「ごめんなさい。完全に私の失態だわ。まさか、私が電子戦で敗北するなんて……完全に慢心していたわ」


「いやいや、相手が上手だった、という話でしょう。我々全体の慢心だと思います」


 土御門さんが電子戦で負けてしまったことの影響はあまりにも大きかった。

 公安魔法少女第三課の正体の露呈。

 魔法少女たちによる血みどろの争い。

 人の道から外れた魔法少女の存在。

 今回、世界に向けて放送されてしまった内容の一つ一つでさえ、これまであった体制を根底から揺るがすほどのインパクトを持つものだった。


「……得体も知れない存在からの……宣戦布告、ね」


 だが、それらのインパクトを残すものでもなお、続く一つの情報によってかき消されていた。

 

 赤宝族からの宣戦布告。


 今、日本は───いや、世界はこの話題一色に染められていると言えた。


「やっばい事案よ。今、世界がひっくり返っているわ」


「とはいえ、そんな話題にすべきことか?確かに、見たことのない存在ではあったが、


「……甘いわ。あれは、だからこそ勝てたと見るべきよ。そもそも貴方、蓮夜くんの捉えられているの?」


「いや……それは……まぁ、微妙だが」


「蓮夜くんを土俵に考えちゃいけないわ。フラットに考えなきゃいけない……その上で、彼らは侵食型の魔物を我々が作った失敗作だといったのよ?その、意味はあまりにも重いわ。成功作ならどうなるのか。侵食型を作れる力とは。恐れる、ことはあまりにも多すぎるわ。そもそもとして、いつの間にか蓮夜くんが人知れず解決させていたけど、あの自由の女神の子たちはあの化け物たちの手で強力な……呪い、とでも言うべきものがかけられていたわ。あれの、残滓を見るだけでも恐ろしい。決して、油断出来るような相手ではないわ」


「……」


 僕もそう思う。

 でも、流石にここで同意したら性格が悪い奴すぎるな。


「……まぁ、そうか。蓮夜ひとりで何とかなるものでもないか」


 何とかしてみせる、と言いたかったなぁ。

 異世界に居た頃なら余裕だった。

 でも、今はちょっと厳しい。身体能力と魔力がそのままなので、一対一での戦いであれば、そこまでの弱体化はない。だけど、広範囲攻撃の手段がないせいで一対多の対面となると、異世界時と比べれば今の僕はあまりに貧弱だ。


「あの、存在への評価は一旦、私は後にしておきたいわね。それよりも、私は気になることがある」

 

「気になることですか?」


「えぇ、そうよ。私は貴方のことがとても気になっているわ」


「……?」


 真っすぐこちらを見つめながら


「あの時の貴方の口ぶり。態度……あの、化け物を見ても、そう驚いている様子はなかった。私はそう。少し、疑問に思ったの。一条くんがあの化け物を最初から知っているように見えてしまって」


「……そう、ですね」


 まぁ、そういった話には繋がるよね。


「おい、土御門……今、蓮夜くんを疑ったの?」


 僕が土御門さんの言葉に何と答えるか。

 その結論を出すよりも前に何故か急に早見さんが土御門さんの方に詰め寄り始める。


「ちょっ、何で僕が何か言うよりも前に早見さんがキレているの!?」


「だって!」


「別に事実だし……いや、ほんと考えれば考えるほど早見さんがキレる必要ないよ?」


「……っ」


「えっ?……れ、蓮夜くん?」

  

 言うか言わないか。

 悩む必要も……まぁ、特にはない。

 別に対して隠そうと思っていることもでないし。


「これは、一条大臣。つまりは僕の父にも伝えていることですが、……最初に謝罪させてください」


 僕は迷うことなく説明を始める。


「……何?」


「まず、自分は記憶喪失ではありませんでした」


「「えっ?」」


「早見さんと会った時も、僕が行方不明になっていた一年間の記憶も、しっかりと残っています。では、その一年間の間に何があったのかと言うと、異世界に召喚されてそこで勇者やっていましたね。あの、化け物はその僕が召喚された異世界に居た奴らで、赤宝族と呼ばれていましたね」


「ちょちょ!?急にトンデモない情報をぶっこまないで!?」


「ど、どういうこと蓮夜くんっ!?」


「……異世界で、勇者?なんだそりゃ」


 僕の言葉に対し、土御門さんたちは三者三様の反応を見せる。


「多分、完全に理解してもらうには長くなると思いますので……のんびり、色々と情報のすり合わせをしていきましょう?」


 そう簡単に理解してもらえるとも思っていない。

 長く腰を据えて会話する為、まず僕は紅茶を淹れに行くのだった。



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