではなかった。



村長も皆の顔を見て、若干安心したようだ。


「わかりました。申し訳ありませんが、アリス様方も一緒に来てください」

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