情報
「何を見ているんですか?」
「……あー、あそこの安藤が持ってきた情報を精査しているところだ」
「……真紀さん?」
「ん?あぁ、そうね。真紀が全国を飛び回って集めた情報たちだ。こいつらがどれだけ正しいのか、これらの情報から何が見えてくるのか。それを考えるのは上に立つ私の仕事だ」
「でも、大変そうですね?」
「あぁ……申し訳ないことにな。……ハハっ。情けないことだけど、私もあまりこういう情報の精査とか得意じゃなくて」
「……うーん」
土御門さんの後ろから僕も情報を眺めていく。
「一つ……の組織じゃなさそうですね」
そして、何となくで思ったことを口にする。
「……そうか?」
「はい。ここら辺の資金の流れに違和感を覚えます。これ、動きが似ているだけで二つくらい別の組織が動いていませんか?」
「……むむっ?」
「でも、ここを境に色々とスッキリし始めてますね。使われている銀行の数が減っていますし、動きも減っています。これ、別々に動いていた組織がここら辺の時期に協力関係を構築していますね。おそらく……えっと、それで?うん。こことここが少し浮いてます。ここら辺の情報が足りていない感じがしますね。それにしても、かなり大胆に動いています。相当の自信がなければこんな派手に動けないですよ。政界……経済界。その二つに広い顔が利いていて、強引に情報をねじ伏せていない限り、すぐ本丸までたどり着けますね……でも、ちゃんと隠されている感じがするんですよね。見た感じ。ここを漁れば少し……?いや、……ん?それにしても、なんかここ最近になって急に動きが静かになっていますね……何か、準備を終えたのかな?」
「そ、そんなことまでわかるの……!?」
「ふふんっ、これでもあの一条大臣の息子ですから。割とお金関連には強いですよ」
「……し、信じられないという気持ちの方が強いけど、あの人の息子だからなぁ、という気持ちもあるわ」
僕のお父さんは結構人外だからね。
僕なんか足元にも及ばない。それの背中を少しとはいえ見ているのだ。これくらいは何となくで出来るようになる。
「とはいえ、何となくで見ているだけですよ?勝手な妄想です。これらの情報が本当にすべてあっているとも限りませんし。自分の資金繰りの動きを見ての想像ですから、ほんと何処まであっているのか不明ですよ?」
「そ、それでも凄いように見えるけど……」
それと、なんか、見たことあるお金の流れなのだ。
うーん……何処か既視感があるんだよね。それで、何となくこうかな?と予想できるのだ。
お金の動かし方には結構人の癖が出る。多分、一回僕と一緒に仕事をしたことがある人の犯行かも……いやぁ?誰だろうな。こんなことをしそうなの。既視感が何となくであるだけだから、何とも言えないや。
「とはいえ、確信に繋がるようなものは何もないですね。ここからもっと深く探さないと」
「え、えぇ、そうね。でも、そこからは私の仕事よねっ。ちょっと頼りないかもしれないけど、任せて頂戴。ちゃんと詳しく調べ上げてみせるわ」
「えぇ、お願いします」
うーん……人対人か。
早見さん絡みでロシアの動きも気になるし……うん。ある程度は僕の方でも動いておいた方がいいかもな。主導権を手放しっぱなしというわけにもいかないだろう。
何も考えずぼんやり公安魔法少女第三課に従っているだけというのは僕の性分にあわない。
うん。動くことは決まりだ。
「お前のその猫被ったような態度が気に食わねぇんだよ。気色悪い。いい年こいたお前が汚く男に媚び売って色目つかっているんじゃねぇーよ!それが一番醜悪なんだ」
「ね、猫なんて被ってないわ!これが本来の私よ!そ、それに誰が色目なんて!」
早見さんと真紀さんは未だに激しい口論を繰り広げている……動くなら一人だな。
「二人もまだ喧嘩していますし、僕はここら辺で失礼しますね?」
「えぇ、お疲れ様」
「はーい」
よし。ちょっと昔馴染みのところに顔を出そうかな。
一年顔を見せていなかったけど、うまくやっているようだし……うまくやってくれちゃっているんだよなぁ。僕なんてもういらないで追い出されないと良いけど。
受け入れてくれるかな?僕、自分の席を用意してなかったけど。
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