#10 スクープ写真
夕刻の街が、やけに騒がしい。
買い物カゴを抱えた主婦、仕事を終えた役人――
大通りのあちこちに人だかりができ、誰もが何かを覗き込んでいる。
気になったシティは、高度を下げた。
王城に寄った帰り、いつもと違う街の様子が気になったのだ。
(役人の不祥事か、はたまた鉱脈でも見つかったのか……)
遠見の術を発動し――
シティは言葉を失った。
それは、夕刊の第一面。
モノクロの紙面に、優雅にお茶をすするドレス姿の老婆がひとり。
最強ババアのスクープ写真だ。
『国民の金で飲む茶はうまい? 最強ババアの素顔に迫る!!』
続く根も葉もない出鱈目な記事。
いつも通りだ。
こんなものには慣れている。
けれども――
写真の中で、穏やかに微笑む自分。
映像が加わることで、適当な文字の羅列が一気に自分を。
この国一番の神秘的な術師を、ただの老婆に貶める。
(彼が……)
なにも驚くことはない。
ルシニウス青年が、マスコミに写真を売ったのだ。
「結局あなたも、詐欺師だったってわけ」
誰にも聞こえない空の上。
ポツリと呟くシティの心に、暗く渦巻く感情が吹き荒れていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます