#10 スクープ写真

夕刻の街が、やけに騒がしい。

買い物カゴを抱えた主婦、仕事を終えた役人――


大通りのあちこちに人だかりができ、誰もが何かを覗き込んでいる。


気になったシティは、高度を下げた。

王城に寄った帰り、いつもと違う街の様子が気になったのだ。


(役人の不祥事か、はたまた鉱脈でも見つかったのか……)

遠見の術を発動し――


シティは言葉を失った。


それは、夕刊の第一面。

モノクロの紙面に、優雅にお茶をすするドレス姿の老婆がひとり。

最強ババアのスクープ写真だ。


『国民の金で飲む茶はうまい? 最強ババアの素顔に迫る!!』


続く根も葉もない出鱈目な記事。

いつも通りだ。

こんなものには慣れている。


けれども――


写真の中で、穏やかに微笑む自分。


映像が加わることで、適当な文字の羅列が一気に自分を。

この国一番の神秘的な術師を、ただの老婆に貶める。


(彼が……)


なにも驚くことはない。

ルシニウス青年が、マスコミに写真を売ったのだ。


「結局あなたも、詐欺師だったってわけ」


誰にも聞こえない空の上。

ポツリと呟くシティの心に、暗く渦巻く感情が吹き荒れていた。

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