第6話 進展
署の面談室。南條は堂前と向かい合って座った。今後の方針について話し合おうという意図だった。
堂前は腕を組んで難しい顔を作った。
「正直どこから手をつけたらいいのか……。近隣住民が知らないとなれば、次はどこでしょう」
「愛実の普段の行動を探るなら、多摩西高校だろうな。愛実が通っていた高校」
「なるほど。高校の教諭や生徒から愛実の生活習慣について聞き出せるだろうというわけですね」
「それもある。あとは、愛実が18歳で透子が19歳。年齢が近いのは何か関係あるかもしれない。高校関係で知り合った可能性は十分に考えられる。個人的に愛実が何か隠しているのは間違いないと思っている」
「具体的には——愛実が透子に殺害を依頼した、とかそういうことですか」
「まあそんなところだな。少なくとも愛実が今回の殺人事件に対して何らかの情報を持っていることは間違いない。だから愛実と透子が出会う可能性のある場所を探りたい。年齢が近いことも鑑みると、まずは高校だろう」
「納得です」
堂前が力強く頷いたのを確認し、南條は立ち上がった。堂前も続いて立ち上がる。
早速二人は多摩西高校へと向かった。
高校は大半の教室が消灯されていた。現在は春休み期間だから、生徒がほとんどいないようだ。
正門の横に小さなインターホンがついていた。ボタンを押したら音が鳴って、中にいる人に来訪を告げてくれる。近年同時通話が可能なものも発売されているらしいが、高級品だ。この学校はわざわざ最新型に付け替えるほどではないと判断したのだろう。
ボタンを押してしばらく待つと、筋肉隆々の三十歳ぐらいの男性が現れた。首から名札をぶらさげている。名札には「
南條は懐から警察手帳を取り出す。
「私は警視庁捜査一課の南條と申します。こちらは堂前です。とある事件の捜査で貴校にお伺いしたいことがあります。ご協力いただけると幸いです」
峰岸が半歩後ずさって身構えた。表情も心なしか引き締まる。
「私は教員の峰岸です。事件というのはいったい——」
「申し訳ありませんが、現時点ではお話しできません」
「そうですか……とりあえずこちらへお越しください。空き教室にご案内いたします」
峰岸に案内され、1年1組の教室に入室した。南條と堂前は最前列の生徒の席に座らせてもらうことにした。
南條が口を開く。
「ある事件に会津愛実さんが関与している可能性があり、捜査を進めているところです。会津さんの担当教員の方はいらっしゃるでしょうか。彼女は今月末に卒業見込みの高校3年生と伺っています」
峰岸は首肯し、「確認してまいります」とだけ言い残して教室の外に消えていった。
その場で五分ほど待っていると、扉が開いて二十代後半くらいの若い女性が入ってきた。
「会津愛実さんが在籍していた3年2組の担任・
「よろしくお願いします。先生は是非そちらの席に着いていただいて」
南條は教員用の座席を指し示した。美浜は恐縮したような様子で席に着いた。
南條は質問を開始する。
「我々は現在会津愛実さんに関する情報を集めています。まず、会津さんの学校での生活について教えていただけるでしょうか」
「彼女の成績はいつも平均より上でした。ただあまり社交的な性格ではなく、友達が多いほうではなかったと思います」
「会津さんのご友人の名前を挙げていただけますか」
「山崎樹里さんや
「ありがとうございます。次に、会津愛実さんの父親である会津稔さんについて何かご存じでしたら教えてください。どんな些細なことでも構いません」
「三者面談のときに一度お会いした程度で、詳しくは分からないです」
「三者面談の際に受けた印象は? 正直にお答えください」
「……正直あまり仲が良さそうには見えなかったです。愛実さんは一言も話そうとせず、ずっと膝の上に手を置いているだけでした」
「そうですか……。会津愛実さんはどの部活に在籍しておられました?」
「美術部に入部してすぐにやめていたはずです。うまくなじめなかったのだと思います」
「分かりました。ご協力いただいて誠にありがとうございました」
南條は立ち上がって深々と礼をした。堂前も慌てた様子で立ち上がり、頭を下げた。
最後に茅吹未優の住所だけ聞き出し、多摩西高校を辞した。
南條はたしかな手応えを感じていた。担任教諭が親子仲が悪そうに見えたと評したことで、だんだん事件の闇が浮き彫りになっている感触があった。とはいえまだ全体像は全くつかめない。
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