第7話 蒼天奏(そうてんそう)

ボコッ…

何かに殴られたような感覚がして、そのあと、殴られたところがじわじわと痛くなって来た。

「…な、なんだ?」

寝ぼけた状態で周りを見渡す。すると、

「ぶっ…!」

突然、顔を殴られた。

「いったー!!何?何だ!…え?」

殴られたことに怒りを覚えて、叫ぶと、殴った本人がのそりと俺のベットから起き上がった。

「ふにゃ…おはよう。お兄ちゃん…ふあぁぁぁぁああ…」

(ど、どうしてここに瑠奈が?…ってそうだった。一緒に寝てたんだった。さっきのは瑠奈に蹴られたのか…いたたた…お転婆ですなー)

頬を刺さりながら、まだ寝ぼけている瑠奈を見た。

髪の毛がボサボサになっていて、目を擦って起きようとしていた。

(可愛いなー、今は幼稚園児だけれど、大人になったら、美人になってそうだなーっておっさんみたいなこと言ってしまった…まだ、俺、高校生だけれど?いやいや、小学生だったわ)

そんなことを思いながら、ベットから降りた。

「瑠奈ー支度するよー」

「…はい…待って〜お兄ちゃんー」

眠そうにしながら、ベットから降りた日向は、俺の手を掴んで、一緒にリビングへ向かった。


「おはようございます。父さん、母さん、兄さん」

朝、リビングにいた、父さん、母さん、兄さんに挨拶をした。怖い人たちだが、人として大事なこと、挨拶は必ずするようにしている。

「ああ、おはよう。」「おはよう、玲、瑠奈」

「おう!おはようさん、玲、瑠奈!」

兄さんは少し暑苦しい人だ。だけれど、父さんとのことになると、弱気になる。やっぱり、兄さんも父さんが怖いらしい。

瑠奈と共に席に着くと、母さんが用意したご飯を食べた。父さんと兄さんはもう、ご飯を済ませていた。

「あれ?姉さんは?」

「ああ、自分の部屋で演奏するらしい、あいつは気になることがあったら、とことん詰める奴だから」

「そうですか…」

俺は、ご飯を食べた。


「それじゃあ、行ってきます」

俺は学校に向かった。


「あ!おはよう、れいくん!」

「おはよう!レイン!」

声をかけて来たのは、レインだった。

トコトコと走って来て、俺の隣に並んだ。

「しってる?今日、音楽のじゅぎょうがあるらしいよー」

「うん!知ってるよー、何やるのか楽しみ!」

レインと雑談しながら、学校に向かった。


教室に入ると、みんなが楽しそうにお話をしていた。

俺はレインと別れて、自分の席に着いた。

すると…

「なあ!お前どうしてくれるんだ?」

「え?」

同じクラスの男子だった。

「あのきんいろの女と一緒に歩いて来ただろ?お前あの子のなんだ?」

(どこでそんな口の悪い話し方を学んだのか…この子小学1年生だよね?大丈夫かな?将来が心配になる…)

「おい!なにむししてるんだよ!おれが聞いてるんだぞ!」

(あーはいはい、めんどくさいなー問題とか起こしたら、親に知られるしなーはぁーどうしよう)

「おい!いいかげんに…」

「ただの友達だけれど、なに?」

俺はドスの効いた声でその子に人睨み聞かせた。

「……!!」

ビクッとした彼はちょっと縮こまった。

「友達と一緒にいて何が悪い?そうやって怒れば言うことを聞くと思った?舐めんなよ?蒼司(そうじ)」

俺に怒った男の子、高崎 蒼司(たかさき そうじ)は俺の言葉でビクついていた。

「………う、ううう…」

今にも泣き出しそうだった。

(あ!やっべ、やりすぎた!)

やりすぎたことに気づいた俺は、すぐに慰めようとした。

「ご、ごめん、酷いこと言った。ごめん」

俺は頭を下げて謝った。

「…くっ、お、覚えてろ」

それだけ言うと、蒼司くんは自分の席に座った。

(ああー、やっちゃったー、てか、小学生相手にどんだけイラついたんだ?てか、これ、[俺]の怒りじゃなくて、[ぼく]の怒りじゃね?なんか、ドス黒い心の闇?かな多分そんな感じのモヤが俺の心の中から現れたような…気のせいか?)

俺は不思議に思いながら、授業に臨んだ。


1限目と2限目、3限目が終わり、次がいよいよ、4限目、音楽の授業だ!

俺が今1番楽しみにしている授業で、何をするのか気になっていた。

今、音楽室に移動している。小学生でも音楽室はあるんだなーと思いながら向かっていった。


「さぁ!今日は歌を歌って、音楽がどれほどいいものが感じてもらいます。」

待ってましたー!って思うぐらい、俺は心が躍っていた。

「今回は、お外で歌を歌いましょう、そして、みんなの前で発表しちゃいましょう。恥ずかしいとか、下手くそだとか、そんな風に思う必要はありません。心のままに歌いましょう!」

先生のお話が終わり、俺たちは中庭へ向かった。


中庭にはたくさんのお花が咲いていた。

「わぁー!きれー!」

嬉しそうにはしゃいでいる女の子が多かった。

「さあ!では、始めましょう!」


みんなが各々で、自分の歌いたい曲を考えていた。俺は、自分の家族が作っている曲から選ぼうと決めた。

(何がいいかなー?[On the Wings of Tomorrow][空に描ける笑顔の花][Winged Heart]、ふむ…どれもいいな)

俺が曲に悩んでいると…

「おい!かみじょう!」

(ああー、この声はー)

振り返ると、蒼司くんがいた。

「おい、おれよりも、うまく歌うんじゃねーぞ?歌ったら、なかまはずれにしてやるからな!」

(典型的ないじめだなー、はぁ、しょうもな)

俺はため息をついた。

「おい!本当だからな!かく…ご?しろよー!」

それだけいうと、蒼司くんは去っていった。


曲を決めた俺はみんなが集まっているところへ向かった。

「みんなー決めましたかー?では、発表してもらいましょーまずは、1番の子ー!」

「は、はい!」

緊張した表情でみんなの前に立っていた。女の子だった。

(さて、みんなのレベルを見て、それに合わせよう!)

俺はみんなの歌を集中して聞くことにした。


しばらくして、次が俺の番になった。

「さて、それじゃあ次、12番の子、どうぞー!」

「はい!」

俺は返事をすると、前に立ち、歌おうとした。だが…

ポツ、ポツ

(?なんだ?)

鼻や頭に何かが当たった気がした。

空を見上げると、黒い雲に覆われていた。そして、次の瞬間、ザーザーザーザー

「「うわぁぁぁああ!!」」

大雨が降って来た。急いで屋根のあるところへ移動した。

「あちゃーこれじゃあ、お歌できないねー」

「ええーそんなー」「歌わないのー?」

みんな口々に嫌だの、ラッキーだの言っていた。俺としては、今からやろうって思ってたのに、雨に邪魔されて、しょんぼりしていた。


このままじゃあ、歌うことができない。そう思うと悲しくて仕方がなかった。でも、どうすることもできなくて、途方に暮れていた。けれどその時、俺はあることを思い出した。

(あれ?俺そういえば、天使の2人から力もらったんじゃなかったっけ?…?うわ!眩しい!)

俺が天使たちのことを思い出した時、とんでもなく明るい光に包まれた。


気づくと、真っ白い空間にいた。

「え?どこだここ?」

すると、声が聞こえた。

「やっと、思い出したのねー遅いよー」

「へ?」

そこにいたのは、白と黒の羽が生えた天使、フーリさんだった。

「えっと、何でここに?」

「貴方に与えた能力について、話そうと思いまして…」

「能力?…ああ!あの時言ってたことか。って今なんですか?!」

「うん、ごめんねーこっちも忙しくてーで時間ないからちゃっちゃと話すねー」

突然の再会も束の間、すぐに説明に入った。


「えっとね、まずあなたに与えた能力は[蒼天奏](そうてんそう)と言うわ。この能力は2つのちからがある。1つ、あなたが音楽に関して努力すればするほど、演奏の実力が上がるわ、この力を持ってるだけで、上がるから、努力してね?もう1つは、使ってみれば分かるわ。使い方は、歌っている時に気持ちが昂ると発動するわ。以上が能力の説明よ。質問はあるかしら?」

「気になることしかないのですが…1つ目の努力すれば上手くなるは分かりました。でも、2つ目の使ってみれば分かるって、何が起こるんですか!!俺、怖いものはできませんよ!!」

「大丈夫よ!あなたがどうなるわけじゃないから、まあ、少し髪色が変わったり、顔とか体とかに模様が現れたりするけれど、大丈夫よ!ただし、力を連続で使うことはできないから。時間を空けてからまた、使用してねー、あと、空の下でやってね?屋根とか室内だと発動しにくいから、他に聞きたいことある?」

「いっぱいありますが、もういいです。時間がないのでしょう?」

「ええ!ないなら、これで終わりにするわ、上手く、その力使ってね?」

その言葉を最後に、また、明るい光に包まれた。


気がつくと学校の屋根の下でみんなと一緒に雨宿りしていた。

「神城くん大丈夫?ぼーっとしていたけれど…」

先生が心配して来た。

「あ、はい、大丈夫です。」

「そう?なら良かったわ」

(さっきのは、本当なのだろうか…でも、今、チャンスだよな?やってみるか)

俺は雨の中に飛び出して行った。

「か、神城くん?!」

歌ってやる!みんなに響くように!


◾️音楽の先生 視点

私が授業を行っていた時、突然雨が降り出した。生徒たちはみんな、悲しそうで、申し訳なく思えて来た。

そんな時、生徒の1人である神城くんがぼーっと外を見ているのに気がついた。

「神城くん?」

声をかけたがずっと前を向いているだけで話さない。私は心配になって、彼に声をかけ続けた。しばらくして、彼は、はっ!としたような表情になった。

「神城くん大丈夫?ぼーっとしていたけれど…」

そう聞くと…

「あ、はい、大丈夫です。」

と返事が返って来た。

「そう?なら良かったわ」

私はそう返した。すると急に…神城くんが雨の中を走り始めた。

「か、神城くん?!」

私は焦って名前を呼んだ。けれど彼は中庭の真ん中まで走って行き、そこで立ち止まると、空に向かって歌い出した。


〜〜〜〜♪〜〜♪♪♪〜〜〜♪♪♪〜〜〜


その歌声はとても綺麗で、他の生徒たちも聴き惚れるほどだった。

私も驚いて、彼を止めることすら忘れてしまっていた。

彼が歌い始めてから、空に異変が起きた。

「せんせい!光ってる!あの子が!!」

「え!」

私は目を疑った。

彼の周りが少しずつ光が当たっていった。

(まさか!)

空を見上げた私は驚いた!!

凄く大きな黒い雲が空を覆っていたが、彼が歌ってから、太陽が現れ出して、彼を最初に照らし始めた。少しずつ少しずつ、彼を中心に円形に広がって行った。

(これは…こんなことあるの?まるで、彼の歌で空が晴れていくように見える。あの子一体何者?)

私は神の技と言っても過言じゃないその奇跡の瞬間を見ていた。

そして、空が完全に晴れて、さらには……

「わぁ!にじーにじだよ先生!」

なんと、虹も現れた。

(あの子、天気を操れるの?凄すぎない?)

私は神城くんから目が離せなかった。


※あとがき

神城くんに与えられた能力は天気を変えるものでしたねー

あ、これ、ある映画ではありませんからね?あれは願えば晴れたけれど、こっちは歌を歌って晴れにさせるまた、雨にも嵐にも雪にも雷にもできると言う能力ですから、違いますからね?


と言うわけで、

次回、神城くん覚醒する お楽しみに!

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