第2話 異世界って本当になんでもアリなんだな。
「英雄さんもそんな顔をするんですねぇ」
どこかから、そんな声が聞こえた。声の主は少し声の太い男性のような感じで、どこか陰険さも感じられた。だが、一体どこから声をかけているかは検討がつかない。なんせここは
「そんなにキョロキョロしなくても。ここですよ、ここ、ここ。足元をご覧なさい」
「えっ、……あっ!?」
いた。というか、動いていた。影が。そう、影が俺に話しかけていた。通りで陰気臭い声をしてるなあと思った。こいつ、影そのものだ。
「お前、誰?」
「私はあなたに
グネグネと影が笑うように動いている。
「一般人が俺に何の用だよ。金は貸さんぞ」
「借りなくても十分に稼いでますので。それより、
「……なんだと?」
影は不思議な動きを繰り返しながら、続ける。
「あなたのような
「なぜ?」
「危険だからですよ。私を殺すような殺人鬼を野放しにしておけるとは思えません。監視するべきです。だから
「……うん、まあ、たしかに言ってることは正しい。正しいが、俺はお前が嫌いだな」
「そうですか、それは失礼しました。
「うん、お前のこと、俺、本当に嫌いかも」
「あかりちゃん、あかりちゃん」
「なんだ、しらかば」
「はい、モフモフ」
「うおー、もふ……うん、暖かいな。まあでもよく考えたらたしかに、人数集めとしてはありがたい話だな。よし、じゃああと一人か!」
「ありがとうございます。
そう言うと、影は途端に動きが静かになった。
「楽しみだねぇ、あかりちゃん」
「うーん、先行き不安だけどな。あと一人、パーッと明るいやつが入ってきて欲しいけどな」
*
後日、魔術探査基地局。
探査局長は複数の監視カメラが同時に破壊された事件について、データリンクを複数行いつつ、全貌を調査していた。
破壊された監視カメラには魔力痕がきっちりと残されており、その魔力は非常に強力な破滅因子を含むことが解析できていた。どう見てもあいつだ、ただ快楽が好きなだけの、純粋な殺意で生きる、
「……あいつも、来てたのか。こっちの世界へ」
第7の次元の先。ヴェールの向こう側の世界。そこへ、自分たちは向かおうとしていた。そこは全ての景色が魔科学模様でできていて、飛び込んだ瞬間に意識が消えるほどの情報量で埋め尽くされているらしい、と噂されていた。なのに何故か、この世界は普通にただのファンタジー世界のようだ。頭がいきなり吹き飛ぶこともなければ、怪物が急に情報過多魔法をかけてきて発狂して死に至る、なんてこともなさそうだった。行先のメモリを間違えたのかもしれないが、そんなのは些細なことだった。全く、事務仕事ってやつはコレだから。退屈で仕方がない。
「……とにかくあいつに、会いに行かなきゃ」
局長は拳を握りしめた。
もう二度と、あの殺人鬼を自分の手中から失うことのないように。
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