第5話 ぼっち、どこかに連れてこられる

 実に重厚で頑丈な装備をした門番のいる巨大な入口をくぐり抜け、さらに奥へと足を進める。

 すると、中はどこぞの高級ホテルのエントランスかと言わんばかりに広々とした空間が広がっており、俺を連れた一行は、その空間をぞろぞろと突っ切る。

 そして、しばらく歩いた後、部屋の中央にある上部へ伸びる一筋の螺旋階段を上ることとなった。

 うわー、高ぇ……。俺、高所恐怖症だから、帰ってもいいかな。

 しかし、そんなことが強面の男達に通じる訳もなく、俺はそのまま連れて行かれる。

 ああ、しんどいわ。いうなれば、高層ビルの階段をひたすら登る感じ。


 そして、どのくらい登ったであろうか。俺がへろへろにヘタっていた頃、重々しくも整った口調で男が告げる。


「……着いたぞ。さあ、中に入れ」


 目の前に現れたのは、3メートルはあろう巨大かつ重厚そうな印象を与える金属の扉であった。

 一言でいえば、ダンジョンの扉、みたいな感じ? しかも、ボス戦とか……そんなところじゃねえの?

 そこにも、勿論、重装備の門番が配備されており、その門番が、ギーという鈍い金属音を出しながら重々しい巨大な扉を開けてゆく。

 すると、目の前にこれまた広々とした空間が広がっており、その前方には一段高くなった箇所があった。

 そこに、煌びやかな衣装を身にまとった如何にも位の高そうな男と、その傍らには目を吊り上げ、狂気を発しながら俺の姿を凝視している女の姿があった。

 男は、白髪でスマートな体つきをしており、あまり怖そうな印象は持ち得なかった。

 対する女は、長い黒髪を後頭部で束ねており、表情はキリリとした整った様相を呈していた。

 その目を吊り上げているからに、睨みだけで人を殺せそうな大変恐ろしい目つきなのである。

 どちらも歳は俺とあまり変わらないように見えた。つまり、十代後半ぐらいであろう。


「早く動け!」


「うひゃっ」


 ただ呆然と辺りをキョロキョロと見回していた俺を、業を煮やしたのであろう先導男が急かす。

 おいおい、怒鳴るなよ。驚きのあまり、変な声出しちゃったじゃないかよ。

 俺が恐る恐る入室していくと、部屋の傍らに重々しく並んでいた兵士の中からひとりの男が出てきて、俺の手をくくったロープを先導してきた男から受け取った。

 その男は、色白で、やや長髪かつ身長も高く、見るからに世間的に言うイケメン風の容貌をしていた。

 つまり、きっとリア充。俺の敵。


「では、俺たちはこれで」


「はい。お勤めご苦労様でした。後はこちらにお任せ下さい」


 その男は、先導男ににこやかにハニカミながらそう言うと、


「では、こちらへ」


 とロープを持ちながら手招きした。

 なに、なんなの? そんなにはにかんでどうしたのさ。

 優男アピールですか。そうですか、このリア充め。

 俺は、そんな手には乗らないぞ。

 あら、優しい。私、惚れちゃった、なんていって恋に落ちちゃっていきなりラブコメストーリーに突入! なんてしないんだカンナ。

 第一、俺、男だし。

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