第2話 神の世界って……ブラックなんじゃ
忙しそうにしている理由も、何となくわかる……
先輩は、現在、十個の世界を担当しているのだよ。
真面目で、前向きなひとだから、実績を上げて評価されているのだろう。
研修の最初に渡された、“神の組織図”というパンフレットに、神の世界の概要が書いてあった……。
それによると……実績を上げると担当する世界の数が増えるらしい。
担当する世界が十個になれば、神様はランクアップするようだ。
次のステップでは、実績を上げれば、担当する世界が十個ずつ増えていくらしい。
担当する世界が百個になれば、神様はまたまたランクアップ。
(神の組織って……ランクアップするほど、仕事が大変になっていくよね……?)
百個の世界を担当する神が、実績を上げてランクアップすると、今度は神を管理する、エリアマネージャーに昇格するのだ。
(……神の世界も大変そうだよな……!)
ラックアップするごとに権限が増えるし、神力もアップするらしいの……。
権限が増えて、神力がアップしたら……何かいいこと……あるのかな?
(……神の世界って……ブラックなんじゃ……?)
(最初から……そんなことを考えちゃダメだよな……!)
世のため、民のため、身を粉にして尽くさねばならない!
神は、いい仕事をして、尊敬を集めるわけだからな。
『神の仕事、最高! 楽しい仕事! いえーい』
心のなかでそう唱えておこう。
(あれ……?)
(ところで……何で神になったんだっけ……希望してなったんだよな……?)
そうだ、ランクアップしていくと……最後はどうなるのか……?
パンフレット記載の組織図の上の方には、評議会と書いてある。
そこの議長が最終ポジションになるのかな?
ま、出世しそうにもないし、したくもない私には関係ない話だ……。
ちなみに、私以外にも、神の見習いから昇格し、新たに新人の神となるひとはいると聞いた。
女性ということだから、女神になるのかな。
まだ会ったことはないんだけど、担当する世界は……魔物はいないけど、乱暴な人族がたくさん住んでいて、永遠と戦争をやっているところらしい。
まったく、厄介な世界を任されたものだ……挫折しないで頑張ってほしい。
そのうち会うこともあるだろう。
その時は「お互いに頑張ろう」と励まし合うとするか。
(だけど……お互い……神務室から出られるのは……いつになるのかな……)
***
まずは、担当している世界の幸福度を確認しておくか。
「住民ステータス」
ステータスが表示された。
【グレイス国】種族:人族、幸福度20%[低下中傾向]
【ルクシオン国】種族:人族、幸福度20%[低下中傾向]
【ノルド国】種族:人族、幸福度20%[低下中傾向]
【ソレイユ国】種族:人族、幸福度20%[低下中傾向]
【エルディア国】種族:エルフ族、幸福度70%
【……国】……
【……国】……
(低いな……幸福度……。[低下中傾向]というアラーム表示、ピコピコしている!)
「世界モニターを見ながら、支援すべき人を見つけて支援する。そういう小さな支援を積み重ねながら、世界全体の幸福度を上げていく」と、先輩は言っていたけど……
モニターをいくつ眺めても、誰をどう支援すべきかなんて全くわからない。
わかるようになるんだろうか……。
(困ったな、どうしよう……先輩に聞きに行こうかな……でも忙しそうだからな)
ルールブックを見ながら、どうしようかと考えていると……転生者についての記述があった。
そこには『新人の神様でも、転生者の同意を得た場合、一人だけなら自分が管理している世界に送り込める。ただし転生者に与えられるスキルは一つだけ』という記載があった。
使えるスキルがたった一つしかない転生者に、世界の幸福度を向上させられるとは到底思えない。だが、このまま何もせず、ただボーッとモニターを眺めているよりは、まだましだろう。
転生者の同意を得なければならないということは……つまり、こちらから説得してスカウトしろということか。
「転生を命ずる!」なんて威勢よく言うわけじゃないんだな……。
……神様って、こんなに大変なものなのか。
(あれこれ悩んでもしかたがない! 行動、行動!)
とにかく転生者を見つけこないとな。
(まずは、転生者候補を探す作業にかかるぞ……!)
転生候補者の調査装置に、希望する条件をいくつも入力する。
そしてサーチボタンを押す。
調査装置が光りだした。
調査をかける場所は、人族がたくさん住んでいて、担当する神様がまだ決まっていない世界にした。神不足でそういう世界は結構あるのだ。
しかし……モニターには、“サーチ中”と表示されたまま。
長い! 時間……かかるな……。
条件をてんこ盛りにしたからな。
見つからなければ、少しずつ条件を外していこう。
ずっと“サーチ中”と表示されたままだな。
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