第三章 裏切りの魔法少女

再生魔法

「おーいっ!お前が新入りかぁッ!いいもん持っているじゃねぇかっ!」


 久しぶりに美鈴と会い、お父さんの口から衝撃の事実を知り。

 異世界から帰ってからというもの、人間関係というものの移り変わりを何となく感じてきている。


「アハハ」


「流石は男っちゅうわけか?体つきがうちらと全然違うなァっ!こりゃ出力されるパワーは異次元の一言だろうな。ったく。男と女の筋肉量はやっぱり酷いものだな!男が魔法を使えるようになったら……こりゃ、私らの出番がなくなっちまうな」


「そ、そうかも……ですね」


 だが、こいつは知らん!

 誰やねん……!こいつ。

 公安魔法少女第三課の事務所で僕に絡んでくる成人女性へと困惑の視線を向ける。マジで誰やねん。いきなり事務所の中に入ってきたと思ったら、僕の体をベタベタと触って筋力チェックしてくる。控えめに言って頭おかしいんじゃないのか?この人。

 

「化け物やな。おたく、どれくらい強い?早見はどれくらいでボコせる?」


「……ははっ」


 早見さんの知り合いかいな。

 というか、普通に考えたら第三課の人間か……また、少女じゃないじゃん。何?第三課には大人の女性しかいないの?


「……」


「ん?なんや、その顔。私の顔見て顔をしかめるとかいい度胸やん?」


「いやいや、そんな」


 しかも、この人。

 めちゃくちゃ正統派な美人さんだ。清純派アイドルやっていそうなロングヘアーな美人。こういうタイプの美人が一番苦手だ。

 自分中心であるのが当たり前であるかのように生きているから。御しにくい人たちだ。

 それと、なんか見た目に反して口調のガラが悪い。

 それもちょっと苦手だ。


「……何しているの?」


 なんてことを思っていた中、僕は魔力の揺らぎを感じて身をよじらせると共に自分の耳へと早見さんの言葉が入ってくる。


「あぎゃぁぁぁぁああああああああああ!?」


 その声に何か反応を見せるよりも前に僕が後方へと飛んだ少し後、僕へと絡んできていた女性の腕が斬り落とされる。

 剣によるものじゃない。結界による切断───早見さんの魔法だ。

 相変わらず対人だと強力な魔法。

 これをノータイムで放ってくるとか、この人。もしかして公安魔法少女第三課とは何も関係ない部外者……?


「な、何すんだテメェ!」


 なんてことを僕が思っていた間に女性の体が再生しだす。

 間違いない。魔法だ……ずいぶんと強力な再生魔法だ。一瞬で右手を再生させた。その上で、当人の魔力がそう減ったようにも見えない。

 かなり上澄みな再生能力持ちじゃないか。


「真紀の方が何をしているの?……そんな、蓮夜くんにベタベタとっ」


 なるほど、真紀。というのか。

 うん。全然聞いたことない。

 でも、早見さんが名前を知っているんだし、


「あん?嫉妬か?」


「違うわよ。まだあの子は高校生。教育に悪い貴方を遠ざけようとするのは当然のことでしょう?」


「誰よりも教育に悪そうな見た目でよく言うぜ」


「何をッ!」


 今にも魔法をぶつけ合い、武力衝突に至りそうな両者のにらみ合い。


「……土御門さぁーん」


 急に、謎に発生した、僕からすべてを置いていって始まった争いから逃げるように僕は事務所の奥で唸っている土御門さんの元へと向かっていった。

 土御門さんが静観していた以上、どうあっても真紀さんは公安魔法少女第三課の関係者だね。そういえば。

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