第14話 反撃
(ああ…、ついやってしまった…)
一方、博士はと言えば自分がキレた事を少し後悔していた。
何も二人共吹き飛ばさなくても良かったと…。
この一度キレると暴走してしまう性分を直さねばなと反省していた。
一応二人のその後が気になった博士が下を覗き込もうと歩き始めた時、その二人が落ちていった辺りで何か大きな光が光った。
夜の暗闇がその光をより一層大きく輝かせていた。
「な、何だ?!いったい何が…」
嫌な胸騒ぎがした博士は二人が落下した場所が見える場所まで走って駆け寄って行く。
その光は明らかに落下途中の二人が発したものだ…博士はそう確信していた。
駆け寄って急いで落下した二人を確認しようと屋上から下を覗き込む博士。
だがそこに二人の姿は…なかった。
博士は混乱した。
特殊アイテムの力でも使わない限りそれはありえない事だった。
「空間跳躍のアイテムがあるなら今までにそれを使っていたはず…どう言う事だ?」
「こう言う事だ!」
オレの声に振り向く博士。
そう、オレ達はテレポートしていた。
博士の衝撃波で吹き飛ばされる前のその場所に。
「何…だと…?」
今、オレ達の周囲には特殊なフィールドが形成されている。
勿論ライオットもまだ気を失ってはいるがオレと一緒に転送されて無事だ。
一体何のアイテムが発動したのか自分でも分からなかったが原理なんて今はどうだっていい。
この場所に戻って来られた、その事実さえあれば!
「このバケモノめぇっ!」
オレ達の存在を確認した博士はすぐにまたさっきの衝撃波を放って来た。
混乱していてもこう言う行動は冷静そのものだ。
だがオレはこの自分の周りを形成するフィールドを無条件に信じていた。
あんな衝撃波くらい無効化すると…それはもう当然のように。
ズサアァァァッ!
博士の放つ衝撃波がこのフィールドを侵食する…だが侵食されていたのは衝撃波の方だった。
見事オレの読み通り博士の衝撃波は無効化された。
この現象を確認してオレは勝利を確信した。博士に対してニヤリと笑うほどに。
そのオレの顔を見て博士は半狂乱になった。
自分のプライドがずたずたに引き裂かれ正気を失ってしまったのだ。
「そ、そんなバカな…そんな事があってたまるか!」
ズサアァァッッ!
ズサアァァッッ!ズサアァァッッ!
博士は死に物狂いで衝撃波を連射する。
しかしその攻撃のどれもが俺たちを包むフィールドの前に無力化されていった。
次にオレはまるで最初から知っていたみたいに博士に向かって手をかざした。
するとオレ達の周りに形成されていたこのフィールドが博士に向かって飛んで行く。
「く、来るな!来るなあっ!」
ズサアァァッッ!ズサアァァッッ!ズサアァァッッ!
博士はさっきよりも懸命にこのフィールドを消そうとするがその望みはついに叶わなかった。
やがてフィールドは博士を取り込む…すると取り込まれた博士の様子が…段々苦痛に歪んでいく。
「ぐあああああっ!」
まず顔につけていた仮面が溶けていく…そして彼が身につけていた遺跡アイテムも次々と蒸発していくみたいだった。
仮面が溶けて現れた博士の素顔は苦痛に歪みまるで今までとまるで別人のようだった。
「ぐぉぉぉぉぉ!」
最早博士にまともな言葉を話せる冷静さはない。
そしてそのままよろめいて屋上から足を踏み外してしまった。
博士は落下していったオレたちを確認するため屋上の端っこに寄りすぎていたのが仇になった。
その場所は博士自らが放った衝撃波で落下を止める物は全て破壊されてしまっていたのだ。
つまりよろめいた博士の落下を止める物は何もなかった。
「ば、馬鹿なぁ…」
ああああ…
ああ…
あ…
オレの放ったフィールドに包まれたまま博士はこの古城の屋上から奈落の底へと落下していった。
どうやらあのフィールドは対象者の特殊アイテムをみんな蒸発させてしまうらしい。
確か博士は時空跳躍アイテムを所持していたはずだったが、このフィールドによって全てをなくした博士にこの自由落下を留めるものはもう何一つ存在していなかった。
…
しばらくして何かが潰れたような音が小さくオレの耳に届いた気がした。
オレはそれ以上深く考えない事にした。
とにかく!オレ達は勝った!もうその事実だけで十分だった。
安心して気が抜けたオレは謎のフィールドを形成していた疲れが一気にやって来てその場に倒れ込んでしまった。
しかしそれは何とも気持ちのいい疲労感だった。
夜空の雲はいつの間にか晴れて丸い月が辺りを淡く照らしていた。
博士が倒された事で彼の手下達は動揺した。
彼らは元々博士が金で雇った烏合の衆、頭が倒されればもう何の役にも立ちはしない。
手下達はあの博士すら倒す大物が今度は自分達を襲ってくると勝手に勘違いした。
それで手下全員取るものも取りあえず一目散に城から逃げ出した。
しかしその手下達を待っていたのはケイタロー警部達警察だった。
最初に連絡を受けて古城に駆けつけたあの時に胸騒ぎを感じたケイタロー警部が部下に指示して城周辺を張っていたのだ。
オレがこの城に入ったと部下から連絡を受けて警部はすぐにすぐに体勢を整えていた。
そんな訳で博士の手下たちは全員綺麗さっぱり警察にしょっぴかれて行った。
これにてベルファクト事件はケイタロー警部のお手柄として一件落着となった。
こうしてオレの長い夜は終わった。
騒ぎが終わったのを確認したケイタロー警部は自ら古城の捜索を指揮しオレ達二人は気を失ったまま警察に保護される事となった。
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