悪魔との出会い
王アルデンは二人の息子を威厳に満ちた目で見つめた。
「カイル、エリオン……明日、お前たちは決闘をするのだ! だが、殺し合うなよ、エリオン……」と、落ち着いているが力強い声で告げた。
エリオンはただニヤリと笑い、自信に満ちた目を光らせた。
「ハハハ! もちろんですよ、父上。安心してください……弟を傷つけたりはしませんよ」 と、見下すような口調で言った。
カイルはスプーンを握る手を止め、父に顔を向けた。戸惑いと緊張が入り混じった瞳で。
「父上……これはどういうことですか!? なぜ急に僕に兄上エリオンとの決闘を命じるんですか!?」 と、大声で問いかけた。
食卓に響いていた皿やグラスの音が一瞬で消えた。今やすべての視線が、王の決定に異を唱えた末っ子に注がれていた。
王アルデンは静かに息を吐き、椅子から立ち上がった。落ち着いているが威厳に満ちた足取りでカイルに近づき、大きな手をその肩にそっと置いた。
「カイル……父はお前の中にある可能性を見たいのだ。お前はまだ四歳だが、エリオンは八歳、カンジーは十歳。それでも父は、お前が他とは違う何かを持っていると信じている」 その声は重くも誇らしげだった。
「この決闘はお前を貶めるためではなく、お前の覚悟を試すためのものだ。」
カイルは父の目を見つめ、胸の鼓動が早まった。不安は残っていたが、その奥底に燃える炎が静かに灯り始めた。
一方のエリオンは腕を組み、薄く笑った。
「へっ……この決闘は俺がどれほど優れているかを見せつける良い機会だ。がっかりするなよ、カイル。」
カイルは小さな拳を強く握りしめ、うつむいたかと思うと真剣な目で顔を上げた。
「わかりました、父上。自分を証明するためなら……やってみせます!」
王アルデンの口元にわずかな笑みが浮かんだ。食卓の空気は重くなり、まるで明日が避けられぬ緊張を携えて待ち構えているかのようだった。
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夜
城は次第に静寂に包まれていった。王アルデンと王妃エレノーラはすでに寝室で休んでいた。王子たちもそれぞれの部屋に戻り、カイルの世話をする侍女イリスさえも休みに入っていた。
だが、城の片隅の小さな部屋で、カイルだけはまだ眠れずにいた。
彼は横になりながら天井を見つめ、翌日の決闘のことで頭がいっぱいだった。
「ふーん……明日は思ったより面白いことになりそうだな……」と、小声で呟いたが、その目は輝きに満ちていた。
彼は立ち上がり、冷たい床に足をつけた。頭に一つの突拍子もない考えが浮かぶ。
「よし! 今夜はじっとしていられない。外に出て……モンスターを探し、自分の力を試してみるんだ!」 と、誰もいない部屋で声を張った。
出かける前に、カイルは手を上げて力を集中させてみた。
「うーん……風のスキルって、どうやって使うんだろ……こうかな……?」
すると突然、柔らかな風が彼の小さな体を包み込み、ふわりと宙に浮き上がった。
「わぁ! 飛べるぞ! ハハハ……すごいじゃないか!」
空中でくるくる回りながら、初めての感覚に心を躍らせた。
「よし! 次は外に出て、モンスターを見つけて魔法の実験だ!」
だが一瞬立ち止まり、自分の掌を見つめた。
「変だな……まだ一つの魔法しか練習してないのに、四歳でここまで? ハハハ……まあ、本当は二十歳を超えてるんだけどな。」 と、ニヤリと笑った。
「まあ、運がいいってことだな。」
そう言って窓を静かに開いた。夜風が彼の顔を撫でる。カイルはふわりと浮かび、部屋を飛び出し、闇に沈む森へと向かった。
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闇夜の出会い
月明かりに照らされながら、カイルは空を漂っていた。夜風は心地よいが、彼の頭の中は次に試す魔法のことでいっぱいだった。
「うーん……次はどのスキルを試そうかな?」
やがて彼は森の端にある草原に降り立った。
「まずはこれからだ。もしかしたら……いきなりできるかもしれないしな。」
カイルは目を閉じ、体内のエネルギーを感じ取った。小さな手が震え、そして……
――ブワァッ!!
赤い炎が手のひらに燃え上がった。
カイルの目が大きく見開かれる。
「うわっ! いきなり成功しちゃった!? 」 炎は彼の手の中で揺らめき、熱く、荒々しく、いつでも解き放たれそうだった。
「さて……どこに撃とうかな?」
だが突然、空気が変わった。夜風は凍りついたように止み、辺りは異様な静けさに包まれた。
カイルの心臓が高鳴る。
「えっ……何だ……?」
暗い森の奥から、高くそびえる影が現れた。赤く光る目、重苦しい闇のオーラが大気を震わせる。
――悪魔だった。
その視線が真っ直ぐにカイルを捉えた。
「ま、魔族……!? この力……やばいくらい強い!」 そう思いつつも、彼の手の炎は消えなかった。
そして、唇に不敵な笑みを浮かべる。
「へっ……ちょうどいい。試し撃ちの相手は、お前だな。」
悪魔は低く笑った。
「ハァ……子供か。どうやら運の尽きだな。」
カイルは顎を上げ、燃え盛る炎を掲げた。
「へっ……やっぱり悪魔ってのは、相手の力も見ずに見下すんだな。」
「小僧に構う暇はない。死んでもらうぞ。」
「さらばだ。」
悪魔の手に闇のエネルギーが凝縮し、――ドォン!! そのまま撃ち放たれた。
爆音が響き、大地が割れ、煙が視界を覆った。
「フン……人間の力などこの程度。弱すぎる。」 悪魔は満足げに背を向けた。
だが、その瞬間。煙は風に吹き払われた。
そこに立っていたのは――無傷のカイル。
その左手には悪魔の闇球を掴み、右手には炎が燃え盛っていた。
彼の笑顔は無邪気でありながら、どこか恐ろしい。
「へっ……お前の魔法、俺でも使えるみたいだな? これは……面白くなってきたぞ。」
悪魔は目を見開いた。
「ば、馬鹿な!? 人間の子供が……闇魔法を耐えただと!?」
カイルは小さく笑った。
「どうやら今夜は……最高の訓練になりそうだ。」
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