月の亀裂に果汁を絞れ

深夜に食べるカップラーメンはどうしてこんなにも優しいのだろう?都会はこんなにも無愛想なのに、残った汁は湯気を保存する、まるで救世主みたいだ。体に悪いものほど美味しいなんて、死刑判決を下すしかないじゃない?僕らはいつか胃袋に埋もれて死んでしまうのよ、ってお医者さんは笑っているから、僕の命なんて林檎3個分の重みしかないんだ。僕も、君も、ママもパパも恋人もダーリンも違いはわからないけどみんな死んじゃう。みんな笑いながら、腐敗した身体は茹でたまま。

「三分の命」


夜の潮騒しおさいは孤独を攫ってくれるから好きだ。戸惑いが蔓延する世の中だから、たまには波に話しかけるのも必要だ。僕はいつになったら地球を出れますか?カーテンの向こう側は血脈に塗り固められた居城で、酸素も入る隙がない。きっとそのうち窒息死でもしてしまうのだろうね。ノアの箱舟は賛美歌を届けながら黄昏を駆け抜けるけれど、そんな助けは見慣れた憧憬しょうけいに過ぎない。

「ノアが運ぶ月」


子守唄を奏でながら懺悔を繰り返す大人になりたくないから、僕らは時計を止めたんだ。今を泣いて、昨日を笑う。嘘でいいから歯を見せてくれよ、愛だねって馬鹿にしてよ、芥を吹き飛ばしてよ。そして一人で眠れるようになろう?

「一人部屋」


夜を切り取るガジェットが発明されたら、大人は優しくなってくれるだろうか。それとも空の深さを証明できないから、彼らは永遠に春を迎えられないのだろうか?かわいそうだね。かえる卵がない人生なんて、僕ら鶏には到底理解できないね。ぱりっ。

「カスの産声」



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